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超常ポリスは眠らない〜異世界警察と天蠍の王女〜  作者: 白谷毛虫
第一章 ようこそアストラへ
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第一章幕間 『叙勲』

「『来訪者』サクよ。前に」


 アストラ宮殿の『式典の間』で、正装に身を包んだサクはレッドカーペットを歩み出した。


 アナマリアの命を救った英雄の噂はたちまち王都を駆け巡り、その当事者が『来訪者』だったという事実も相まって国民を大いに興奮させていた。

 王家はサクに対しどういった礼を尽くして万謝の念を表すか考えあぐねていたが、アナマリア本人の意向を受け入れ『叙勲』という形になったのだ。


 レッドカーペットの両脇には近衛兵がズラリと並び、その先でアナマリアが可憐な立ち姿を見せている。

 サクは緊張した足取りで彼女の前までたどり着くと棒立ちになった。


「⋯⋯えっと何をすればいいんだっけ?」


 すぐさまアナマリアが顎で足元を指し、


 ——ひ・ざ・ま・づ・け!


 と、個人宛の言霊で話しかけた。


「あ、そうか」


 サクはぎこちなく片膝をついて頭を垂れる。

 アナマリアは一振りの剣をスルリと掲げ、


「『来訪者』サクよ。此度の働きを称え、其方に『王女騎士(プリンセスナイト)』の称号を授ける」


 と、サクの肩にそれを当てた。

 途端に宮殿内がざわめき始める。


「なに? 何の騒ぎ?」


 サクが立ち上がるとアナマリアはいきなりその手を取って半ば強引に何かを手渡した。


「これでそなたは妾の物じゃな!」


「え?」


 驚いて手中に視線を落とすと一つの章飾——クロスした剣がハートを守るような意匠の勲章が光り輝いていた。


「プリセスナイトね⋯⋯」


 サクはそれを見てざわめきの意味を察した。


「アナマリアさん? この間のお話はお断りしましたよね⋯⋯?」


「いきなり婿になれというのも妾も気が早かったようじゃ。なにせ初めての事での⋯⋯」


「いやいや、そういう事じゃなくてですね⋯⋯」


「解っておる。今日からそなたは妾一人の為の騎士。これでいつでも一緒にいられるな!」


「解ってな——い!」



 ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※



「サクさん、気が変わったら戻って来てくれ。我々司法局はあなたの席をいつでも用意しておくよ」


「ありがとうございます!」


 と、マルタンと固い握手を交わす。


 司法局の面々は、アムネジアの村に帰るサクとアガーテの見送りにアストラ港にやって来ていた。


「課長、駄目ですよ。サクさんはもう『プリンセスナイト』様なんですから」


 トレーシーがそれを嗜めると、


「サクさん⋯⋯羨ましいです!」


 ゴーリキが純情な心を傷つかせている。


「サクさんのお陰で、まだまだ自分の能力に伸び代がある事が解りました。次に会う時は成長した姿をお見せしますよ」


 アイソポスはいつもスマートだ。


「サクさん、本当にアナマリア様を置いていくんですか? 『プリンセスナイト』は王女が特別な男性に贈る地位なんですよ?」


 と、マキネンが心配そうに話しかける。


「いやいや、そんな事言われても困りますって。まずはアガーテを無事に村に送り届けてエニグマさんへ報告しなくちゃ。それは彼女にも伝えました。先の事は⋯⋯それから考えますよ」


「サク様とアムネジアの村で楽しく暮らせると思っていたのに⋯⋯宮殿に行ってしまわれたら寂しいです。それに私だって⋯⋯」


「大丈夫だよ。アガーテ」


 そこへ遠くから聞き慣れた声が響いてくる。


「おぉーい! 旦那ァー!」


 息を切らしてやってきたのはヤンセン、ハンセン、ヨハンセンの三人だ。


「お前ら、自由の身になれて良かったな! あれ⋯⋯子分達はどうしたんだ?」


「ああ⋯⋯ヤンセン一家は解散したんだ」


「え?」


「俺達のケジメさ。あいつらには王家から貰った報奨金を山分けしてもらったよ」


「びっくりしたよね。いきなりアナマリア様名義で金貨が届けられるんだもん」


 ヨハンセンは興奮気味だ。


「事件に巻き込んでしまって申し訳なかったからな⋯⋯」


 と、無口なハンセンも反省を口にする。


「なるほどね⋯⋯。それで? これからどうするつもりなんだ?」


 そう問われると、示し合わせたように三人が顔を見合わせた。


「旦那、アガーテ嬢! 俺達もアムネジアの村に連れて行ってくれ! どの面下げてと思うだろうが、俺達はその⋯⋯二人に惚れ込んじまったんだよ!」


「「え?」」


 突然の申し出に戸惑う二人。


「そんな事言われてもな⋯⋯。この件に関しては俺が何か言える問題じゃない。⋯⋯どうするのアガーテ?」


 サクはアガーテの判断に委ねる。すると彼女の瞳にみるみるうちに強い意志の光が宿っていった。

 それは心の強さ清らかさを持つ者にしか出来ない瞳——サクは時折見せる彼女のその表情が大好きだった。


「——行きましょう村に! お義父様には私からお願いします」


「さっすがアガーテ嬢!」


「その代わり、沢山働いてもらいますからね! うちは『働かざる者食うべからず』ですよ。ふふっ」


 アガーテが悪戯っぽく笑う。


「解ってるって。これからは『仲間』としてよろしく頼むぜ、旦那、アガーテ嬢!」


「世話になる」


「よろしくね!」


「さあ、乗船を急ぎましょう。三人のチケットも買わないといけませんからね!」


 まもなく汽笛を鳴らして船が出港する。

 サクは甲板上からマルタン達の姿が見えなくなるまで手を振り続けた後、そのままそこに立ち尽くしていた。


「どうしたんですかサク様?」


「やあ、アガーテ。いろいろあったなと思ってね⋯⋯」


「そうですね」


 二人は遠ざかる王都のシルエットをいつまでも見つめていた。



 それから一行はビブール川を遡上し、途中エアストブールで一泊した。流れに逆らう復路は往路の倍の時間が掛かるのだ。

 翌朝はアガーテが約束通り大聖堂を案内し、ちょっと早い昼食はヤンセン達の希望でパテを食べる事になった。舌鼓を打った彼らの表情に大笑いする。


「あぁ楽しい! あれ⋯⋯こんな事していていいんだっけ?」



 アムネジアの村に到着した頃には既に日が暮れ始めいた。


「おかえりなさい!」


 門をくぐると懐かしい面々が出迎えてくれている。

マドレーヌ、ポミエ、ダゴン、ホゲット、オクター、子供達、そしてアナマリア⋯⋯。


「え? ⋯⋯アナマリア?」


 一行は予想外の出来事に思考が追いつかず固まっていた。


「遅かったな。待ちくたびれたぞ妾の騎士よ!」


これにて第一章終了です!

第二章は現実世界の物語が進展する予定です。


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