旅路
カクヨム甲子園に大人も参戦できると知ったその日――わたくし「失恋」をテーマに短編を書いていた。
3000文字~15000文字以下。
できる! 恋愛経験ほとんどないけれど!
と開いたのは夢辞典。
なるべくなら、吉夢のほうがいいもんね――?
でも、吉夢なら気分がいいものとは限らないわけで……。
お読みくださった方々に、よい人生が展開されますように。
ある夜、ふつうに自分の部屋の扉を開けた――お手洗いに行きたくて。
なのに廊下はいつもと違って、丸い穴が三つならんだ、処刑台があって……。
なんか、なんか困るのよね。
扉の上の方を見たら、黒々とした重たい鉄が身構えてる。
刃よね、あれ。
ギロチンってやつよね。
やだなーって思った。
わけわかんない。
自分の家に処刑台があって、しかもギロチン――なんであたしの部屋の前にあんのおお?
こんな大がかりな芝居がかったいたずら――あったもんじゃない。
なによこれ、どけてよ。
押しのけようったって、ギロチンだよ? 重たそうだし、生理的に触れたくない。
フランス王族の手によって考案され、実際にその最期を見届けたという、由緒ただしき処刑具。
だけどあたしは、そんなもんのお世話になりたくない。
是非にと乞われても、絶対嫌だわ。
なのに、あたしは、気付いたら首置きのクッションに頭を乗せてた。
「かわいそうに」
突然にふってわいた、憐憫の声。
あたしは、その人の間近にいた。
いや、いたっていうか、持ち上げられていたっていうか……高々と掲げられていた。
その人は、自分の目線より高い位置にあたしを持っていき、そしてあたしは彼を見下ろした。
そこにはあるはずのあたしの体はなく、いっさいの重さを感じない。
「かわいそうに」
またその人は言った。
いや――いや。
この状況でそのセリフって……確実に人じゃないよね?
勢いよくしぶいたであろう、あたしの血を見て、この暗い廊下で。
この人、人じゃないよね? いや、人であるならば、人でなしの可能性、あるよね。
なんたってギロチンで体――首から下、なくしちゃったあたし――同情されたっていいくらいだけど、ここでこんなふうに淡々と、しげしげと見つめられて、ただ「かわいそう」って言われるのは、あんまりじゃないか?
あたしの人生、なぜか、どうしてだか、唐突に終わりを告げた。
ならば、そこには「この度は……」とか「ご愁傷様で……」とか、言葉尻を濁す感じで、それこそふさわしい言葉がかけられてしかるべきだ。
だというのに。
なんでこんな人に、無感情に、あたし、首だけになって持ち上げられてなきゃなんないのっ!?
「忘れられない人がいるね――?」
その人はきいた。
そっぽを向きたくてもむけないあたし。
あたしを暗い天井に向かって、持ち上げるのをやめたその人は……。
「君には三つの選択肢がある」
と言った。
向かい合ったら、この人超絶美形で。
まぶしくて、あたしは目をすがめた。
「1.トラのオリにつながる扉。2.崖っぷちにつながる扉。3.真っ暗な部屋につながる扉」
さあ、どれを選ぶ? とやさしくきいてくる。
なにそれ? って思ったけども、選ばなくちゃならないなら、3でしょう、とあたしはタカをくくった。
部屋に明かりがついてなくたって、どうってことない。
一度は死んじゃった身なわけだし、今さら安らかに眠りたいとか、ゼータクは言わない。
このキンキラした男の人のまなざしに魅入られて、あたしは言った。
まだ、終ってないですよ。
つづきが一つ、あります。
そちらもどうぞ、よろしくお願い申し上げます!