ショートショート039 おじいちゃんの傘
あたしは、傘職人をしているおじいちゃんに聞いてみた。
「ねえ、おじいちゃん。おじいちゃんの傘ってさ、丈夫で長持ちもするけれど、それだけじゃなくって、すっごく可愛いわよね。どうしてこんなに可愛く作れるの? 何か、こつがあるの?」
するとおじいちゃんは、黄色い歯をむき出しにして、ニカッと笑いながらこう言った。
「それはな、人間をもとにしているからじゃ。人間は、傘の良い材料になるんじゃよ」
「えっ……」
「そして次は、お前の番なんじゃよ」
おじいちゃんは笑ったまま、あたしに手を伸ばした────。
そこで、あたしは目を覚ました。
なんだ、夢だったんだ。怖かったあ、よかったあ。
あたしはほっと息をつき、それから背伸びをするかのように、全身のビニールをうんと伸ばした。