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超常ポリスは眠らない〜異世界警察と天蠍の王女〜  作者: 白谷毛虫
第二章 超常警察官
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第十九話 『妹』

 それから三日が過ぎていた。


 捜査はこれといった進展もなく、『石』の手掛かりも掴めていない。

 

「少しくたびれたな。一回署に帰るか」


 運転席に座る鼠入が呟いた。二人が乗車するのはオスプに割り当てられた捜査車両。星をあしらったエンブレムのセダン車で、ボンネットにエアダクトがあるのが特徴的だ。


 車を停めて正面玄関から庁舎に入り、階段で地下に下りようとしたところでサクは足を止めた。何やら上階が騒がしい。


「何だろう?」


 と、階段を上って行く。どうやら騒ぎの元は三階のようだ。次第に会話の内容が鮮明になってくる。


「生活安全課は何をしているんですか! お兄ちゃんが失踪してからもう一カ月経つっていうのに⋯⋯。本当に探してくれてるんですか!?」


「だから、彼の件はうちの扱いから外れたんだ!」


「ちょっと朎花ちゃん落ち着いて! 朔の事は私からオスプにお願いしているから!」


 ——しまった!


 そんなやりとりの真っ只中に顔を出してサクは思った。


 生活安全課、略して『生安』の署員に噛み付いていたのは七歳下の実の妹——千光寺朎花(れいか)だったのだ。そしてそんな彼女を面識のある絵麻がなだめている。

 気の強い彼女の事だ。捜索願いを出したはいいが何の音沙汰も無いので乗り込んできたのだろう。


「あ! 獅堂サク、いい所に来た!」


 引き返そうとするサクを、絵麻が目ざとく見つけて声を掛けた。運の悪さに天を仰いだサクは、観念してゆっくり振り返る。


「⋯⋯なんでフルネームなんだよ」


「あなたに用事があったの。この子、失踪した千光寺朔太朗の妹さん。その後の状況を教えて欲しいんだって」


 と、絵麻が一歩下がる。自然、朎花と向かい合う形になった。高校の制服ブレザーにスラリと伸びた手足。化粧っ気は無いがお団子頭のシニヨンヘアがよく似合う健康的美人だ。


 ——朎花、少し痩せたかな。


 久しぶりに彼女を見てサクは思った。自分が心配をかけている所為かもしれない思うと心が痛い。


「朎花ちゃん。この人、オスプっていう新設部隊の人なんだ」


「ふーん。それがさっき言ってた?」


「そう。化け物退治の専門みたいな部署だから、その線絡みが強そうな朔の失踪は生安から彼らの扱いになったの」


 絵麻の説明を聴きつつも、朎花はサクの頭に興味津々の様子だ。


「綺麗な金髪。ちょっと光ってますね⋯⋯不思議!」


「どうも」


「おい何やってんだよサク。少し休んだらまた石探しだぞ!」


 そこへ鼠入が大声を上げながら階段を上がって来た。


「石⋯⋯?」


 朎花が不思議そうな顔をした。


「ああ⋯⋯捜査である石を探していてね」


「ふーん。そういえばここへ来る途中、子供達が不思議な石を拾ったって騒いでたっけ⋯⋯」


「「——どこでっ!?」」


 思い掛けない彼女の言葉にサクと鼠入が食いついた。あまりの勢いにたじろぎながら朎花が答える。


「ちゅ、中央公園だけど⋯⋯」


「近いな⋯⋯」


 と、顔を見合わせて頷くと、次の瞬間に二人は掛け出した。


「絵麻さん! 私も行く‼︎」


 朎花も突き動かされる様に走り出す。


「——え? ちょっと待って!」


 意表を突かれた絵麻は慌てて彼女の背中を追いかけた。



「お前は先に飛んで行け! 俺も後で追いつく!」


「了解っ!」


 正面玄関から飛び出してサクが空高く跳躍したのを見送ると鼠入は車に乗り込んでエンジンを掛ける。

 

「私も乗せてってください。目撃者ですよ!」


 朎花が後部座席のドアを開いて言った。


「——私もお願い!」


 そこへ追いついた絵麻が彼女を押し込みつつ強引に乗り込んで込んだ。


「しゃあねぇな。しっかりベルト閉めろよ!」




 公園に着地したサクは、すぐに邪悪な気配を感じていた。

 視線の先には小学生高学年の子供達が走り回っている。一見鬼ごっこでもしている様にも見えるが、少し様子がおかしい。何よりその中の一人が気配を発しているのだ。


「警察だ。どうしたんだい?」


 サクは駆け寄って手帳を見せる。


「——あの子が急に暴れだしたの!」


 と、一人の少女が答えた。彼女が指差すのは、赤いトレーナーを着た癖っ毛のどこにでもいそうな少年。しかし眼は虚ろで獣の様に唸っている。


「おっと危ない!」


 その間にも飛び掛って来る少年から慌てて少女を庇う。その動きは子供とは思えない素早さと力強さだ。アナマリアの言う通り、これが石の力だとしたら放置は出来ない。


「うわっ、マジでヤベェよこいつ!」


 別の男の子が逃げながら叫んだ。すると少年はその声に反応して飛び掛かる。それを読んだサクは一足飛びで男の子を抱き抱え間一髪回避した。


 ——思った通りだ。どうやら敵意に対してひどく敏感らしい。


「みんな、彼は今、意識に何らかの障害が発生している可能性がある。なるべく刺激しないように離れてくれ!」


 子供達はサクの言葉に従って速やかに公園の隅に移動して行く。結果、少年の注意はサク一人に向けられる形になった。


「バガニスルナ⋯⋯バガニスルナバガニスルナ⋯⋯」


 少年は何かを呟いている。


「⋯⋯なんだって?」


「——バカニスルナァァァァ!」


 サクの言葉に反応して、少年が凄まじい勢いで飛び掛かっていた。

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