謎が謎を呼ぶが、それでも僕らは動く
ジョーカーはホテルの一室へ入る。
「おかえり、ジョーカー。」
「おかえりなさい。」
「おつかれ。」
団員が口々にジョーカーを迎える。
「どうかしましたか?浮かない顔をしていますが。」
いち早くジョーカーの異変に気付いたホワイトは、声を掛けた。
「いや、ちょっとね……絶対盗めない宣言されちゃったもんだから……。」
「そんなの、いつものことじゃない。そして、いつもちゃんと盗んでいくでしょ?怪盗団ドリームサーカス。」
ジョーカーは髪留めを外し、頭を横に振る。
「それがね、彼女、あの宝石は『夢の花』じゃないっていうんだ。」
「「「え?」」」
三人の素っ頓狂な声に、肩をすくめるジョーカー。
「僕だってわけわからないよ。どう見たって、あれは夢の花、のはずなのに。」
「じゃあ、どうするんだ?」
ジョーカーはしばらく腕を組んで悩む。
「計画通り行動する。とりあえず、仕事を進めて、情報を集める。予告状は情報を掴み次第出す。」
「了解です。」「おっけー。」「りょーかい。」
各々が承認し、怪盗団は『夢の花』を掴むために動き出す。
『君たちでは決して盗むことのできないものだよ。』
ジョーカーは一人、名探偵の言葉の意味を考えていた。
彼女からもらった写真は自身のスマホに入っている。どう見たって美しい宝石。存在することは確かめられた。このまま仕事を進めても問題ない。ない、はず、だが。
引っ掛かってしまうのだ。
『君たちでは決して盗むことのできないものだよ。』
盗むことのできないものなんてない。そう謳う僕ら怪盗団ドリームサーカスを前に「盗ませない」ではなく「盗めない」と、「止める」ではなく「不可能」と言った彼女の言葉の意味が、真意が分からない。
彼女は僕らがそれでも盗もうとするのを知って、どうするのだろうか?いつもの通りに止めに来るのだろうか、それとも、盗めないものに対してはただの傍観者をするつもりなのだろうか?
それから、あの写真に写る宝石は『夢の花』ではないと言った。
なら、『夢の花』は一体何だ?
「それも謎、という事か……。」
少年は銀色の髪を揺らし、その場を後にした。