第10話 くうせんを失った場所
俺は襲いかかってくる鬼の拳をよけ、鬼の右側の回り込む。
「滅」
俺の火で、鬼の右腕が消滅する。
「火と木は使うな。修行にならん」
「俺に死ねっていってるのか」
「30分耐えきったら次の術を教えよう。くうせんを生き返らせたかったら戦え」
「このくそじじい」
鬼は左腕で殴りかかってくる。
「壁」
鬼の拳の前に土で壁を造るが、土の壁はすぐに壊れる。こんなの30分ももつわけがない。
速い!それに強い!鬼の一撃一撃が地面を粉々に粉砕する。木が何本も折れている。
くうせんよ、こんな強い奴等を一撃で仕留めるなんて……俺はお前みたいになりたいな。
また鬼が殴りかかってくる。
「くうせん……くうせん……」
土とは己を守り、仲間を守る。いわば盾である。ならばもっと力を込め、密度を高め、そしてもっと速く。
俺は安倍晴明の本に書いてあった言葉を思い出す。
そうだ。あの書通りにやれば、鬼の拳など、
「壁」
鬼の一撃で粉砕される。粉砕されたのは俺が術で造った土の壁ではなく、殴った鬼の腕だ。
「俺は守りたい。この鉄の盾今度こそは護ってやりたい」
「おい政宗、次の修行に行くぞ」
まだ10分しか経っていない。きっと父上は認めてくれたのだろう。ほんの少しだけ……。
「滅」
父上は鬼を爆炎で消滅させる。その圧倒的火力に少しだけ驚いた。
「次の試練は金。己を鋼にする。この術を極めた者は鳥や犬にもなることができる」
「あと二つか……」
「次の試練は長引くかもな……」
そっと囁いたその言葉がまさか父上の体験談だったとは……。そして金の修行が始まる。




