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超常ポリスは眠らない〜異世界警察と天蠍の王女〜  作者: 白谷毛虫
第二章 超常警察官
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第二十話 『石の欠片』

「着いたぞ!」


 捜査車両を中央公園脇に停めて鼠入が外に飛び出した。後部座席の絵麻と朎花も急いでそれに続く。


「それでどこだって?」


 公園に入ったところで鼠入が振り返った。


「さっきは遊具の所で見たんだけど⋯⋯」


 と、朎花が答えるもののそれらしい人影はない。そのまま遊具場を抜けると、開けた空間に一段低くなった円形のグラウンドが現れた。


「いた! あの赤い服の子!」

 

 朎花が指差すグラウンドの中央には一人の少年が立っている。さらにそこから視線を泳がすと、少年に対峙するようにサクが立ち、少し離れた位置で少年と同年代の子供達がその様子を見守っていた。


「駄目だ朎花!」


 グラウンド上からサクが叫ぶ。それと同時に、少年が朎花を目掛けて走り出していた。


「え、えっ?」


 状況が飲み込めず戸惑う朎花。それを察して先回りしたサクが少年の腕を受け止めた。


「——すごい力だ!」


「おい、何なんだこの子は?」


 鼠入が驚いて声を上げる。そこへサクに弾き返された反動を利用して跳躍した少年が落下しつつ襲いかかった。


「おわっ! やべぇな、人間の動きじゃねぇぞ! これが石の力なのか?」


 辛うじて横っ飛びで回避した鼠入が冷や汗をかきながら叫ぶ。


「どうなんだアナマリア?」


 サクは静かに勲章に語りかけた。


 ——スコーピオンと似た波動⋯⋯ビンゴじゃ。この少年は魂を欲望に支配され完全に自我を失っておる。心と体が切り離された非常に危険な状態じゃぞ。


 アナマリアの声が心に直接響いた。


「みんな! この子を助けたい。手を貸してくれ」


「どういう事?」


 絵麻が言った。


「この子は自分の意識とは関係なく邪悪な波動に操られているだけなんだ。これ以上こんな動きをし続ければ体が壊れてしまう!」


「確かにな⋯⋯。それで、どうするんだ?」


「俺があの子を浄化する。その間押さえ込んでいて欲しい」


「「了解!」」


 鼠入と絵麻の二人が頷いた。一方、朎花は何が何だか解らないといった様子だ。


「おい、こっちだ!」


 サクがパンパンと手を叩いて誘う。それが癇に障ったのか少年はひどく興奮し、地面を蹴って獣の様に突進して来た。


「ギライダァァァア!」


 しかし、サクはそれを闘牛士さながらに躱しつつ少年の背後を取ると、足を掛けて仰向けに押し倒した。


「——今だ!」


 掛け声に全員が一斉に飛び掛かる。サクが胴体に馬乗りになり、右腕は絵麻、左腕は朎花、両足は鼠入が押さえ込んだ。


「ウガァァァ!」


 激しくもがく少年。石の力で凶暴化しているとはいえ子供だ。大人四人に押さえ付けられては身動きが取れない。


「辛抱してくれ。すぐに楽にしてやるから!」


 サクはそう言って瞳を閉じた。たちまち彼の金髪が眩しく輝き出し、グングンと伸びていく。


「な、何それ! どうなってるの⁈」


 その非現実的な光景に朎花が目を丸くした。

 無数の毛先が少年の体を這い回る。その姿はまるでエサを求める生物のようだ。


「どこだ⋯⋯どこにいる!」


 少年の体内に邪悪な存在を探すサク。しかし人間の『心』の場所が分からず苦戦していた。


 ——この間の感覚を思い出せ。人体とて同じ事じゃ。波動の源を感じ取ればいい。


 アナマリアの声が心に響いた。

 

 彼女の声に焦燥感が霧散したその時、闇の中に一際邪悪な波動を捉えた。清らかな魂の周りを渦巻く禍々しく赤黒い波動。


「見えた!」


 光と化した髪が少年の体内に侵入していく。途端に彼の表情が柔らかなそれに変わり、激しく抵抗していた体からも力が抜けていった。

 同時に、握りしめていた左手が開いて怪しく光る物体が姿を現した。

 それは石の欠片——卵が真ん中で斜めにスパリと割れた形状の石だ。


「あれ? 何だろう⋯⋯」


 朎花が石の欠片に手を伸ばそうとする。


「触っちゃ駄目だ!」


 サクの制止にビクリと手を止める朎花。


「迂闊に触ったらこの子の二の舞だぞ」


 サクはそう言って石の欠片をビニール製の小袋に入れた。


「あれ⋯⋯僕はいったい⋯⋯?」


 目を覚ました少年がゆっくりと頭を上げた。


「大丈夫かい? 君はこの石の波動に操られていたんだ」


 と、サクは優しく話しかける。


「その石はっ! ⋯⋯イタタタ!」


 少年は立ち上がろうとしたものの体の痛みに耐えかねて尻餅をついてしまった。


「恐らく脳のリミッターが外れた状態だったんだろう。骨や筋肉にダメージがあるかもしれない。救急車を呼ぶから検査してもらうといい。それとこの石は警察が預かる。危険な物だからね」


 背後から遠くで見守っていた子供達も近寄って来ていた。するとその中の内の一人が少年を見下ろすなり冷たい言葉を投げ捨てる。


「学校へ来ないで公園をぶらついてるからそんな物拾うんだ。友達じゃないんだからもう近寄って来るなよ!」


 うつむく少年。

 そんな彼を見ないフリをして子供達は足早に去って行った。


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