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超常ポリスは眠らない〜異世界警察と天蠍の王女〜  作者: 白谷毛虫
第一章 ようこそアストラへ
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第二十八話 『威圧の塊』

 噴水広場は混沌としていた。


 我先にと逃げ出す者、生死不明のアナマリアの名前を泣き叫ぶ者、はぐれた同行者を探す者、不安と恐怖に支配されパニック状態となった群衆で溢れている。


「待機中の全職員を投入だ! 警備と連携して避難誘導に当たれ! 私たちはサーソク確保だ。行け行け行け!」


 マルタンが大声で指示を出している。


 サクは一足先に敷地内に飛び込み吹き飛んだバルコニーの跡に着地していた。


「あれ程の爆発だったのにアナマリアどころか怪我人がいない?」


 その間に上空では尻尾の怪人が声高らかに謳いだす。


「世界最高の『継承者』アナマリア=アストラは死んだ。祝え! 王都の国民よ。我が名はスコーピオン。この国の新たな象徴となり王となる者なり!」


「勝手な事を言うなサーソク! お前の正体は判っているぞ!」


 サクは上空を見上げて叫ぶ。そこへ遅れてやってきたマルタン達が一斉にエニグマ銃を構えた。


「司法局だ! サーソク卿、あなたの悪事は暴かれた。大人しく登降しなければ実力を行使する!」


「実力だと? 笑わせるな忌々しい司法局の犬共め。貴様らには計画が大幅に狂わされたわ。その礼にこの世から消えてもらうとしよう!」


 と言うや地上へ向けて光弾を放つ。バスを爆破したものより威力は劣るものの二、三メール四方を吹き飛ばすには十分な威力だ。


「——しまった!」


 意表をつかれたマルタン達は回避が間に合わない。


 しかしどういう訳か光弾は地上に到達する前に爆ぜ、マルタン達は難を逃れた。


「いったい何が⋯⋯?」


 慌てて飛び出していたサクは足を止めて空中に舞い散った光弾の飛沫を見つめていた。


「結界じゃ」


「————?」


 サクは背後からの突然の声に驚いて振り向く。


「お前は⋯⋯」


 そこに立っていたのはローブ姿の人物——例の橋上で出会った『威圧の塊』だった。声からして女性であることが窺える。


「話は後じゃ」


 ローブの女はふわりと宙に浮くとスコーピオンに空中で対峙する。


「飛んだ!」


「能力者か⋯⋯。そんなに死に急ぎたいならこの王自ら裁きを下してやろう!」


「プッ、何が王か。滑稽だな」


 ローブの女が鼻で笑った途端、スコーピオンの態度が豹変する。


「——笑うんじゃねぇぇぇ!」


 突如激高して光弾を連射するスコーピオン。ローブの女はビュンビュンとその間を飛び交い躱していく。


 が、不運にも最後の一発が命中すると陽炎のように蒸発してしまった。


「フハハハ! 王を笑った報いだ!」


幻影(ミラージュ)一つ消してそんなに嬉しいか?」


「————ッ!」


 スコーピオンは声のする方向を見て驚く。

 驚いたのはサクも同様だった。気配も感じさせず再び彼女が隣に立っていたからだ。


「⋯⋯ミラージュだと?」


「左様。つまり妾の幻影じゃ。そして貴様が狙撃したバルコニーの妾もまたミラージュに過ぎない」


「まさか⋯⋯! 貴様は——」


 スコーピオンがそこまで言いかけた時、女は自らのローブを宙に投げ捨てた。

 途端、その華やかな姿が露わになる。


 ノースリーブの純白のドレス。黄金のティアラ。アップにした赤い髪が風に揺れている。


「アナマリア=アストラ⋯⋯」


 サクはその横顔を間近で見つめながら呟いていた。


「久しいなサーソク。うぬの異変は薄々感じていたがまさか教王に魂を売っていたとはな。尻尾を掴むために一計案じさせてもらったぞ」


「アナマリアめ⋯⋯生きていたか。まあいいだろう。お前の苦しむ姿を見る楽しみが増えたと思えばなっ!」


 スコーピオンは矢庭に後ろを振り返ると光弾を滅茶苦茶に発射する。その向かう先は噴水広場の一般参賀者だ。


「キャー!」


 迫り来る光弾に逃げ惑う人々。


 しかし、


「まだ解らぬか」


 アナマリアがパチンと指を鳴らした途端、王宮を中心にドーム状の炎の結界が具現化する。光弾は次々に結界の内側に衝突し爆ぜて散っていった。


「うぬはまんまと引っかかったのじゃよ。王宮の中は最初から誰一人もおらん。セレモニーも全てうぬを結界に閉じ込めるための芝居じゃ」


「ぐぬぬ⋯⋯」


 ——王都の国民よ、妾は、アナマリアは健在じゃ。この不届者は檻に閉じ込めている故安心して避難するが良い。


 言霊で魂に直接語りかけるアナマリア。するとそれまで混乱していた群衆が嘘のように整然と避難を始めていた。


「司法局の者たちよ。その結界は善良な者は出入り出来る故近づき過ぎないことじゃ」


「はっ。お心遣い感謝します」


「あ、アナ、アナ、アナマリアしゃま⋯⋯」


 マルタンは敬礼して応えるがゴーリキは感激のあまり心ここに在らずのようだ。


 アナマリアは宙にふわりと浮かび上がり、


「⋯⋯そちも手を出すなよ」


 と、サクを一瞥すると再びスコーピオンと向かい合った。


「フフフ、ハハハ! つまり貴様を消せばいいのだろう? それならば話は早い!」


 スコーピオンはこれまでとはスタイルを変え接近戦を仕掛ける。一瞬で間合いを詰めると左右のフックから蹴り上げを流れるように繰り出していく。

 さらにアナマリアがそれらを躱しきったところを狙って死角から尻尾の打ち下ろしが襲う。


「もらった!」


 しかし手応えもなくアナマリアの姿は蒸発し、


「ここじゃ」


 彼女の実体はいつの間にかスコーピオンの背後に回っていた。


 間髪入れずにスコーピオンは背を向けたまま尻尾から光弾を連射する。アナマリアはそれらを移動とミラージュを織り交ぜながら難なく躱すと涼しい顔で空中に浮いていた。



「どうした? 最高の継承者様は避けるだけしかできないのか?」


「そう焦るな。詠唱中じゃ」


 アナマリアはスコーピオンの挑発に動じない。


 その時、何処からともなく泣き声が響き渡る。


「うえぇぇんママ——! どこにいるの怖いよぉ——!」


「子供?」


 見ると結界内の瓦礫の陰で五、六歳の少年が泣き声を上げている。混乱した群衆の中で親とはぐれてしまったのだろう。

 そこへ少年の母親らしい女性の手を引いて一人の少女が噴水広場から駆け寄って来ていた。


「ああっあの子です!」


 少年の母親が泣きながら我が子を指差すと、少女は躊躇いもなく結界の中に飛び込んでいった。


「まさかアガーテ!?」


 水色の髪をなびかせて全力疾走するその少女こそアガーテだったのだ。

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