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第1話 陰陽師
「滅」
俺の手から放たれた火炎は、人の姿をした鬼には全くもって、効いていなかった。
「死影」
人の姿をした鬼。人鬼は、右手に持っている銀色に輝く刀を振るい、俺の額に小さな傷をつくった。
ギリギリの攻防の中、俺が受けた初めて傷は小さい切り傷。
そんなことに少し腹を立て、俺は人鬼の背後に移動する。
「滅」
俺の手から放たれた火炎は、ギリギリで回避した人鬼の左足に火傷の跡をつくる。
「貴様」
人鬼の表情には怒りが表れ、俺の腹に刀を刺した。
「うっ」
俺は喉から飛び出そうな嗚咽を堪え、至近距離から人鬼に火炎を放つ。
だが、人鬼は俺の腹に刺した銀色に輝く刀だけを残し、どこかへ立ち去っていった。