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誇大広告倶楽部  作者: 鬼廻
1/1

この倶楽部がすごい!の巻

ああ、風が吹いている。桜の花びらが、はらはらと舞っている。春の陽射しで室内はほんわかと暖かいけれど、外は昼過ぎの今もまだ寒そうだ。それにしても入学式の日にいい感じに咲いているなんて、桜の木というのはなかなか気の利くやつだと思う。

今日は私、青木野リチカ(あおきの りちか)の高校入学の日だ。長い入学式から解放された真新しい制服の女子達はおのおの昼食を済ませ、校舎内に散らばっていた。この高校、『きさらぎ女子高校』は全寮制の女子高で、今日はもう寮に帰ってのんびり自由な時間を過ごしてもいい。しかし、ほとんどの新入生はまだ校内にいるようだ。特にその大半が昇降口入ってすぐの、この大きな横長の掲示板の前でワイワイと楽しそうな声をあげている。

私はその集団に入るに入れず漏れ出てしまい、掲示板の横の窓からこうして春の風吹く中庭の風景を眺めている。

掲示板にはA4サイズほどの部活動の紹介チラシが、所狭しと貼ってあるのだ。どのチラシもカラフルで様々な趣向を凝らして紹介文が書いてあるらしく、書いてあるらしい…が人が多くてほとんど読むことができない。あ、ひとつ読めそうだ。なになに、文学部で一緒に素敵な物語の世界へ飛び込んでみま後頭部。後頭部、後頭部、後頭部。読み終わる前に次から次に視界に人が割り込んできて、女子高生の後頭部が見放題だ。

見終わったんならどいてくれ、どいてくれ…!

…念を送ってみたが、喧騒にかき消されたようだ。うむ、やはりゆっくり外の景色でも見ながら待つのが賢明だな。窓の外に視線を戻した。

ああ、風が吹いている。

私は、中学時代は頑張って勉強した。頑張った結果、こうして県内でも難関と言われるきさらぎ女子高に入学できたのだ。

では、私は頭がいいのかと言われると、決して良くはないだろう。頑張って、勉強だけをして、なんとかこの希望校に入れたのだ。部活もせず、友達と遊んだりもせず、真面目に真面目に勉強して、それでこの程度なのか、私の中学生活とはなんだったのか、そう思ってしまう。今、掲示板の前できゃぴきゃぴと笑っている同級生達は、私より充実した中学生活を送りながらも、この高校に入学できるほどに勉強ができたのだろう。

悲しい。実に悲しい。私はこれからも真面目に勉強を続けるだろう。そうでなければ彼女達には太刀打ちできないだろうから。しかし、彼女達は、私ができないような、楽しい高校生活を送るのだろう。

私も、女子高生したい。

勉強はしなければいけない。それでも、なにか、部活とかやりたいのだ。勉強に影響が出ないような、むしろ勉強にプラスになるような、そんな部活はないものか。正直言うと、せめて、この虚しい気持ちを忘れさせてくれれば、なんだっていいのだが…。

窓越しに見る中庭では、風が花びらと花壇の砂埃を巻き上げていた。

ふわり。

私の長くも短くもない髪の毛が、肩から顔のほうにそよいできた。

風?

外から吹き込んだわけではなく、人間の動きで生まれた風だろう。発生源をちらりと見てみると、掲示板を見終わったどこかの誰かが近くを通り過ぎただけだったようだ。なんだ…。

ん…?

風上を見たついでに、気になるものを発見した。くだんの掲示板は案外厚みがあったらしく、枠の側面はこぶしひとつほどの幅があった。そこにハガキよりやや小さいくらいの紙がセロハンテープで貼り付けてあったのだ。何やら文字が書いてあるようだ…自分のいる位置から近いものの、いかんせん字が小さくてよく見えない。掲示板に近づくほど人口密度が高いので、壁際、というか窓際、窓に張り付くようにしてジリジリと掲示板の側面に近づいてみた。

『日本学生広告頒布利用協会認定

きさらぎ女子広告倶楽部 活動紹介』

…これも部活の勧誘チラシのようだ。なんでこんなところに。まぁ読んでみよう。

『国際広告利用頒布協会主催 国際学生広告アイディアコンクール 金賞受賞』

へぇ。

『東大 進学率100%』

えっ、すごいな!…でもアレだろう?1人中1人が東大に進学した、とかだろう。1/1だって100%だし。

あ、100%の右下に、小さな文字を発見した。

『(5人中5人)』

…アレだ、東大ってあのすんごく頭がいい人が入るというあの東京大学のことじゃないパターンだろう。東山大学とか、東日本通信大学とか。そんな大学あるのか知らないけど。

チラシの文字はまだ続いている。

『美少女多数 是非一度ご覧下さい。』

…すごい自信だ。

これは流石に冗談が入っているのだろう。

『入部希望者は本日14時までに西棟4階視聴覚室まで来てください。待っています。』

ふむ。広告部、イマイチ何をする部なのかはわからないが、興味を引かれた。このチラシは黒のボールペンだけで書かれていて、非常に地味である。字は綺麗だが。掲示されている場所もわかりにくいし、目を引くような工夫も見られない。

…広告部なのに?

広告としての出来は、他の部のカラフルなチラシかのほうがいいと言えるだろう。なにやら国際コンクールで金賞もらったりしているようだし、これも私にはわからない有効な広告手法なのだろうか。

…視聴覚室か、行ってみよう。

トーダイなのかヒガシダイなのかわからないけど、大学進学率100%なら、勉強の邪魔になる部活ではないのだろう。見学だけでもしてみる価値はありそうだ。

私は昇降口の近くの壁にあった校内地図を頼りに、近くの階段から視聴覚室を目指すことにした。階段は、っと、アレか。よし。

…大学進学率は本当なのかとか、どんだけ美少女が揃っているのかとか、確かに気になる要素はたくさんある。しかし、見学に行く理由はそれだけではない。

普通、気づかないところに貼られていたチラシ。…呼ばれている気がした。

変な内容のチラシ。…普通じゃない何かが待っている気がした。

わくわくしていたのだ。

玉虫色の未来がそこにある気がして、なんとなく、階段を上がる足も軽やかだった。

最上階まで来て廊下をキョロキョロしてみると、すぐ近くの突き当たりに『視聴覚室』と書いてあるプレートを発見した。あのドアか。

心臓がドキドキうるさい。

ドアノブに手を掛けてから、ああノックしたほうがよかったかも、と思った。しかし、もう止まれなかった。

「…失礼します」

重い扉がすぅ、と隙間を作ると、思ったより広い空間が見えてきた。

その部屋の中心に、制服を着た美少女が、

───ひとりいた。

「…あら、はじめまして、こんにちは。昇降口のポスターを見てやって来たの?」

彼女は長い髪をふわりとさせながら、こちらに向きなおって話しかけてきた。すごく、透きとおった声だ。

「は、はい。どんな部か気になったので、見学させてもらってもいいですか?」

「…ええ、いいわ。日本学生広告利用頒布協会認定きさらぎ広告倶楽部へ、ようこそ。私は部長のあずま 織子おりこ、よろしくね」

長い部の正式名称をスラスラと唱えてきた。そういうの正しく言わないと気にくわないタイプなのかな?

「あ、青木野リチカです。よ、よろしくお願いします」

私は逆に、定型文な挨拶もスムーズに出てこない。ズバリ緊張である。

「えっと、見学よね。ちょっとこっちに来て」

「はい」

「…どうぞ!」

彼女──東部長にいざなわれて部屋の奥へ少し進むと、なにやらいわゆる、オタク趣味向けっぽい可愛らしい人形がズラリと床に並べられていた。部長は、その人形を見るように促している。

「なんですか、これは」

「あれ、知らない?人気なのに。ほら、みらくるプリティチェーンジ!」

「あ、いえ、その人形のアニメがわからないわけではなくてですね」

「ちょっと、人形なんて野暮な呼び方しないでよ。人形なんて言ったら子供のおもちゃみたいじゃない」

「えっと…フィギュアですか」

「フィギュアって言ったって虫とか動物のものだってフィギュアだわ。もっとちゃんと分類してちょうだい」

「ええ…なんですか、アニメオタク向けフィギュア、とかですか」

「オタク向けってー!これは小さい女の子向けのアニメのフィギュアよ!オタク向けという言い方は不適格だわ」

「さっき子供向けじゃないっていったじゃないですか…」

「人形という言い方が子供のおもちゃのように聞こえると指摘しただけで、フィギュアに子供向け作品のものがないとは言っていないわ」

「ふむ…ようするに、人形という呼び方が気に入らない、というだけなわけですね」

「あら、理解が早くて助かるわ」

「では、女の子のフィギュア、ではどうでしょう」

「ただの女の子ではないわ。オタクでも満足するくらいかわいい」

「オタク向け作品ではないものの、オタクも満足する美少女のフィギュア、であると」

「そう!もう一度言ってみて、何のフィギュア?」

「美少女」

「フィギュア」

「……細かい言い方を気にするんですね」

「大切なことだから、ね。…ついでにあなたの緊張もだいぶとれたようだし」

はっ、とした。

東部長にのせられて、ずいぶんペラペラと会話していた。…まるで古くからの友人と話すかのように。

私の緊張を解くために少しふざけてくれたのだろうか。これが先輩の余裕ということか。

「…なんだか気を使ってもらったみたいでありがとうございます。ところでこの人形…いえ、美少女フィギュアは部の活動で使うものなんですか?」

「使うかと言われると難しいわね。でも必要なものよ」

「…ここって広告部ですよね?広告部ってなにをやる部かイマイチわかってないのですが、美少女フィギュアとの関連性が見えてきません。この美少女フィギュアをどのように広告するべきか考察するのに使う、とかですか?」

「…いえ、見てもらうためよ」

「目を引く広告媒体として利用する、とかですか?」

「…いえ、そういう使い方はしないわ」

東部長、今までと比べるとやや歯切れが悪い。

「…これ、東部長が私物を個人的に楽しむために持ってきてるわけではないんですか?」

「たっ、確かに私の私物だし、個人的にも楽しんでいたけど、ひ、必要だから持ってきてるのよ!」

「なにに必要なんです?」

「だから、見てもらうためよ!」

「誰にですか?」

「あなたよ」

「…私、ですか?」

「そう!この視聴覚室にやってきた、あなたよ」

「なんで私にみせたかったんですか?別に私、美少女フィギュアを見る趣味はないですが」

「そうなの?…まぁ、その、物証は必要でしょ」

「物証?」

「ええ、美少女、の」

「…?」

「書いてあったでしょう?『美少女多数、是非一度ご覧ください』って」

「…えっ!?あ、えっ!?」

「美少女」

…あの、昇降口にあった、チラシ…まさか、あの内容、これ!?

「こ、これが!?部員のことじゃないんですか!?」

「ふふふふふふ、美少女『部員』多数なんて書いてないわよ?」

「ちょっとずるくないですか?これは」

「あら、さっき『美少女』フィギュアとあなたも認めていたと思うけど」

「あの書き方では部員に美少女が多数だと誤認するのは当然だと思うんですが」

「そうね、誤認するのは当然ね。…もし、それが目的だとしたらどうする?」

「どういうことです?」

「日本学生広告利用頒布協会認定きさらぎ広告倶楽部…」

東部長は、ニヤリと笑った。

「通称、誇大広告倶楽部」

「誇大広告倶楽部…?」

「そう!事実誤認するほど誇大な表現の広告を行う倶楽部よ!」

「な、なんですか、そりゃ…」

思わずため息が漏れる。東部長は目をキラキラさせている。

「楽しそうでしょう?これからどんどん誇大な広告をしていきましょうね!」

「いえ、ちょっと、思ってた活動内容と違かったので、入部する気はなくなってきたんですが…」

「えっ!?でも入部手続きはもう済んでるわよ」

「…は?」

思わず変な声が出た。

「…入部希望者は本日14時までに西棟4階視聴覚室まで来てください」

「えっ?」

また、あの、チラシの内容だ。

「この視聴覚室に来たということは、昇降口のポスターを見て、『入部を希望して』やって来ているはずよね?」

「は、はぁ」

「視聴覚室に来た時点で、入部手続きは完了です」

へ、屁理屈じゃないか。

「私は活動の見学に来たと伝えたはずですが」

「新入部員はまず活動の見学をするのは自然な事ではなくって?それに私は昇降口のポスターを見た事を確認したうえで『日本学生広告利用頒布協会認定きさらぎ広告倶楽部へ、ようこそ』と入部に対する挨拶もおこなっているわ。それに対してよろしくお願いしますと返したあなたは私に入部したと誤認させているんじゃないかしら?いえ、誤認ですらない、実際入部していると言えるでしょう」

「…なんですか、そりゃ」

「屁理屈よ」

「自覚してるんですね」

「そういう倶楽部だもの、誇大広告倶楽部」

「嫌な倶楽部ですね…」

「そんなことないわ、屁理屈でも筋は通す、良い倶楽部よ」

「なるほど、では私も筋を通したほうがいいですね」

「いい心がけね」

「では、誇大広告倶楽部、入部します」

「あら、やった!」

「では、誇大広告倶楽部、さっそく退部します」

「えぇ…そんな」

筋は通ってる、はずだ。

「私は嘘をつくのも、嘘をつく人も嫌いです。東部長に入部すると嘘をついたと思われるのは嫌です。でも誇大広告倶楽部は嘘をつく倶楽部でしょう?それがわかったので、一度入部した後、退部します」

「なるほど…それならば退部したくなるのもわかるわ。だけど、ひとつ間違った部分があるわ。誇大広告倶楽部は嘘をつかない」

「真実を伝えないのが誇大広告では?すなわち嘘広告倶楽部だと」

「嘘広告ならば、それは『虚偽』広告だわ。誇大広告倶楽部は嘘をつかない。誇張、するだけよ。あくまで凄そうに表現するだけで、誤ったことは伝えない」

「それが屁理屈だったとしても、ですか」

「理解が早くて助かるわ」

「なるほど、私は嘘をつく倶楽部から退部したかったわけですから、退部する理由は無くなってしまいました」

「そうね!」

「今のところは」

「今のところ、なの?」

「これから誇大広告倶楽部に嘘があれば、すぐ退部させてもらいます」

「そんな…でも筋は通ってるわね」

「まず、先ほど入部の手続きは済んでいると言ってましたが、入部届も出してないのに、本当に手続きは済んでいたんですか?学校の部活動である以上、学校のルールに従わなければ、嘘になってしまうのでは?」

「…誇大広告倶楽部は学校に認定された正式な部活動ではないわ。だから入部届の提出は必要ないわね」

「まあ、活動内容を考えれば、学校の部活動なわけないですよね。…そんな非公式部が『日本学生広告利用協会』とやらに認定されているとのことですが、本当ですか?」

「正確には『日本学生広告利用頒布協会』だけど、ちゃんと認定されてるわ、間違いなく」

「では、その証拠を見せてください。ちゃんと認定されてるなら、認定証とかあると思うんですが」

「認定証!そこまでは考えてなかったなー…」

「…考えてなかった?」

「あ、いや、その…こ、こっちの話よ!なんでもない!」

怪しい。

「でっちあげですか?」

「なっ…!」

「『日本学生広告利用頒布協会』なんていう協会自体が存在しなくて、認定されていることまで全部でっちあげですか?」

「げっ…!」

「げっ、て」

「い、いや…」

「図星ですか?」

「そ、そんなことない!『日本学生広告利用頒布協会』は存在する!存在しますよーだ!」

「ではその証拠を…」

「ホームページ!」

「ホームページ?」

「『日本学生広告利用頒布協会』のホームページが存在するわ!ちょっと待ってて!」

東部長はそう言うと、床に並べられたフィギュアの横に飛んでいき、直置きされていた学生カバンの中からノートのようなものを取り出した。

「ちょっと、ちょっと待ってね!」

私に向かい合い、ノートのようなものの表紙をめくって、タッチ操作をし始めた。ああ、タブレットPCか。

「ほら!『日本学生広告利用頒布協会』のホームページ!」

東部長は、私にタブレットPCの画面をずいっ、と見せてきた。

-日本学生広告利用頒布協会-


画面に映っていたのは、簡素ながら、確かに『日本学生広告利用頒布協会』のウェブページと思われる内容だった。

「ちょっと見せてくださいね」

東部長からタブレットPCを借りて、中身を見てみる。

協会概要…日本学生広告利用頒布協会は国際学生広告利用頒布協会に属する、学生による広告の利用と頒布を支援することを目的とした団体であり、なんちゃらかんちゃら。何やら長々と書いてある。

「…まあ、協会自体は存在する、みたいですね」

「でしょ!」

「……」

「……」

「…この協会の会長って東部長の知ってる人だったりします?」

「えっ」

「どうですか?」

「なんでそんなこと聞くのよ」

「粗探しです」

「……」

「…もしかして」

「なによ」

「私も知ってる人だったりします?」

「……」

「…東部長が『日本学生広告利用頒布協会』の会長ですか?」

「……」

「沈黙はズルいですね。肯定ととっていいですか」

「……」

…コクリ、と東部長は頷いた。

「これ、協会概要に団体って書いてありますけど他に協会会員っているんですか?」

「……」

部長は床の方を指差した。

「…フィギュアですか。美少女フィギュアと東部長だけの団体ですか」

「…そうよ」

「悲しいですね」

「…そうね」

「…新入生にツッコミ入れられたときのために、ホームページも作っちゃったんですか?」

「…そうね」

「だとしたらツメが甘いですよ。いろいろと。げっ、とか言ったり」

「…そうね」

「……」

「……」

「…ちなみにですけど、国際学生広告利用頒布協会の会長も、東部長だったりしますよね?」

「違うと思う?」

「思いません」

「…そうよ、東織子の協会に属する東織子の協会に認定された東織子の誇大広告倶楽部なのよ」

「悲しいですね」

「……」

「……」

「大好き」

「…は?」

「リチカちゃん、大好き」

告白された。

「なんですか、いきなり」

「私のくだらない屁理屈聞いてくれて、突っ込んで欲しいところまで突っ込んでくれる、リチカちゃん大好き」

「そうですか」

「今まで何人か入部希望者が来たけれど、みんな「わけわかんない!」とか言って、話もよく聞かず立ち去ってっちゃうんだもん」

「そりゃそうですよ…私もわけわかんないです」

やっぱり私の他にもあのチラシに気づいた人いたんだ。ほっとしたような、ちょっとがっかりしたような。

「わけわかんなくても立ち去らず話聞いてくれるリチカちゃん大好き」

「…今のところ、私は東部長のこと全然好きになれないですけどね」

「そんな!」

「…でも嫌いにもなれないですね」

「ほんと?」

「嘘つきじゃないからです。さっきも言ったように、嘘つきは嫌いです」

「屁理屈は言っても嘘はついてないものね、今のところ」

「そういうことです。要するに…」

「…要するに?」

「…退部したい私は今、東部長を嫌いになろうと努力しているところです」

「…そういうことになるわね」

とはいえ、私の中で部長は、ある種頑張り屋で悪い人ではないのかなと思い始めている。

「まったく…なんでこんな無理矢理入部させるようなことしてるんですか。普通にお願いすれば逃げなかった人もいたかもしれないじゃないですか」

「…それもそうね」

「屁理屈を言う部だからといって、屁理屈に頼りすぎなんですよ。時には素直にならなきゃ損ですよ」

「なるほど…じゃあ少し素直にやってみようかな」

「そうしてください」

「じゃあ…じゃあ、コレ!書いてください!お願い!」

部長はブレザーのポケットから丸まった紙を取り出して、それを開いてこちらに渡してきた。

「なんですか…?」

そのしわくちゃの紙を見てみる。

入部届。

「一応入部届書いて!」

「さっき入部の手続きは完了してるっていってたじゃないですか!」

「入部の手続きは完了してるけど入部後のなんやかんやで入部届が必要じゃないなんて言ってませんー!」

「なんやかんやってなんですか、事務処理で必要とか、何とでも言い方あるでしょうに…」

しぶしぶ入部届を受け取り、さらにボールペンを借りて、さっきから持ちっぱなしだったタブレットPCの裏側を勝手に下敷きとして使って入部届に自分の名前を書き、部長にその全てを返却した。

「あざーす!…なるほど、カタカナでリチカ、ね」

「もしかして、私の名前ちゃんと知りたかっただけですか?」

「ち、違うよう。本当に必要なんだよう。まあ好きな人のことは何でも知りたい年頃だけどさ」

「…まあ、いいです。よくわかんないホームページとかに私の名前勝手に載せたりしないでくださいね」

「え」

「え、じゃないです」

「…まあとにかく、これで入部の確固たる証拠をゲットできたわけだ」

「何度でも言いますけど、一旦入部するだけですからね」

「わかってる、わかってるってー…」


キーンコーンカーンコーン


鐘がなった。

「2時ね」

東部長が言った。東部長は教卓の裏に隠されていた紙袋を手に取り、床に並べてあったフィギュアをどんどん入れ始めた。

「片付けて…これからなにかするんですか?」

「移動よ」

「どこにです?」

「部室」

「部室って、ここは部室じゃないんですか?」

「ここは新入生に部の紹介をするために借りただけよ。視聴覚室なんて正直に使用用途言えば簡単に貸してくれたわ」

入部希望者は14時までに視聴覚室に?とか書いてあったな。まさか14時になったら移動するとは。めんどくさくなる前に粗を探して退部しちゃいたいんだが…

「…あの、東部長」

「なあに?」

部長は片付けをしながら、振り向きもせず返事をしてきた。

「誇大広告倶楽部って、他に部員いないんですか?」

「いるわよ」

「フィギュアとかじゃない人間の、ですか?」

「もちろん」

「何人いるんですか?」

「私たち含めて6人よ」

「ではその私たち以外の4人はどちらに…」

「わからないわ」

「わからないんですか」

「だって、「わけわかんない!」って言って立ち去ってっちゃったから、どこ行ったかわかんないわよ」

「それ勧誘失敗した新入生じゃないですか!そんな人部員に含めないでくださいよ!」

「青木野リチカの入部手続きが完了していたように、本日14時までに視聴覚室に来た彼女たちの入部手続きも完了していまーす」

「彼女たちは立ち去ることで退部の意思を示していると思うのですが」

東部長は床に残った最後のフィギュアを手に取り、こちらに向き直った。

「退部したいんだったらちゃんとしたプロセスを踏んでもらわなきゃ」

最後のフィギュアを紙袋に入れた。

「プロセス、ですか」

「そうよ。誇大広告倶楽部には誇大広告倶楽部の、退部するためのルールがあるの。いろんなネットのサービスでも、ちゃんと退会手順踏まないと退会できなかったりするでしょ。それと同じよ」

「どんなルールなんですか?」

「教えないわよ」

「私も辞められないじゃないですか!」

「辞めさせないわよ!」

「誇大広告倶楽部に嘘があったら退部するって言ったじゃないですか!」

「もちろんそのときは退部のプロセスを説明するわよ。それ以外に、飽きたから?とか、他の部に誘われて?とか、簡単な理由では辞めさせないために、教えないわよ」

「そうですか…」

なんだか外堀を埋められつつある気がするぞ。いよいよこの変な倶楽部から逃れられないような気がしてきた。東部長は学生カバンを肩にかけ、紙袋を片手で持った。

「さあ移動するわよ」

東部長は扉の方に歩き始めた。

「あ、待ってください。まだ聞きたいことがあるんですが」

「話は歩きながら聞く」

東部長の手がゆっくりと扉を開いた。

「あの、今までの話から想像すると、誇大広告倶楽部って東部長が最近一人で作った倶楽部ですよね?」

「御名答。私が一人で作って、かわいい5人の新入生が入部した」

東部長についていくように扉を出て、廊下を歩いていく。

「…東部長が最近一人で作った、ということになると、『東大進学率100%』というのはどう転んでも嘘になるんじゃないですか?」

「あ」

「あ、じゃないですよ」

「あーあれね、あれ、トーダイじゃないからあれ」

「何ダイでも5人中5人とか書いてあったんですから、大学進学率は虚偽を載せたということになりませんか?」

「あれね、何ダイでもない。そもそも大学の話してない」

「…どういうことです?」

「あずままさる」

「…はい?」

「あずままさる進学率100%」

「誰ですかそれ…」

「私よ」

「…はい?」

「私、東織子は、あずままさるです」

「どういうことですか…?」

「ニックネームよ」

「自称ですか」

「自称でも他称でもニックネームはニックネームです。それは国際ニックネーム利用頒布協会がそう言っています。ホームページもあるわよ?見る?」

「いえ、結構です」

「あずままさるは私以外にも私の家族と親戚のおばさんのニックネームでもあって、その全員が、なんと、中学を卒業すると高校に進学していたのよ」

「…つまり、『あずままさる進学した事ある率100%(5人中5人)』ということですか」

「理解が早くて助かるわ」

「それで、これを説明したら、かわいい新入生のうち4人が「わけわかんない!」って言って逃げちゃったわけですね」

「…御名答」

「私も逃げたいです」

「ダメよ。ほら部室についたわよ」

話しながら歩いているうちに、いつのまにか部室についたようだ。入口のプレートには『第3和室』と書いてある。

「…ここも、誇大広告倶楽部の部室じゃなくて他の部活の部室だったりするんじゃないですか?部室に行くとは言ったけれど、どこの部の部室に行くかは言ってない?とか言って」

「あら、勘が鋭いわね」

「疑心暗鬼になってるだけです。そもそも正式な部じゃない誇大広告倶楽部にちゃんとした部室があるとも思えないというのもありますが。で、何部の部室なんです?」

「将棋部よ」

「将棋部の部室に何の用があるんです?」

「部室を乗っ取るのよ」

「穏やかではないですね」

「もちろん屁理屈を言って乗っ取るんだけど…今まで私と話をしてきて、私のツメの甘さはわかったでしょう?屁理屈の準備はしていても、咄嗟の言葉や表情に、いろいろ出ちゃうのよ」

「まあ確かに」

「だから、あなたには、サポートをして欲しいの」

「サポートですか」

「あなたは冷静に的確な受け答えができる子だわ。誇大広告倶楽部にあなたが来てくれてよかった。必要な人材よ」

「自覚はないですが…まあこれも何かの巡り合わせと思ってやってみます」

「よし、じゃあいくわよ、リチカ!」

東部長は扉の取っ手に手をかけた。

私は急に名前で呼ばれて、なんだかちょっと、ドキッとした。

「失礼しまーす」

ガラガラと音をたてて東部長が引き戸を開けると、その先は土間というべきか、下駄箱のある狭い空間になっていて、一段高いところにふすまがあった。さながら旅館の一室の入口のようだ。東部長は下駄箱に上履きを入れ、ふすまを開けた。

「おじゃましまーす、広告部でーす」

「あ、はーい。すみません、気づきませんでした」

開いたふすまの向こうから可愛らしい声が聞こえてきた。東部長は部屋の中へ入っていく。私も東部長に習って上履きを下駄箱に入れて、段差を上がってふすまを通った。

「はじめまして、広告部部長の東織子です。こっちは部員の青木野リチカです」

「失礼します」

部屋に入ると、窓からの採光で明るかった。8畳ほどの狭い畳の室内の、奥まった場所にコタツがひとつ。その上にはノートパソコンがあり、一人の女子生徒がそこに向かっていた。

「あ、どうも、はじめまして。将棋部部長の松平まつだいらです。広告部…さん、ですか?」

松平さんはコタツから立ち上がって挨拶してくれた。小柄な人だ。ショートボブの髪型も相まって、かなり幼く見える。

「突然お邪魔してごめんなさいね。我々広告部は校内で困ってる人を探しているの。将棋部で何か困ってることはないかしら?」

東部長は笑顔で話す。東部長と松平さんも面識はないようだ。気がつけば、ブレザーのリボンの色がみな違う。東部長は赤、松平さんはオレンジ、私は水色。学年がみんなバラバラということか。

「困ってること…ですか。すみません私、広告部さんがどんな活動をしてる部活かあまりわからなくて、なんとも…」

松平さんは困り顔だ。うーん、話しぶりからして、東部長は3年、松平さんは2年生だろうか。もちろん私は1年生だ。…さてサポートをして欲しいと言われたものの、年上の人達の会話にどう入っていけばいいものか。東部長が話し出す。

「広告部がどんな部か知らないのも無理はないでしょうね。我々広告部は、またの名を誇大広告倶楽部という学校未認可の屁理屈ばっかり言う倶楽部なのよ」

「えっ!?それ言っちゃうんですか!?」

東部長の突拍子もない発言に、思わずツッコミをいれてしまった。いろいろ隠して攻めていくんじゃないのか。

「誇大…広告?」

松平さんもポカーンである。

「そう、誇大広告倶楽部!奇妙な倶楽部に思えるでしょうけど、国際コンクールでの受賞歴もある優秀な倶楽部なのよ!」

その国際コンクールの主催者はたぶん東部長で、ウェブページに結果が載ってるんだろうな。だから受賞歴も嘘じゃない。はず。

「…いまいち話が見えてこないんですが、その誇大広告倶楽部さんがどうして困ってる人を探しているんですか?」

「困り事を解決して、交換条件で部室を貸して欲しいからよ」

「それも言っちゃうんですか!?」

「部室を…?できませんよ!そんなこと…」

松平さんも思わず声を荒げた。そりゃそうだ。

「でも、この部室…1人なんでしょう?」

「うっ」

「将棋部の部員、増やしたいわよね?」

「それはそうですけど!」

「…本日16時」

「16時?」

「本日16時までに将棋部の部員を増やしたら、部室の一部を誇大広告倶楽部に貸してもらえないかしら?」

「えっ!」

16時だあ?今14時過ぎだから2時間もしないうちに新しい将棋部員を連れてくるっていうのか?

東部長のブレザーの裾をちょっと引っ張って話しかける。

「そんなこと、できるんですか?」

「もちろん、大丈夫よ!」

たいした自信だな。この話、乗っかろう。失敗したら今の発言が嘘になる。私も晴れて自由の身だ。

松平さんに話しかける。

「松平さん」

「はい」

「この部長、嘘は申しません。私が保証します」

「はあ」

「それに、今日だけで私を含めて5人もの新入生を誇大広告倶楽部に入部させた実績があります」

「5人も!」

「ぜひご検討ください」

「むむむ…」

松平さんは悩んでいる。よっぽど新入部員が欲しいんだろうな。

東部長が追い討ちをかける。

「新入部員、入らないとまずいんじゃないかしら?」

「うう…確かに新入部員が入らないと同好会に格下げされて、部費もゼロになっちゃうんですよ」

「なら悩むことないじゃない」

「でも勝手に部室貸したりしたら顧問の先生に怒られちゃうだろうし…」

「その点は問題ないわ。顧問の先生にバレないように全力を尽くすし、松平さんの許可をもらってるなんて絶対にバラさないわ」

「もし先生が急に部室にやってきたらどうするんです?」

「その時はたまたま遊びに来たと装えば大丈夫よ!」

「でも…うーん」

「このまま将棋部がなくなっちゃってもいいの?」

「…わかりました。新入部員が入れば部室お貸しします」

「やった!」

「ただし、将棋部の邪魔になるようなことはしないでくださいね」

「もちろんよ!」

案外あっさりOKが出たな。しかしこれから新入部員を探すのか。大変だな。東部長に話しかける。

「じゃあさっそく新入部員を探しに出かけますか?」

「何言ってるのよ、私たちは何部?」

「…誇大広告倶楽部ですが」

「じゃあ広告を作らなくちゃ」

「はあ」

東部長は松平さんの方を向いた。

「松平さん」

「はい」

「将棋部の活動を見せてもらえるかしら」

「活動、ですか」

「いつもやってる事でいいのよ」

「いつも…と言うと、一人では将棋も指せないので、パソコンでオンライン対戦の将棋をやってるんです」

「オンライン将棋!おもしろそうね、見せてちょうだい」

「では、こちらへどうぞ」

松平さんに促され、3人でノートパソコンの前に座る。

画面にはかわいいウサギのキャラクターが、キラキラとデコレーションされた部屋に佇んでいるイラストが表示されていた。

「これが私がやっているオンライン将棋ゲームで…」

「これが将棋ゲーム?」

東部長も思わず疑問を投げかける。そんなかわいさのあるゲーム画面だ。将棋ゲームの画面とは到底思えない。

「かわいい動物のキャラクターがお供としてサポートしてくれるんですよ。それで、将棋に勝てばポイントが貰えて、そのポイントで着せ替えしたり部屋の模様替えができたりするんです」

「将棋とミスマッチなゲームデザインね」

「そのせいかやってる人も少ないみたいで…逆にそこが気楽なので気に入っているところです」

将棋ゲームだが、女の子のプレイヤーを想定しているようだ。確かにやる人が少なそうなゲームだ。

「この『ランキング』ってとこ、ちょっと見せてよ」

東部長が画面を指差す。

「ランキングですか、ちょっと待ってくださいね」

画面が切り替わると、プレイヤー名とお供キャラクターがセットになって羅列されていた。

「ランキングに入ってる人のサポートキャラはクマばっかりね。クマだとなにか有利なの?」

「お供キャラによって『ひみつわざ』っていう固有のサポートを受けられるんですけど、クマさんはそれが強力なんです」

「なんで松平さんはクマにしないの?」

「…ウサギさんのほうがかわいいので」

ふーん、普通の将棋じゃなく、必殺技がある特殊ルールのゲームってことか。将棋部の活動としては不適切な気がしないでもない。

「なるほどねぇ…リチカ、将棋のルールは知ってる?」

「駒の動かし方ぐらいは辛うじて知ってますが」

「それで十分よ」

「私にこのゲームをやらせるつもりですか?」

「ええそうよ。リチカには大会に出てもらいます!」

「大会?」

また東部長が突拍子もないことを言い始めたぞ。

「このゲームを使った大会を全国学生将棋推進奨励協会が主催します!」

「その全国学生将棋推進奨励協会の会長は?」

「私よ!」

「でしょうね」

また面倒くさくなりそうだ。

「え、ちょっと待ってください。なんとか協会が主催で、大会って…どういうことですか?」

松平さんは現状が飲み込めていないようだ。でしょうね。説明してあげよう。

「簡単に言ってしまえば、東部長は大会をでっちあげて、将棋部の宣伝に使おうとしているわけです」

「でっちあげて!?」

「そういう倶楽部なんです、誇大広告倶楽部」

「なるほど、誇大広告って…ようやく理解しました」

松平さんは不安そうな顔をしている。わかります、その気持ち。

「さすがね、リチカ。誇大広告倶楽部のこと、よく理解しているわ」

東部長は誇らしげだ。

「松平さんはとりあえず言われた通りにしていてくれれば大丈夫だと思います。これから東部長がいろいろ屁理屈を並べますので」

「はあ、わかりました」

東部長はカバンからタブレット端末を取り出し、なにやら操作し始めた。

「さっそくですが、雷の王の戦いと書いて『雷王戦』の出場者を募集するわ!」

おお、それっぽい仰々しい名前だ。事前に考えてきたんだろうか。

「出場者は私と松平さんの2名ですか」

「そうよ、なんてたって定員が2名だからね。でも、リチカにはニックネームで出場してもらうわ」

「ニックネームですか、どんなです?」

「まえまわりまさるかいまさるまさるものこくりゅうさい」

「…また意味不明ですね」

「まあ、とりあえずタブレットでも将棋ゲームに登録したから、イチカはこっちでやってね」

東部長にタブレット端末を渡された。画面は名前の入力画面で、名前のところには『前回大会優勝者 黒龍斎』と入力されていた。

「この名前がまえまわりなんとやらかんとやらって読むニックネームですか」

「まえまわりまさるかいまさるまさるものこくりゅうさい、ね」

「覚えたほうがいいですか?」

「いや、大丈夫よ」

タブレット端末の画面をタッチして次へ進むと、お供キャラクターの選択画面になった。可愛らしい動物のキャラクターが8種類から選べるようだ。

「お供キャラクターはなんでもいいですよね?松平さん、初心者向けのキャラクターはどれですか?」

「初心者ならカメさんがいいと思いますよ」

「ちょっとちょっと!」

東部長が止めに入った。

「前回大会優勝者っぽくクマ使いなさいよ!」

「『前回大会優勝者』じゃなく『まえまわりまさるかいまさるまさるもの』っていうニックネームのただの人なんですが」

「そこまで前回大会優勝者っぽいニックネームで前回大会優勝者っぽくない言動をするのは、国際ニックネーム利用頒布協会会長としはどうなのって思っちゃうなー」

「名は体を表すという話ですか」

「そんな感じの話よ」

「部長のせいで『まえまわりまさるかいまさるまさるものこくりゅうさい』覚えちゃったじゃないですか」

「自分のニックネームだもの、覚えて不都合はないんじゃない?」

「はあ…まあいいです」

私は東部長に促されたとおり、クマのキャラクターをお供に選んだ。

「メインの画面まで来ましたよ。あとは対戦相手に松平さんを選べばいいだけですね」

「さあ…ではこれより、『雷王戦』スタートです!」

かくして、全国学生将棋推進奨励協会主催オンライン将棋大会『雷王戦』が幕を開けたのであった。

「部長、よろしいでしょうか」

「なんだね、リチカくん」

「これ、さっさと負けちゃっていいんですよね?大会があった事実さえでっちあげられればいい話ですし」

「ダメよ!出来レースをするなんてズルいじゃない!」

「初心者と経験者がマッチングしてる時点で出来レースな気がしないでもないですが…」

「とにかく!一生懸命戦うのよ!その結果が大差だろうと、正々堂々戦うことで現実味が増すのよ!」

「あくまで結果をそれっぽくするためにがんばれということですね」

「そうよ、広告を作るとき作りやすくするためよ」

「まあ…とにかくやってみます」

タブレット端末の画面にタッチすると、対局がスタートした。

「ガンガン攻めなさいよ」

「はい」

正直言えば駒の動かし方も自信がなかったが、駒をタッチすると動かせる方向は色が変わって教えてくれるようなので、なんとかなりそうだ。クマのキャラクターも「がんばれー」と横で応援してくれている。

「部長は将棋できないんですか?」

「まったく」

頼りにならないな。とりあえず強い駒である飛車と角を動かせるように、邪魔な駒を動かしていく。

一方対戦相手の松平さんは守りを固めているようだ。

クマさんはというと、「制限時間があまりないよー!」と私を急かしていた。

「将棋ってこんなに時間に追われるものなんですか?」

松平さんに話しかける。

「それはですね、お供キャラにクマさんを選んだからですね。あまり使ってないランクの低いクマさんは特に制限時間が短く設定されてるんです」

「なるほど、クマさんのせいですか」

クマさんに急かされながらも、飛車と角で相手の歩を取っていく。

「どんどん相手の駒取ってってるわね、いい感じよ!」

東部長に褒められた。

しかし相手の飛車と角も動き出し、こちらの陣地内も慌ただしくなってきた。

「飛車、とっちゃいますよ?」

「あっ」

松平さんにこちらの飛車を取られた。ピンチだ。

クマさんが「困ったときは持ち駒も使おう!」とアドバイスしてくれている。持ち駒…歩だけだがうまく使っていこう。さっそく置いてみる。

すると、クマさんが「ちょっと待って!そこに置くと二歩だよ!二歩だと負けになっちゃうけどいいの?」と言ってきた

「負けていいわけないじゃない。何言ってんのかしらね、このクマ」

「部長はクマさんに厳しいですね」

東部長はご立腹だが、私にとってクマさんのアドバイスは大切だ。今も「制限時間があまりないよー!」と急かしてきて、ちょっとウザいが、初心者には嬉しいサポートだ。

「二歩っていうのは同じ列に歩を2つ以上置いてはいけないっていうルールなんです」

対局相手の松平さんも優しく教えてくれた。

松平さんは優しい人だ。多分将棋もある程度手を抜いてくれているんだろうけれど、さっきから攻められっぱなしでどうしようもなくなってきた。

「なんだかピンチっぽいわね、『ひみつわざ』使いなさいよ『ひみつわざ』!」

「そういえばそんなものもありましたね」

東部長に言われて思い出したが、普通の将棋とは違う、必殺技があるんだった。

「松平さん、『ひみつわざ』を使うとどうなるんです?」

「『ひみつわざ』はお供キャラによって効果が違いまして、例えば私のウサギさんだと、『まった』が使えます。指し直しができるってことですね。お供キャラの下にある『ひみつわざ』のボタンをクリックしてみれば効果を教えてくれますよ」

「さて、クマさんはどんな効果なのか。見てみましょう」

クマさんの下にあった『ひみつわざ』ボタンを押してみる。するとクマさんはこう言った。

「『ひみつわざ』!一度だけ二歩できるようになるよ!」

「さっき言えよおおー!」

東部長が思わず叫んだ。

「すいません、私の説明不足で…」

松平さんが申し訳なさそうにしているので、フォローを入れる。

「いえ、私は大丈夫です。聞いた限りだと、素人目にはウサギさんの『ひみつわざ』のほうが強そうにも思えますが」

「上級者どうしだと『まった』はあまり意味がないんです。逆にクマさんの二歩はそもそものルールを壊してしまっているので、勝機ひとつで結果が変わってしまう上級者はみんなクマさんを選ぶんです」

「なるほど、それでランキング上位の人はみんなクマさんだったんですね」

そんな強力なクマさんの『ひみつわざ』だが、私には使いこなせそうもなかったので、使うのをあきらめた。すると、あれよあれよと言う間に追い込まれて、こちらの王将は丸裸にされてしまった。

「ああ、もう負けちゃいそうじゃない!」

「もうどうしようもないですね」

「最後まで足掻くのよ!」

「わかりました」

なんとか生き延びようと王将を動かしてみたが、どんどん動かせるところはなくなり、最後には画面に「詰みです」と表示された。

「負けちゃいました」

クマさんもがっかりしている。

「あーあ、やっぱり将棋部は強いものね」

東部長もがっかりしている。

「そもそも勝つ気はなかったですが」

「どんな勝負事でも、負けると分かっていても、負けるのはやっぱり悔しいものよ」

「そうですね」

こうして、なんとか協会主催将棋大会『雷王戦』は幕を閉じたのであった。

「さて、大会は終わったわけですが、これからどうするんですか?」

松平さんが東部長に話しかけた。

「広告を作るわ。ちょっと待ってね」

東部長はカバンから筆箱と、なにやらハガキぐらいの薄い紙を1枚取り出した。

──あの紙だ。

東部長は筆箱からシャープペンを取り出し、紙にさらさらと文字を書き始めた。

「…手書きなんですね」

東部長に話しかける。

「そうよ」

東部長は手を動かしながら、声だけで返事をした。

「東部長はホームページ作ったりパソコンにも強そうですし、このタブレットで作っちゃえばいいんじゃないですか?」

「たとえタブレットで作ったとしても、プリンターのあるところまで行くのが大変じゃない。非公式な部活が自由に使えるプリンターっていうのもなかなか無いしね」

「なるほど」

そんなこんなしていると、東部長は広告を書き上げた。

「よし、できた!」

「ちょっと見せてください」

書き上がった用紙を見てみると、こんなことが書いてあった。

『求む!将棋部部員!

将棋部は新しい部員を募集しています!部長は、全国学生将棋推進奨励協会主催のオンライン将棋大会『雷王戦』で、前回大会優勝者 黒龍斎氏を決勝で破り、優勝しています!そんな実力者が初心者にも優しく指導します!

入部希望者は本日16時までに第三和室まで来てください。』

「…これだけだったら勝負の内容なんて関係なかったじゃないですか」

「まあまあ、いいじゃないの」

紙を松平さんにも差し出して見せる。

「…これで部員が増えるんですよね?」

松平さんの不安そうな気持ちはよくわかる。こんな小さい紙にシャープペンで書いた黒一色の広告では、誰もこないと思うのだ。

「部長、もっと派手な広告にしたほうがいいんじゃないですか?」

「大丈夫よ」

「本当ですか?」

「大丈夫よ。ほらリチカ、このポスターを貼りに行くわよ」

そう言うと東部長は立ち上がった。大丈夫って言うならそれで別にいいんだけど

、そもそもポスターって言っていいのかすら怪しいこの紙切れを掲示するだけでどれだけの効果があるっていうのか。不安だらけだが、東部長についていくことにした。


東部長と私は、昇降口にある大きな掲示板の前に来た。

先ほどあれだけ混雑していたのに、今は誰も掲示板を見る人はいなかった。よく読めなかった部活動の勧誘チラシも、今では全部見通せる。

「さあポスターを貼るわよ」

東部長はブレザーのポケットからセロハンテープを取り出た。

「掲示板のどこに貼るんです?将棋部のポスターの上ですか?」

掲示板には隙間なく各部活動の勧誘チラシが貼られており、小さな紙を貼るスペースも無い。ちなみに将棋部のチラシは掲示板の中ほどに貼ってあった。

「貼るのはここよ」

東部長が指差したのは掲示板の枠の横っ側──私が誇大広告倶楽部のチラシを見つけた、あそこだった。そこにはまだその誇大広告倶楽部のチラシが貼ってあった。

「そこですか。なんで部長はそこに掲示物を貼るんですか?」

「掲示板に勝手に貼ったら怒られるからよ」

「そこも掲示板の一部なんじゃないですか?」

「掲示板って板なのよ?板ってどういうものか考えてみなさいよ。どう考えてもここは板ではない部分、板を保護する枠でしかないわ」

「なかなか厳しい屁理屈ですね」

「そうね」

「でもここは掲示板とは言えないので勝手に掲示物を貼っても怒られるいわれはないと」

「そうよ。掲示板でも壁でも床でも天井でも窓ガラスでもない部分なんだから、怒られるいわれはないわ」

「多分見つかったら怒られますよ」

「そうね。でもまだ見つかってないのよ」

「そういうことですよね」

「そういうことよ」

東部長は誇大広告倶楽部のチラシを剥がし、持ってきた将棋部勧誘の紙を新たに貼り付けた。

「これでよし」

「これでいいんですか」

「これでいいわよ」

「これで将棋部部員、増えますかね」

「増えるんじゃない?」

「軽いですね」

「結構真剣に誇大広告倶楽部のこと考えてるのね」

「私も一応誇大広告倶楽部の一員ですからね。それに…」

「それに…?」

「どんな勝負事でも、負けると分かっていても、負けるのはやっぱり悔しいものですからね」

「そうね」

東部長はにっこり笑った。

「このあとはどうするんです?」

「帰るわよ」

「どこへです?」

「もちろん、将棋部の部室へよ」

「もっと広告しないんですか」

「しないわ。さ、いくわよ」

東部長はさっさと将棋部部室へ戻っていった。

「ただいまー」

「ただいま戻りました」

あたかもそこの住人かのように挨拶をして、私たち誇大広告倶楽部は将棋部部室に戻ってきた。

「おかえりなさい、早かったですね」

松平さんがパソコンから目線をこっちに移して挨拶を返してくれた。

「ただ貼ってきただけだからね」

「どこに貼ってきたんですか?」

「掲示板のヘリよ」

「ヘリ、ですか」

東部長、松平さんには何かと正直だな。まあ嘘をついてもしょうがないのだが。

「さて、あとは待つだけよ。松平さん、コタツ借りるわね」

「あ、はいどうぞ」

東部長はコタツに座った。私もその横に座る。

「部長」

「なあに?」

「このあとは何もしないんですか?」

「何もしないと言われれば何もしないとわけじゃないわ」

「何をするんです?」

「暇つぶしよ」

「あとは待つだけなんですね」

「そうね」

「私に何かできることはないですか?」

「あるわよ」

「なんです?」

「暇つぶしよ」

「はあ」

「何か本でも読んだら?松平さん、なんかない?」

松平さんはまたパソコンからこちらに目線を移した。

「本、ですか…将棋の本しかありませんが」

「いいじゃない、将棋の本。貸して貸して」

「ちょっと待ってくださいね」

松平さんはコタツの上に置かれていた本を一冊とり、東部長に渡した。

「ほら、リチカ。松平さんが将棋の本貸してくれたわよ」

東部長は松平さんから借りた本を、そのまま私に寄越してきた。

「部長は読まないんですか」

「だって将棋わかんないもの」

「私だってわかんないんですが…まあいいです」

東部長から本を受け取る。『初心者でも

わかる!詰め将棋』というタイトルだった。

とりあえず読んでみると、確かに初心者にもわかりやすく解説されていて、読みやすい本だった。読んでいるといつのまにか時間が経っていて、将棋部部室の時計はすでに3時50分を回っていた。

「…あの、新入部員は来るんですよね?」

口を開いたのは松平さんだった。約束の時間まであと10分をきったのだ、気になるはずだ。

「新入部員なら、もう来てるわよ」

東部長が返事をした。もう、来てる…?

「どういうことですか?」

松平さんは疑問を投げかける。

「将棋部の部員ってなにをするの?」

東部長は疑問に疑問で返す。

「それは…他の部員と将棋を指したりしますね」

「そうね。じゃあ今日、将棋部の松平部長と将棋で対戦した人間がいますね」

「…彼女が新入部員だっていうんですか?」

「そう、青木野リチカ。将棋部の新入部員です」

…私?

「…ちょっと部長、まってくださいよ」

「その部長っていうのは誇大広告倶楽部部長の東部長の事でいいのかしら、リチカくん。あなたは将棋部部員なんだから松平さんの事を部長って呼んでもいいのよ?」

「東部長のことですよ、あー面倒くさい!勝手に私のこと将棋部に入れないでくださいよ!」

「勝手にとは聞き捨てならないわね。『入部希望者は本日16時までに第三和室まで来てください』って書いてあるの見てこの第三和室まで来たのはリチカでしょう?」

あの広告の内容だ。

──そして、あの手口だ。

「そんなので、将棋部部員の入部手続きは完了してるんですか?」

「確かに、誇大広告倶楽部とは違って学校の正式な部活動である将棋部の入部手続きはまだ完了していないわ。だが、私にはこれがある!」

そう言って東部長は、ブレザーのポケットから

くしゃくしゃの紙を取り出した。

「なんですかそれは」

「見なさい!」

入部届。

私がさっき視聴覚室で記入した、誇大広告倶楽部への入部届だ。

「これがなんなんです?」

「これは将棋部への入部届よ!」

「は!?」

「言ったでしょう。誇大広告倶楽部は入部届なんて必要ないって。しかし、入部後のなんやかんやで入部届が必要になるとも言った。そのなんやかんやが『将棋部に入部するため』だったのよ!」

「は!!?」

確か記載したのは名前だけで、どこの部に入るかは空欄のまま東部長に渡した。しかしそれは誇大広告倶楽部の入部届だと思ったからで…!

「とにかく、青木野リチカは、部員としての行動も、意思も、書類上も、将棋部部員だと証明されているのよ!」

「そんなのめちゃくちゃだ!」

「そうよ!めちゃくちゃな屁理屈を言う倶楽部、それが誇大広告倶楽部なのよ!」

「それを言っちゃあそうなんでしょうけど…!」

その時である。

「あ、あの!」

可愛らしい声に呼び止められた。松平さんだ。

「あの、よくわからないですけど…リチカさんが将棋部に入部してくれるってことなんですか?」

「そうよ!はい、これが入部届」

「でも、リチカさんの意思ではないと思うんですが…」

「口ではそう言ってるけどね、行動が将棋部への入部を示してるのよ。今だって、将棋部部室で、将棋の本読んでたのよ?これは将棋部部員と言って過言ではないわ」

「リチカさんがいいならそれでいいんですが…」

ちらり。松平さんがこちらを見てきた。

「私は…」

「嘘はつかないものね」

東部長が口を挟んできた。

「…そうです、青木野リチカは嘘はつかない」

「そうね」

「ここで将棋部への入部を断ることは、嘘をつくことになるでしょうか」

「なるでしょう」

「なりませんよ」

「えっ」

「まず入部届の件ですが、私がその入部届に記入したのは視聴覚室です。将棋部の部室に来る前ですから、将棋部に入ることは想像もしていません。つまり、その入部届は東部長に書いてくれと言われて名前を書いただけのもので、私が将棋部に入る意思を示すものとは言えません」

「はあ」

「次に私が将棋部部室で将棋を指していた件ですが、それは東部長に『大会に出てもらいます』と指示されたからであり、私の意思ではありません。将棋の本を読んでいたのも然りです」

「ふむ…」

「最後に『16時までに第三和室に来た』ことから私に将棋部への入部の意思があるとした件ですが、私が第三和室へ帰ってきたのは、東部長に『帰るわよ』と促されたからです。つまりわたしの意思ではなく、東部長の意思だったのです。つまり、『入部を希望して第三和室に来た』のは東部長です。よって…」

「よって…?」

「将棋部に入るべきはわたしではなく、東部長!あなたなんですよ!」

「は!!?」

「入部届の件も、将棋を指していた件も、将棋の本を読んでいた件も、すべて東部長の意思ですよ。こんなにも将棋部のことを考えて行動する人が将棋部部員でないはずがない、将棋部部員と言って過言ではないんですよ!」

「そ、そんなのむちゃくちゃよ!」

「そうです!むちゃくちゃな屁理屈を言うのが、誇大広告倶楽部です!」

「ぐ、ぐぅ…」

「………………ですが!」

「……ですが?」

「今回、私は東部長の『16時までに部員を増やす』という無茶な話を聞いて、最初はどうせ無理だと諦めていました。しかし、東部長の突拍子もない言動に振り回されているうちに、どうにかその目標が達成されないかと願うようになっていました。つまり、将棋部員が入部して欲しいと思っていたんです。その気持ちに嘘はつけません。なので私、将棋部に入部します!」

ボーンボーンボーン

その時であった。将棋部の古い壁掛け時計が、16時を示したのは。




私は寮の自室に帰ってきていた。帰ってきたと言っても今日から入寮なので、まだ落ち着かない。寮は各部屋2人ずつの相部屋で、備え付けのベッドと机があるだけの簡素な部屋だ。

「ただいまー」

ルームメイトが帰ってきた。ルームメイトはかつら 伊織いおりちゃんといって、さばさばして元気な娘である。ポニーテールが可愛らしい。

「おかえりなさい」

「リチカちゃん部活決まったー?私は全然決まらないよー」

「私は将棋部と、あと変な倶楽部に入れられたよ」

「2つも入ったの?兼部ってOKなんだっけ?変な倶楽部といえば私も変なとこ見学に行ったよー」

「へー、どんな?」

「広告なんとかかんとか」

「誇大広告倶楽部」

「それそれ!掲示板のスミにあった紙には東大合格者アリとか書いてあったのに、行ってみたらそれは『あずままさる』って読むんだーとかわけわかんないこと言われてさ」

「…それって逃げてかえってきた?」

「うん、『わけわかんない!』って行って逃げて帰ってきちゃった」

「それ、伊織ちゃん入部したことにされてるよ」

「うっそー、やだなー。そんなこと知ってるってことはリチカちゃんもそこの倶楽部入れられたの?」

「うん、無理矢理入れられたよ。それでなんとか辞めさせてもらうようにいろいろお願いしてきたんだけどさ」

「結局辞められたの?」

「いや、辞められなかった。そのうえ興味のなかった将棋部にまで入れられちゃった」

「将棋部も入れられちゃったの!?ひどい倶楽部だねー、辞められるといいね、そんなとこ」

「……いや」

「いや?」

「辞められそうにもないよ、誇大広告倶楽部は」

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