青葉は頑張ります!
「おはようございます!」
朝7時30分、テレビ局のオフィスに明るい女性の声が響く。彼女――――青葉 夜見は最近採用された短期の派遣社員。主な仕事は、ディレクターの補佐だ。
「次の番組内容、決まりました?」
「いや……いいネタがなくてね……。」
ここのチームの担当番組は、地域の観光スポットなどを紹介する番組だ。いわゆる、ローカル番組というやつだ。
「そういえば、この辺りって、有名な画家さんの出身地じゃなかったでしたっけ?」
青葉が上司のディレクターに声をかける。
「画家?」
「ほら、宝石でできた……絵画?でしたっけ。」
「あぁ、宝石画のことか。そういえば、いたな。たしか、名前は――――」
ディレクターがパソコンで調べる。
「あったあった。宮島天河さんのことか。」
彼女はディレクターのパソコンの画面をのぞき込む。
宮島天河――――多くの宝石彫刻、宝石画を残した現代の巨匠。使われる宝石の価値に加え、彼の腕によって造られた造形は多くの人を魅せた。それゆえか、多くの作品は所有者を転々と変え、行方知らずとなっている。
「そういえば、まだ紹介していませんよね?」
「そうだな。庶民には縁のない人物だったからな。」
「でも、テレビで見るだけなら、タダですよ?」
「ははは、視聴者はな。」
ディレクターは紙に宮島の名前を書いた。
「ま、他にネタもないからな。これで行こう。」
「わーい!早速調べてみますね!」
「期待してるよ。うまくいけば、今度正社員に推薦してみるから。」
「ますます頑張ります!私!」
青葉はうきうきと自分のデスクへ戻っていった。
青葉は昼過ぎに調べものと称して図書館に来ていた。
「うーん、ホントに何の手掛かりもないじゃないか……。」
「ほんとだねー」
彼女の話相手は大学生の青年――――に変装したジョーカー。
ジョーカーはため息をこぼす。
『博物館ほどではないとはいえ、少しくらいあると思ったのですが……。』
ジョーカーの眼鏡は基地という名の借りているマンションの一室で待機しているホワイトと通信で繋がっていた。
「やっぱ、博物館か学校にしかないのかね……?」
『ですが、今博物館に行っても明らかに怪しいというか、おかしいというか……』
「普段から賑わっている博物館なら簡単に見に行けるんだけど、普段の客数0人だとねぇ……。変に悪目立ちしちゃうよねぇ、やっぱり。」
『予告状を出してしまえば、騒ぎに乗じて見に行けそうですが。』
「でも、あると確信が持てない限り、予告状は出せないよ。ローズ、そっちは?」
「あたしの方はいい感じ。ディレクターにこの件を見せて、博物館になら取材に持ち込めそうだよ。」
青葉――――いや、ローズは薄っぺらい詩集をひらひらさせる。
『後は、レッドの進展待ち、ですね。』
「ローズは、博物館の方をお願いするよ。」
「うん!どんと任せてよ!」
ローズはうきうきと図書館を去っていった。
「ホワイト、僕も戻るよ。帰りに、美味しいパン屋さんあるから、寄ってもいい?」
『ご自由にどうぞ。』