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超常ポリスは眠らない〜異世界警察と天蠍の王女〜  作者: 白谷毛虫
第二章 超常警察官
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第七話 『入れ替わり』

「千光寺。朝飯に行くぞ——!」


 翌朝、約束通り鼠入が朔太朗の部屋に顔を覗かせていた。ところが朔太朗はというと、布団を被ったまま寝息を立てている様子だ。


「ったく⋯⋯」


 鼠入はため息をついた後ズカズカと部屋に入って行くと、


「起きとけって言ったじゃねえかよっ!」


 勢いよく朔太朗の布団を剥がす。


 その時事件は起きた。


「——誰だお前⁉︎」


 そこに眠っていたのは朔太朗の寝巻を着た見知らぬ人物——輝く様な金髪に切れ長の涼しげな目元をした青年だったのだ。


「⋯⋯あ、先輩おはようございます。いけね。俺、寝坊してました?」


「ハァ? 聞こえなかったのかよ。お前誰だって言ってるんだ!」


「先輩一体何を⋯⋯。ってまさか!」


 朔太朗はベッドを飛び起きるとサイドテーブルの手鏡に手を伸ばし恐る恐る自身の姿を確認する。案の定、そこに映っていたのはもう一人の自分——『サク』の姿だった。


 ——サクよ。今から其方に『魂送り』の術を施す。次にこちらで目覚める時は『来訪者』サクじゃ⋯⋯。


 ふと、昨夜アナマリアが発した最後の言葉が脳裏に浮かぶ。


「——先輩。信じてもらえないかもしれないけど、俺です⋯⋯千光寺朔太朗です」


「プッ⋯⋯まったく朝からタチが悪いぜ。で、千光寺は何処にいるんだよ。ドッキリなんだろ?」


 ——無理もないか。翌朝、知り合いが別人の姿になっていたら誰だって信じられないよな⋯⋯。


「先輩。俺の話を聴いてもらえませんか? どうして俺がこんな姿になったのかを⋯⋯」



 朔太朗改めサクは渋る鼠入をレストランに連れて行き話をする事にした。幸い食券制の為、朔太朗の容姿が変わった事に支障は無い。


「⋯⋯という訳なんです」


 サクは時間を掛けて話せる全てを打ち明けていた。アストラの事、来訪者の事、アムネジアの村襲撃からの一連の事件の顛末。そして昨夜のアナマリアとの事を。


「何だよそれ⋯⋯。いきなりそんな妄想地味た話を信じろと言われてもよぅ⋯⋯」


 鼠入は突然聴かされた話の情報量が多すぎて理解が追いつかない様子だ。


「解ってます。だから今まで誰にも話せなかったんです。⋯⋯でも『超常被疑者』の正体と俺の姿の変化の説明はつくでしょう?」


「まあ⋯⋯一応な。でもこんな話を誰もが信じるとは思えないぜ。そんな姿になっちまって仕事はどうするんだよ?」


「言われてみればそうですね。正直そこまでは考えてなかったです。ハハ⋯⋯」


「まったく⋯⋯大丈夫かよ。お前らしいっちゃらしいが⋯⋯」


「でも、『超常被疑者』の浄化は俺の使命なんです。例え警察に居られなくなっても俺がやらなくちゃいけない!」


「お前⋯⋯」


 サクの強い意志を前に鼠入の瞳が揺れ動いていた。

 

「あ——もう解ったよ! でもこの話、誰にも話すんじゃねぇぞ! 頭がイカれてると思われるからな」


「先輩⋯⋯。信じてくれんですね!」


 サクは思わず鼠入の両手を取って喜んだ。


「馬鹿! やめろ気持ち悪い!」



 食事を終えた二人が一階に降りた頃、けたたましいサイレンを鳴らして救急車が病院に到着する。

 専用の入口から慌ただしく患者を搬入する様子を横目にサクは何となく胸騒ぎを覚えていた。


「何かあったんですかね?」


「訊いてみるか」


 鼠入が警察手帳を見せながら表に残っていた救急車の運転手に話しかける。


「警察です。何か事件ですか?」


「また出たんですよ。例の『超常何とか』が⋯⋯。駅前は大騒ぎですよ!」

 

「千光寺!」


「行きましょう先輩!」


 二人は顔を見合わせるや突き動かされる様に走り出した。ところが『来訪者』の身体ではジョギング程の力で常人の全速力を軽く凌駕してしまう。

 次第にサクは鼠入の速度に合わせて並走する事に痺れを切らしていった。


「急がないと。先輩! 飛んでいいですか?」


「ハァ? 何だって?」


()()()いいですか!?」


「お、おぅ⋯⋯飛んでみろ!」


 全力で走り続け息を上げる鼠入はサクの言葉の意味がよく解らないまま思わず答える。


「それじゃあ、お先に⋯⋯」


 サクは軽く腰を落とし、


「失礼しますっ!」


 次の瞬間には遥か上空に飛び上がっていた。


「おいおいマジかよ⋯⋯」


 それを足を止めた鼠入が呆然と見つめている。サクの話通りその能力を目の当たりにしながらも、未だに夢を見ているような気持ちだった。



 何度かの跳躍を繰り返しサクは駅前の様子が目視出来る所まで近づいていた。


 商店街には多数の警察官が臨場し騒然としている。


 ビルの屋上から睨み利かせる『超常被疑者』。それに対して地上正面の前列に刑事数名と後列に当直明けの駅前交番一係の面子が確認できる。パトカーと近隣交番の応援も合流して周辺の市民を避難させているようだ。


 サクは金色に輝く長い前髪をなびかせて刑事の前に降り立った。


「————ッ!」


 予想外の出来事に現場の警察官に動揺が走る。

 サクはその最前線になぜか絵麻が混じって居ることに気が付いた。


 ——まったく絵麻らしいよ⋯⋯。


 思考が追いつかない刑事を余所目にゆっくりと彼女に近づいて行く。


「体調は大丈夫?」


「あなた⋯⋯誰?」


 金髪の不思議な青年を前に、絵麻は怪訝な表情を浮かべ身構えていた。


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