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超常ポリスは眠らない〜異世界警察と天蠍の王女〜  作者: 白谷毛虫
第一章 ようこそアストラへ
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第五話 『開かれた世界』

「なあ朔、最近お前付き合い悪くね?」


 唐突にそう話し始めたのは、東都署での朔太朗のもう一人の同期、地域課三係の巡査夕木晃平(ゆうきこうへい)だ。


「飲みにも行かねえし道場にも来ない。月岡なんか飯も付き合ってくれないって愚痴ってたぞ。彼女でもできたか?」


 珍しく非番に早起きした朔太朗は朝食を取りに寮の食堂に下りてきている。そこで偶然顔を合わせた夕木と一緒に食事をしているのだ。


「そんなんじゃねえよ。寝てるだけだって」


 ――なるほど自覚はある。

 夢の中での修行が面白くて、付き合いよりそちらを優先してしまっているのだから。


 ――夢の話をすれば頭がおかしいと思われるに決まっている。ここは適当にお茶を濁すしかないか……。


「ここのところ疲れが溜まっててさ。体調が戻ったら埋め合わせするよ」


「本当だな? 本当に女じゃないんだな?」


「当たり前だろ? 彼女ができたら一番に紹介するって……。それじゃお先に」


 朔太朗は逃げるように食堂を後にする。


「チッ、月岡の為だからしょうがないけど、よりによってなんで俺がこんな事訊かなきゃならないんだっての。付き合い長い癖に朔は鈍感すぎんだよ……」


 夕木は朔太朗の背中を眼で追いながらやれやれと呟いた。


 ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※


 朔太朗はウキウキで夢の中にやってきている。今日は前回見つけた集落を目指す予定だ。


「しっかり飯も食ったし、それじゃあ出発だ!」


 まずは上空にジャンプして進む方角を定める。着地後その方角へ十回ダッシュを繰り返したら再び上空に飛び上がってズレを調整する。

 これをワンセットとして二十回程繰り返せば森を突破できる目算だ。


 朔太朗は早速それを実行していく。進んでは飛び上がり、さらに進んではまた飛び上がる。

 

「順調、順調!」


 朔太朗は上空から確実に森の突破に近づいているのを感じていた。

 やがて幾重にも重なっていた木々のカーテンが薄くなっていく。


 次の瞬間、朔太朗は光の海の中に勢いよく飛び込んでいた。


「――抜けた!」


 ゆっくりと目を開くと、丘の上からの雄大な眺望が朔太朗の網膜に飛び込んできた。


「すごい……」


 現実の東京では観る事のできない大自然である。

 振り返ると今まで活動していた森が広大に繁っている。


 ――この力がなかったら一生森を彷徨っていたかもしれないな。


 朔太朗は短い間ではあったがここで彷徨った日々や泉での修行を思い出し感慨にふけっていた。


「さらば修行の森。お世話になりました!」


 朔太朗は一人頭を下げて別れを告げた。



「さてと、まずは方角の確認からだ。太陽の角度的に時刻はまだ午前中だろうな。てことは」


 足元に視線を落とすと自身の影が右側に伸びている。


「あっちが西か」


 つまり現在朔太朗は南側を向いて立っており、左手が東、右手が西、背後が北という位置関係になる。


 周囲を見渡すと、北から東にかけて山脈が連なり、ナイフで切り落とした様な険しい岩壁が白い雪を被っている。

 南は朔太朗の立つ森の丘から丘陵地帯が続き、緩やかに起伏した地面の波の上に雑木林が島のように点在している。

 そこを大きな川が丘の間を縫って東西に流れ、その川に寄り添うように集落が存在していた。

 そのまま視線を西に向けると、山脈を抜けた遥か遠くに平野が広がり霞む地平線の向こうまで川が続いているようだ。


「だいたい把握できたかな」


 森の丘の南端まで足を運ぶとそこは三十メートルほどの崖端になっている。ここを登るのは一流のクライマーでもない限り無理だろう。

 朔太朗は迷いもなくそこからバッと飛び降り加速する。ジャンプ練習の際、滞空時間を短縮して急降下する技も習得していたのだ。


 何事もなくふわりと着地すると集落に向かって歩き始めていくのだった。


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