第11話 鋼の心
「金の修行を始める。今回は剛の練習だけだ」
「剛?」
俺は安倍晴明の本を読んで、五行の事は詳しく知っていると思っていたが、剛などという技は知らなかった。
「殴ってみろ」
「えっ!?」
父上が唐突に言うもんだから戸惑いを隠せずにいる。
「いいから殴れ」
「分かりました。では死んでも俺のせいにしないでくださいね」
俺は今までの恨みを込めて、父上の腹を思い切り殴る。
「痛っ」
俺が殴ったはずなのに、拳に走るあまりの痛さに声をあげる。
なぜ父上の腹がとても硬い!?
「これが剛だ。剛とは己を硬くする技である。やってみろ」
父上が拳を握る。
「剛」
俺は腹に力を込める。だが父上の拳が重く深く腹を砕く。俺は膝を付く。それでも父上は休憩の間を与えてはくれない。
「もっと密度を高めろ」
「剛」
そして長き時間が経つ。
「60発目、いくぞ」
「ふぅぅぅ」
体は心。心は鋼。俺は死なない。そのために力がいる。くうせんを護れる男になるために。くうせんを死なせない男になるために。安倍晴明のような、最強の陰陽師になるために。
「だから……守られるわけにはいかないんだよ。"剛"」
いつの間にか日は昇り始めていた。
タイムリミットは……あと2日




