博物館の調査――――レッド編
『宮島天河博物館』は市役所の裏にぽつんとある、小さな平屋の建物でほとんど目立たない。来館者も晶と雅の二人だけだった。
展示されているのは彼の作品の中で残っているもの数品、仕事道具、宝石画数作、日記等……そして、『夢の花』のレプリカと本物の本と、博物館にしては規模がとても小さい。
「……たしかにこれは、絵の中に入っているわけないわな。」
レプリカを見た晶はため息を吐く。
「なんでメモ帳を置いたんだ?」
メモ帳をレプリカのそばにおいて写真を撮る雅に疑問を持った晶が問いかける。
「大きさを把握するためだよ。写真ってただ対象だけを写すと、大きさがよく分からないんだ。だから、こうやって比較対象も一緒に写すんだよ。」
「なるほど。」
晶は妙に感心したような顔をした。
さらに奥に進むと、日記や本の展示スペースになっている。そこには机とイスも置いてあり、日記や本のいくらかは実際に読むことができる。幸いなことに、『夢の花』も読むことができる。
手に取ってパラパラとめくってみるが、特にこれといったものは見つけられない。
「……特に何もなかったな……。」
晶がそう呟いて本を元に戻そうとしたとき、
「あ!待って!」
雅が大きな声で呼び止めた。
「裏表紙!」
晶が本を裏返しにすると、そこには一枚の地図が描かれていた。(詳しくは「雅's note 2ページ目」をご覧ください。)
「ん?ただの地図だが――――」
「学校の本には、その地図はない。」
レプリカにはあらず、本物にしかない地図。
「もしかして――――」
他にも何か隠されている可能性を当然考える。
雅は晶の手から本を受け取り、裏表紙を一枚めくると、奥の方に、パラパラとめくっただけではまず気づかないようなところに、新たな詩が現れた。(詳しくは「雅's note3ページ目」をご覧ください。)
「まじか!こんなところに――――」
「あぁ、いかにも暗号って感じだね。」
もう一度、慎重に全ページを見るが、他にはもう見つからなかった。
「写真撮るのは……やっぱマズいかな?」
「最近は著作権がどうのこうのって面倒だからなぁ。」
「……がんばって書き写すよ。」
雅がメモ帳を開き、シャーペンを握った、その時だった。
「お二人さん、『夢の花』を探しているのかい?」
博物館のスタッフのおばさんが声をかけてきた。
「よければ、これを持っていくといい。」
そう言われて渡されたのは一枚の紙。片面には地図、もう片面には暗号がそのままの大きさで載っていた。
「……いいんですか?」
「もちろん。謎解き、頑張ってね。」
その言い方はまるで、「スタンプラリー、頑張ってね。」というような軽さがあった。
――――――この人、恐らく『夢の花』の在処を知ってるんだな。
『レッド、もうそろそろそっち行くから、待っててねー。』
ローズから通信が入る。
「雅、次のコーナーに行こうよぉ。」
晶は立ち止まった雅を別の場所に呼んだのだった。
「これは、ビンゴだね。」
レッドと雅の会話を聞いていたジョーカーが満面の笑みを浮かべる。
「ローズ、予告状、頼んだよ。」
『おーけーおーけー!ばっちり仕組んどいたんだから!』
「しかも、新しい情報も増えたし。」
『頑張れ、ジョーカー。』
「ローズも、少しは考えてよー。」
ジョーカーは口を尖らせる。
「僕なんて三日三晩、ずーっと詩と絵とのにらめっこだったんだよ。」
『そんなこと言われたって、私、忙しいもん。じゃ、私今から取材だから。ホワイトによろしくねー。』
ホワイトはジョーカーの横で、すやすやと眠っていた。