女帝2~皇帝の休暇1③
キッチン長のフレッサは、宿舎の調理場で苦戦していた。それは、正妃であるアンセムの密命で特別な料理を調理しているためである。
今回の皇帝の余暇旅行では、皇帝に対して特別メニューを提供することが可能である。そこで、正妃より直々に「男性が精力のつく料理を提供するように」という指示を受けていた。
彼女は、後宮での料理に関する諸事を全て取り仕切っている。有能で責任感が強く、そして指導熱心で部下のキッチンメイド達からも慕われていた。
フレッサは、皇帝の夕食の際は仕込みから全て取り仕切り、一日も休むことなく立ち会っている。彼女の部下は交替で休んでいるので、メイド長のティトは彼女にも休むように促しているが、「人が食事をしないで良い日がないように、食事を作らないで良い日はありません」と言って聞かない。さらに「世間の良妻は誰でもやっていることです」と言われては、それ以上強く言う事もできない。
数ヶ月前の後宮籠城時には、キッチンメイド達は籠城全員の給食を賄っていた。人数が増えたために、アンセムは非戦闘員の中から給食担当を増やすよう提案した。しかし、フレッサはチームの連携が乱れて余計に現場が混乱するだけ、ということで拒否した。
また、現在後宮で行われている昼食のブース形式の食事は、フレッサが提案したものである。
キッチンメイドは皇帝だけでなく後宮に住む者全員の食事を担っている。閉鎖空間で暮らす宮女達に、少しでも様々な料理を提供したいと考え、店舗形式を採用して雰囲気も含めた様々な食事を愉しめるようにと実施しているのである。
普段、皇帝に提供する料理は曜日で決まっている。
皇帝は、規則的な生活を送るように厳しく躾けられており、その中にはバランスの良い食事も含まれる。よって、一週間の献立は予め決められ、栄養素をバランスよく摂れるメニューで固定されていた。だから、新しい料理を提供する事は出来ない。
先帝時代までは、外出先でも宮内から食材を運んで、その決められたメニューを作っていた。しかし、運んだ訪問先で食材が悪くなり、先帝が軽い食中毒、腹痛を起こす事件があった。
決められたメニューに固定されていては、献立次第で、搬送時に傷みやすい食材は数多あるはずである。それなのに、無理にそのルールを押し通したために発生した事件である。
悲惨なのは、当時、その食事を作った関係者達であった。当時、後宮は無かったので男性のコックとメイドが調理を担当したが、当時の皇帝が腹を壊した食中毒の責任者という理由で、その料理に関わった者達は処刑された。
食中毒の原因は、おそらく調理した彼らの所為ではなく、地方でも無理に後宮から食材を運んで同じメニューを食べようとした所為であろう。
事件は当時の侍従長が料理担当者の処分を行って無理矢理に解決させたが、彼らの責任ではないことを裏付けるように、関係者処刑の後、旅行や訪問先では食材の一部は現地で新鮮なものを調達するように変更された。
そんな悲惨な事件があってから、出先では皇帝に対して特別なメニューを作ることが許されている。通常、キッチン長は後宮から離れることはないが、皇帝一家が丸ごと移動するこの夏の余暇だけは、自作の料理を振る舞う事ができる。
当然、それはキッチン長としてのフレッサの腕を見せる場面でもある。
フレッサが挑戦していたのはバサラ族の料理の「うなぎの蒲焼丼」、略して「うな丼」という丼料理だ。栄養価が高く、バサラ族では滋養強壮の料理としては定番だという。彼女はさらに、にんにくを使用して、さらに滋養効果を高めるように工夫している。
後宮にバサラ族はいない。バサラ族はラグナ族と違うE属の人間種族である。E属の人間種は、R属の人間種であるラグナ族との間に子供はできない。
メイドとはいえ、後宮では皇帝のお手つきになる可能性がある。だから、子供が出来ないE属の娘は、入宮の対象から外される。
ニコレとそのメイドのカウル族は、H属の人間種である。H属はR属よりも遺伝子的に優先で、その子供は必ずH属に塗り替えられてしまう。よって、ラグナ族とカウル族では、ラグナ族の特徴を持つ子はできない。しかし、子供を作る事は可能である。
カウル族にはラグナ族の国家であるアスンシオン帝国の皇位継承権はない。しかし、過去にはカウル族の娘とラグナ族の貴族から生れたカウル族の男子が、族長になった事もある。
もし、妃のニコレがお手つきになって子供が出来た場合、それが男子ならばカウル族自治区の族長候補として有力な存在となるだろう。もちろん、現在の族長もそれを狙って、ニコレを後宮に送り込んできたのである。
帝国側としても数万の強力な軽騎兵を有するカウル族をより強い影響下に組み込むという意味で、なかなか有力な案である。
後宮にバサラ族の娘はいないので、バサラ料理を詳しく知るものは乏しく、数多の料理に知識の深いフレッサも詳しく知らなかった。
だが、向上心の高いフレッサは後宮に居ながら、自分の妹サティアをバサラ族の料亭に弟子入りさせ、そして1年間の修行の後に入宮させたのである。
入宮したサティアは、奥の深いバサラ料理の秘伝を完璧にマスターしたとは言い難いが、後は彼女達の創意工夫と研究で、なんとか美味しい料理を提供しようと奮闘しているのだった。
「うな丼」を作るには、まず麦米を炊く。
帝国に限らず、ほとんどの人類はすべてこの一種類の穀物に依存している。パンを焼く時にも飯を炊く時にもこの麦米を使う。精米して炊けば御飯に、粉にして発酵させて焼けばパンになる。
昔、麦と米は別々の食材だったらしい。もともと、麦も米もイネ科の近縁な植物で、麦を米のように炊いて食べることもできたし、米を粉にして発酵させてパンを焼くことも可能であった。だが、各地の文化的な生産方法、精製方法、個別の加工難易度の違いでその手段と利用方法は完全に分離していたという。
それが、現在は、この一種類の品種、麦米に統一されている。その理由は、おそらく圧倒的な効率によるものだろう。
当時の麦も米も、同じイネ科のライバルであるトウモロコシに対してエネルギー効率で劣っていたらしい。種族分類学者は、今ある麦米の効率の要因はC4回路を取り込んだことによって得られたもので、どちらかといえばこの麦米は、稲や麦よりもトウモロコシのほうが遺伝的に近いという研究結果を示している。
これらの伝承は、タイキ族などのT属だけが読むことができる文字で書かれた黒の石板を解析したものと、種族分類学者の研究を合わせたものらしいが、本当のところ、真実かどうかはわからない。
「うな丼」で次に必要なのは、もちろん食材のウナギである。
バサラ族ほど盛んに養殖して常食しているわけではないが、ラグナ族でもウナギを食べる。ウナギの養殖には、よく整備された養殖場が必要であり、暖かくて海洋に面した汽水域で、新鮮な水の豊かな地域の方が生産に向いている。
アスンシオン帝国はどちらかといえば、冷涼で乾燥している地域が多く、エステル河とその支流による恵みが大きい。よって、ウナギの養殖にはそれほど向いている気候や地形ではない。ただ、アラル海から流入するテケ湾周辺、つまり現在彼らがいるプライベートビーチ周辺は暖かく、帝国でもウナギの養殖が盛んな地域であった。
ウナギは他の魚類に比べて謎が多く、黒の石板の解析では、太古の昔、このウナギの完全養殖には極めて困難な研究努力が伴ったという。
遠い古の時代から続く環境の激変、もしくは乱獲によって人間が食用にできるような野生動物、魚類はほとんどが絶滅してしまった。今でも残っているのはほとんどが家畜化、もしくは養殖可能な食材だけである。
天然のウナギも遥か遠い昔に絶滅している。化石文明時代は幼魚を捕獲して半養殖していたようだが、乱獲で失われた。よって、現在は人間の手による完全養殖でしか生産していない。
ウナギの完全養殖には硫黄が必要である。火山のほとんどない帝国ではその入手は難しい。もっとも、今、皇帝一家が過ごしている施設には温泉があり、帝国内でも比較的硫黄を入手しやすい地域である。
ウナギの産まれた故郷は、硫黄の臭いのする深海だったらしい。ウナギは硫黄の臭いが無いと、安心して産卵せず、幼魚もエサを食べないのである。
完全に養殖育ちで、硫黄の臭いのする場所には行ったこともないはずなのに、生まれ育った場所の臭いがないと子孫を残せないというのは、わりとロマンチックな話である。
種族分類学者は、全ての生物には、種族の誇りがあるという。もしかしたら、それがウナギの種族としての誇りなのだろう。
フレッサの妹サティアは、蒲焼のタレを仕込んでいる。通常は、みりんや酒類を使うが、ラグナ族文化では料理にも酒類を使わない。砂糖と醤油に、魚類等で作ったダシ汁を煮込んでとろみをつけている。
「うん、これなら大丈夫ね」
フレッサは、サティアの仕込んだタレの味見をして満足する。ウナギは捌くのも焼くのもとても難しい。そして、タレも食材と味が合わなければ台無しである。
彼女達は、苦戦しながらも事前に研究、練習した通りに課題の料理を用意することができた。抜群の連携で皇帝と妃の人数分のウナギを捌いて焼きあげた後、さっそく、休暇先の宿舎の食堂へと運ぶ。
昼食の時間ギリギリである。
ところが、食事を運んで到着した食堂には、妃達とその侍女しかおらず、皇帝がいない。
「あの…… メイド長、陛下はどうされたのでしょうか?」
フレッサは傍らにいたメイド長のティトに尋ねる。
「陛下は昼食を欠食いたします」
彼女は驚いてその理由について尋ねた。
「どこかお身体の具合が悪いのでしょうか……」
もし、皇帝が食中毒になれば、料理担当者は処罰を免れない。フレッサは不安になって尋ねてみた。
「お腹を壊されたということで…… 現在は、ナース長のユニティが診ています」
フレッサは目の前が真っ暗になる。朝食のパン料理が原因だろうか? 朝食の調理はフレッサの担当ではないが、陛下に出す料理は全て最終チェックを行っている。もし何かあれば自分の責任だ。
皇帝陛下に出す料理には万全を期す。そういつも決意している。もし何かあっても他の子に責任が及ばないようにしなくてはならない。すべて自分で責任を負う覚悟はできていた。
神妙な顔をしているフレッサに気が付いたのか、ティトは安心するように表情を作ると事情を説明した。
「それが、陛下は正妃様が用意したムラト族の“栄養ドリンク”というものをたくさん飲み過ぎてしまいまして…… 慣れない炭酸飲料がお腹に当たったようです」
「ムラト族の栄養ドリンク?」
栄養ドリンクは、ムラト族がよく飲んでいる炭酸飲料だ。特に栄養ドリンクの中でも滋養強壮に効くという売り文句の“マスタースパーク”という名前の商品は、帝都でもヒットしている人気商品である。
紅茶やコーヒーをティーカップに注いで優雅に楽しむ文化のラグナ族でも、庶民の中にはこの瓶詰の商品をよく飲んでいる者がいる。
保守的なラグナ族の中には、この炭酸飲料を「健康被害がある」とか「華麗さがない」などといって敬遠する者も多い。
栄養ドリンクの成分は、ほとんどが糖分とタウリンである。糖分は吸収の良い栄養の補給に、タウリンは肝臓から分泌される副作用のない疲労回復成分である。その他の成分は商品によって違うが、この二つの成分に比べれば僅かしか入っていない。
アンセムは、午前中に運動をした際、皇帝に対し栄養ドリンクをたくさん飲ませた。もちろん、疲労回復のためと言ってであるが、それは建て前で強壮効果を狙って仕掛けたのである。
皇帝はその味に意外にハマったのか、それを何本も立て続けに飲んだ。だが、皇帝は今まで炭酸飲料など飲んだ事はない。
そのため、たちまち腹を壊してしまったというわけである。
キッチン長のフレッサは絶句する。せっかく苦心して準備したウナギの蒲焼丼が、瓶詰めの炭酸飲料の前に敗れ去ってしまった。しかも、指示した正妃のアンセムの所為である。
気を落として食堂を見ると、張本人のアンセムが、黙々とうなぎの蒲焼丼を食べていた。
その食べ方に優雅さはなく、見るからに男性のガツガツとした食べ方そのものだ。
「うん、とても美味しいよ。さすがはフレッサだ」
アンセムは笑顔でフォローする。フレッサにこれを作るように依頼したのはアンセムなのだし、皇帝が昼食を食べられなくなった原因を作ったのも彼である。それを知っているから、その表情に弁解する気がありありと出ている。
だが、彼は味覚に鈍感で美食が理解できない事は後宮中で有名だった。昔、困窮して虫を焼いて食ったら苦かったとか、そういう気色の悪い話を後宮内でも宮女達にしているので、キッチンメイド達からの心象はすこぶる悪い。
そんな人物が料理を美味しいと褒めても、まったくフォローにはならない。
「それはどうもありがとうございます、正妃様」
フレッサは彼に儀礼的な返事と礼をして冷たい視線を送る。明らかに、アンセムの味の評価は嬉しくなさそうだ。
他の妃達は、バサラ料理を食べた事がない者が多く、料理に対してどういう感想をしていいのか困惑しているようだった。しかし、アンセムの隣の席に座っている、妃の中で一番幼児体型の妃は料理の感想を直言する。
「ふーん、これはなかなか良く出来ているわよ、フレッサ」
「メトネ様?」
アンセムの隣で箸を器用に使ってウナ丼を食べていた第21妃メトネ・バイコヌールは、料理の感想を素直に述べた。
「まったく、アンセムってば女の子がせっかく愛情を込めて作った料理の味が分からないんだもん。ほんと鈍感よねぇ……」
フレッサはメトネの皮肉に対して、どう答えていいのか分からず苦笑する。
「メトネはこれがどう美味しいかわかるのか?」
アンセムは馬鹿にされたと思い、むっとして尋ねた。彼自身、この料理はおいしいと本気で思っていてその通り感想を述べたのだから、別に建て前で繕ったつもりはない。
「ウナギは捌くのが難しいのよ。それに、焼くのも。加減を間違うと良い味がでないわ」
メトネはそう指摘する。だが、アンセムは正直に言ってそれがどうしたのだ、と思う。プロの料理人ならそれぐらい出来て当たり前ではないか。
「このウナギのタレは、醤油と砂糖だけじゃなくて、カツオブシを使っているわね」
「カツオブシ?」
はるか昔、カツオブシは、カツオという魚を使用していた乾燥食材だったが、絶滅して存在しない。現在は、カツオブシという名称だけが残り、養殖マグロで代用して作られている。
「カツオブシは、バサラ族が利用するダシを取る時に使う食材よ。あとは昆布ね、煮汁にはニラを使っているんじゃないかしら?」
フレッサは正直驚いた。使用した食材を的確に当てるのは、味の濃い料理ほど難しい。メトネ達アリス族は香りや臭いに敏感な種族だと聞くが、男への依存性が高い種族で、一般的には怠惰で知識や教養に欠けるのが普通である。
「蒲焼の下に、ニンニクをチップ状に切って焼いたものを敷いてあるわ。これも香ばしく風味を出すと一緒に、蒲焼から滴ったコクのあるタレと合わさって、抜群の相性ね」
メトネは箸を器用に使って、チップ状に焼かれたニンニクを摘み上げる。アンセムは箸を使えないので、スプーンとフォークを使用していた。
「ふーん、工夫があるんだなぁ。でも、それならどんな料理でもその旨いタレを使えばいいんじゃないか? ニラとかニンニクとか、どんな料理に入れても良さそうだ」
「アンセム…… ウナギの蒲焼は味の濃い料理なのよ。当然タレも味が濃くなるし、食材もニラやニンニクなんかの強い味の食材を使っても違和感が無いの。薄味料理にニラをたくさん入れたら、ニラの味が強くなりすぎて、味がおかしくなってしまうのよ」
「いやぁ、メトネがこんなに料理に詳しいなんて初めて知ったよ」
アンセムは料理には極めて疎いが、それでも簡潔なメトネの説明は理解できた。すると、メトネは急にいつもの愛らしい表情を作って応対する。
「……アンセムが鈍感なだけよぉ。男のハートを胃袋で掴もうと考える女の子は、これぐらい出来て当然よ?」
「そんなものなのか」
メトネは、いつものように悪戯っぽく微笑みながら答える。
アンセムの後ろに控えているテーベ族の侍女のパリスはテーベ料理を極めていた。もう1人の侍女のマイラも実家では料理を手伝っていたという。マイラが料理をしているのは見た事はないが、基本的な技術は身についているだろう。
妹のエリーゼはどうだったかよく覚えていない。しかし、ヴォルチ家は母が早くに亡くなっており、家事全般を全てメイド任せということはなかったような気がする。当然料理も行っていただろう。
料理に興味が無いというのは、他人の料理に対する姿勢がどうかも興味がないということである。妹の身体を使っているのに、兄であるアンセムは妹が料理を得意だったかどうかも知らないのだ。
そう考えると、自分の思慮の浅さが恥ずかしくなってきた。
「フレッサ、後でこの料理の作り方を教えて欲しいわ」
食べ終えた後、メトネはフレッサに向き直ると、可愛く微笑みながら頼んでいる。
後宮の妃でも、料理をしようという者はいる。貴族達が通う女学校でも料理は基礎教科にある。誰でも最低限の知識と技術は持っているだろう。
遥か昔の人類、男は探索して狩りをし、女は拠点で料理をしていたという。もしかしたらそれよりさらに古い時代、ヒトが人類になる前の段階からそうだったのかもしれない。
それは生後の教育によるもの、文化的なものと言って、ベース主義者や、特にヴァルキリー族の女達は、男女の社会的役割分担を否定する。
しかし、一度人類文明が崩壊した後、結局またその状態に戻った。もし、その生活習慣が人類の遺伝子に深く刻まれているのならば、きっとそれを打破するのは人類がヒトとして存在する限りは永久に不可能なのかもしれない。
男が何十万年という長い年月を経て得た狩猟への能力を遺伝子に刻んでいたのと同じ時間、女は拠点周辺で食材をより効果的に得て、より美味しく料理する方法を遺伝子に刻んでいたのだとしたら、男は女に家庭料理では絶対に及ばないことになる。
遺伝子には、その刻まれた経験を精神に刷り込む瞬間があるという。通常は、その時期を逃すと刷り込みは行われない。動物などでは、親の認識や、基本動作、生殖関係の行動などが顕著な例である。
アンセムの身体は女の子でも、女の子として精神が育ったわけではない。だから、その辺り及ばないのは仕方がないと思う。
ともかく、昼食での目論見は潰えたが、栄養ドリンクは皇帝にたらふく飲ませたので、午後の皇帝はきっと精力が漲ってギンギンになっているに違いない。
「じゃ、アンセム。午後のお勤め頑張ってねー」
メトネは、いつものように、両手を振って微笑むと、アンセムの作戦などまったく興味がないかのように、フレッサに寄って行って、今日の料理の技を教えてもらおうと付いて行った。
メトネがアンセムに対して「頑張ってね」と応援する時は、だいたいアンセムが失敗すると見込んでいる時である。アンセムの愛人は行動の先行きを計算するのが得意らしい。




