協力者と情報探し
――――――とりあえず誰か数人と友達になって、それとなく『夢の花』について聞きたいところだけど……
学校に通い始めて数日後の休み時間、晶は教室内を見渡す。
――――――確か、『夢の花』の手がかりが図書室にあるんだっけ。なら、本が好きな子がいいかな。
目先の女子生徒たちは数人で他愛もない話をしている。その隣では男子生徒数人がふざけ合っている。視線を少し動かすと、席で問題集を開いて、問題を教え合っている生徒たちの姿が目に入る。机に落書きをしては笑い合う男子たち、寝不足らしく机に突っ伏して眠っている男子生徒、次の小テストのために問題を出し合う女子たち、ノートに問題を一生懸命解いている女子生徒。
彼ら彼女らにとっては日常でも、晶にとっては目新しいものだった。今まではただ遠くから眺めていたものが、手を伸ばせば届くほど近くに、目の前に広がっていた。どんなに切望しても、決して手に入らない子供もいるのに、望むことすら許されない子供もいるのに、目の前の彼らは、それが当たり前かのように享受していた。
隣の少年は、ただ静かに目で文字を追っている。
「ねぇねぇ、何読んでるの?」
晶は机の前にしゃがみ、本のタイトルを覗き込む。
「『濃緑の館』っていう、ミステリー小説だよ。最近発売された小説。」
隣の席の少年、雅はわざわざ本から顔を上げ、丁寧に答えてくれた。
「ただ、ちょっと難しいかも。ミステリー小説読み慣れてないと、何が起きてるのか分からなくなっちゃうから、あまりおすすめできないかな……。とっても面白い小説だけどね。」
「この間も読んでたよね?」
「あぁ、あれね。あれは『探偵黒百合事件簿』シリーズの最新作。僕が入学したときからずっと読んでるシリーズもののミステリー小説だよ。」
「よく本読んでるけど、ミステリー小説、好きなの?」
「うん。ミステリーそのものが好きなんだ。ドラマも、漫画も、こういう小説も。」
――――――なら、『夢の花』の謎解きも、一緒にやってくれるかな?いや、もしかしてもう解いていたりして。