資料7~ランス族、カチュア族、ハイランダー族、トルバドール族
・ランス族 R.ragna var.rance
ランス族はラグナ族と同種族の諸派です。黄金色の髪に青い目をしているなど、その外見的身体特徴はラグナ族によく似ています。マーワラーアンナフル地区の南側にエルミナ王国を建設しています。
彼らは「ラグナ族第一主義」という思想を持っており、世界はラグナ族が導くべきだと考えており、優性思想の常として、自らの道徳心と自己の鍛錬を大事にしています。
また、アスンシオンの貴族は一夫多妻が可能ですが、エルミナは一夫一妻が基本で、浮気は裏切り、背徳だと考えています。特に騎士は常に自らを律し勉学に励み、優れた種族として恥じることのないように己を鍛えることが推奨されています。女性が貞節を守る事に関して厳しい事も同様です。もちろん、貞操に関して厳しいのは“陽彩”の力の継承という意味合いも強いでしょう。
※アスンシオンの現国王、リュドミル皇帝の母親はエルミナの王族であり、父親、つまり先帝に側室を持たせなかったのは、嫉妬深いからだけではなく、エルミナとアスンシオンの結婚観に対する思想的違いの側面もあります。
ランス族の一部がもつ特殊能力“陽彩”は“ヴェスタの加護”を持つ女性が持っている特別な力です。対攻撃用のバリアーのような効果で、法撃や弓矢の威力を大幅に軽減します。射程の長い攻撃であれば周囲の味方も守れます。
敵の攻撃に対して、虹のような色彩の視覚的変化が起きて威力を大幅に減衰するので“陽彩”と呼ばれていると言われています。しかし、防御的な効果から、要塞が訛ったという説もあります。
この能力の大きな要点として“陽彩”の使用者の攻撃力は特に変わりません。そして、受けるダメージを100%防ぐ事はできません。処女限定であることから、“陽彩”の能力者は必然的に若い女性となり、接近戦で敵の金属装甲を打ち抜ける腕力があるわけではないです。そして、ダメージをまったく受けないわけではないので、彼女達は丸盾を持ち弓矢の攻撃でケガをしないようにしています。
法撃は“陽彩”と“ヴェスタの加護”でほとんど防ぐことが可能ですが、意外に投石などには弱いと言われています。
射撃だけではなく、接近戦の時も威力の減衰は起きますが、その場合は自己だけで、周囲の味方は守れません。また減衰率は大きくありません。
この力は、有効に活用すればとても強力な能力ですが、若い女性を最前線に立たせないといけないので、運用はなかなか難しく、エルミナ王国では“聖女連隊”を編成し相乗効果を持たせて運用しています。
ランス族が優性思想に拘るのは、この“陽彩”の血統を活かすためです。
この特殊能力は、女性の処女しか発現せず、男性側もその血統の遺伝子を持っていなくてはなりません。
さらに本来は発現するはずの組み合わせでも、遺伝子が変化して誕生しないこともあります。ですので、常に優性を保護して、その能力を持つ者同士を婚姻させ、特殊能力を持たない場合は排除するようでなければ、その血統を残す事はできません。これが優性思想の考え方に繋がっています。
ランス族が持つ優性思想「ラグナ族第一主義」はこのように、彼らの力を維持するための実利的な側面もあり、なかなか難しい問題なのです。
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・カチュア族 R.ragna var.cature
カチュア族はラグナ族と同種族の諸派です。
タリム共和国という共和制国家の基幹種族です。このタリム共和国についてはそちらの項目を参考にしてください。
外観は、髪の毛と目の色が赤色である以外は、体格などの特徴はラグナ族と変わりがありません。
カチュア族の女性はとても変わった性格をしています。彼女達は楽しいという感情しかなく、怒り、悲しい等というその他の感情が欠落しています。普段の時はいつも朗らかで印象の良いイメージですが、命の危機だろうと、葬式だろうと、いつも楽しそうな表情なので、他の種族から奇異に見えるでしょう。
楽しいという性格しかないとはいえ、いつも笑っているわけではありません。なんの感情もない平静の状態は存在します。普通の人なら怒ったり、悲しんだりする時も、彼女達は楽しいと感じてしまい、怒ったり悲しんだりはしないのです。
男性の性格は他の人類種と特異はありません。ただ、冒険や探検好きな傾向があり、タリム共和国では大学が整備されていることもあって、各地を巡り考古学の調査や冒険をする事が好きなようです。
赤色の髪を持つ冒険家であるカチュア族の男性は、青色の髪を持つ冒険家であるレナ族の男性に強い対抗意識を持っています。
カチュア族は特殊能力を2種類持っています。ひとつは男女とも使う“魔撃”、もう一つが“ヴェスタの加護”を持つ女性だけが使える力“贖罪”です。
“魔撃”は比較的分かり易い能力です。近接武器だけに限りますが、体内のPN回路を使って所持する武器にその特性を付与し、攻撃力を高めます。
もっと簡単に説明すれば、武器を使った魔法剣とか必殺技の類です。飛び道具や法撃では使用できません。
この能力は魔力の差に影響し、ラグナ族でもPN回路の能力に大幅な差があるように、カチュア族でも個人によってかなりの差があります。また、攻撃の性質も体内の属性によって違うようです。
“女神”の能力で攻撃力を上げているレナ族と、“魔撃”の能力で攻撃力を上げているカチュア族はこのあたりでもライバル意識が強いようです。
カチュア族の“ヴェスタの加護”を持つ女性、つまり処女には、もうひとつ重要な能力“贖罪”があります。
この“贖罪”は、この能力を持つ者に対して、楽しい以外の感情、特に苦痛や恨み、怒りや悲しみといった感情を与えると、与えた者に罪の意識としての精神的苦痛、ストレスの呪いとして跳ね返ってくるという能力です。
カチュア族の女性は、見掛け上は確かに“楽しい”という感情表現しかないように見えます。
ところが、実は、怒りとか恨み、憎しみなども持っており、他者がカチュア族にそういう感情を与えると、その感情の部分が、罪という重い枷になって相手に跳ね返り心に刻まれてしまうのです。
この能力は、幻想的な力というわけではなく、普通の人間的な良心があれば、他人に恨まれるような事をすれば、個人によって程度の違いはありますが、心が痛むものです。この“贖罪”は、この精神の働きを強力に拡大させており、しかも与えた能力者によって許されるまで消えないので、タリム共和国でカチュア族と暮らす異種族は、絶対にカチュア族に嫌われるような事をしません。特に殺人は一番恨みが重く、カチュア族の“贖罪”持ちの女性を殺めると、罪の意識で犯人はほぼ永久に強力な枷によって苦しみ続けます。相手が死ぬと、二度と許されないので、もはや解除はできない事になります。
タリム共和国で暮らしていない種族は、この能力を精神的な呪いの類として扱っています。
種族分類学者は、“贖罪”の能力は処女だけが持つので、ハイランダー族の“惑星”やランス族の“陽彩”に近い能力だと言われています。
カチュア族の女性は処女でなくなると、“贖罪”の能力を失いますが、それでも欠落した感情を取り戻すことはできません。
このカチュア族の精神的感情の欠落は、“贖罪”によるものではなく、“魔撃”の影響だと言われています。事実、“惑星”や“陽彩”など使用に“ヴェスタの加護”が必要な能力はそれ以外には弊害が無く、男女ともに影響がある能力、テーベ族の“月影”、レナ族の“女神”については、種族になにかしらの弊害があるからです。
不思議な事ですが、カチュア族の男性は、女性の持つ“贖罪”の影響をまったく受けません。一説には、カチュア族の女性は、カチュア族の男性をいつも溺愛しており、何をされても不満や嫌な気分にならない、もしくは許してしまうので、“贖罪”の影響がないといわれています。事実、カチュア族の女性は同族の男性しか愛しません。
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・ハイランダー族 R.ragna var.highlander
ハイランダー族はラグナ族と同種族の諸派です。南方のパミール高原地帯に独自の国家を形成しています。
彼らの外見的特徴はラグナ族と似ています。ただし、ハイランダー族は同じR属のカマラ系種族の血が混じっていることが多く、その場合、女性は胸が豊かである傾向が強いです。
主な職業としては、農村部では男性が林業、女性は牧畜を、都心部では男性が加工業、女性は接客業を生業とする者が多いです。普段着として、女性はディアンドルを着ている者が多く、民族衣装的な役割があります。
戦闘になった際、男女とも両手槍を使用して戦うことを好みます。
彼らは多くが多神教のトリム教徒であり、一神教のマキナ教徒であるラグナ族とはやや考え方が違います。
特に酒好きで有名で、寒冷な気候を利用した酒造業も盛んです。北のアスンシオン帝国などのマキナ教徒は酒を飲まないので、主に南方向けに輸出されています。
ハイランダー族の女性は“惑星”と呼ばれる特殊な力を持っている場合があります。
この力を持つ処女は、希望すれば州都で“天槍連隊”として神官の修行をした後、地元の州が信仰する山の神を祭る神殿の神官として勤務し、州民から祭事を司る存在として敬われます。
ただし、すべてのハイランダー族の娘が希望するわけではありません。“惑星”の能力持ちの神官は王族などと婚姻させられる場合が多く、希望する男性と結ばれたい女性は、神官を辞めて一般の男性と結婚する女性も少なくありません。
このあたりはランス族とは違い、女性の意志が尊重されています。
“惑星”は、ハイランダー族の処女だけが持つ特殊能力です。種族分類学者の分析では、遺伝的特徴はランス族の“陽彩”に似ており、おそらく同系統の遺伝子で、分化する前のラグナ族は両方を持っていたともいわれています。
この“惑星”を持つ娘達だけで構成された連隊を“天槍連隊”といいますが、この特殊能力は集中運用しても相乗効果は得られないので、まず各州別の特科部隊として、各州の信仰する山の神殿に配置する神官として運用する形態を取っています。王都で神官を集めて“天槍連隊”という組織を持っていますが、常備の大きな部隊があるわけではありません。
“惑星”の効果は槍ぐらいの射程に入った放射線状の敵に対して、その神経伝達物質を遅らせる効果があります。
具体的には、敵が鈍足化、さらに強力な場合はほとんど停滞します。ハイランダー族が槍を使うのは“惑星”の射程内に入って動きが鈍くなった敵を一撃で倒すことを、女性でも容易くするためです。
槍は避けられればスキが大きい武器ですが、鈍足化で回避ができない状態なら、射程から考えて最も有効な武器でしょう。
とても強力な能力ですが、法撃や弓矢はまったく防げないので、前線に出せば被害も大きく、王軍もどこの州も、貴重な神官を戦争に出すようなことはせずに、彼女達を山の神に仕える神官として敬う存在にしているようです。
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・トルバドール族 R.ragna var.troubadour
トルバドール族はラグナ族と同種族の諸派ですが、他に三つの種族を内包している混在した種族であり、男性は同じですが、女性は種族的に異なる場合があります。
彼らは緑の髪に緑の目をしている以外はラグナ族によく似ています。大陸南西方の山岳地帯に独自の国家を築いています。
全てのトルバドール族は、芸術に才能のある者が多く、器用で俊敏です。旅行や自然を愛しており、詩人、楽師、踊り子的な生業を持つことが多いです。
特定の地域に縛られず移住を好み、また、特定の異性だけに縛られることも好まず、他の種族に比べれば結婚をあまりしません。
もっとも恋人関係の男女で旅をする者もいて、愛がないわけではないのです。むしろ行く先々で新しい愛を見つけるので、恋愛好きであるともいわれています。
男性はラグナ族系統の中では、商業などが得意で、弁舌が上手く交渉事を得意としています。ただし詐欺師とか、軽薄、軽口、という悪い印象もあるようです。女性は法兵、語り部、踊り子などの仕事をしていることが多いです。
トルバドール族の法兵は風系統の魔法を得意としています。風系統の魔法は、アスンシオンの法兵が使う炎系統の魔法に比べて威力が弱いのですが、重さが軽く、スキが小さいので奇襲や一撃離脱には適しています。
武器は弓を主に使いますが、肉体的にはそれほど強力な種族とは思われてはいません、ラグナ族系統にしては珍しく、馬を扱うのが上手くてその軽騎兵はよく知られています。
トルバドール族の中には明らかにヴァルキリー族の末裔である戦士集団を有しています。彼女たちは女性のみで男性はいませんので、恋人にはトルバドール族の男性を選びます。彼女達を指してトルバドール=ヴァルキリー族と言われています。
また、B属の地上猫耳系種族と混血したトルバドール=ツインテール族がいます。彼女たちもやはり女性しかおらず、女性のツインテール族と男性のトルバドール族の混血した種族です。
トルバドール=ツインテール族の外見的特徴は猫耳と尻尾が生えており、B属地上系の特徴を残しています。ツインテール族は他のB属と違う特徴として、尻尾がふたつあります。また、髪型もなぜかほぼ全員がツインテールかサイドテールにしています。
遺伝子的に強いラグナ族と混血したためかB属の特徴が弱くなり、猫耳と尻尾以外は、繁殖力も成長もB属の特徴を有しておらず、外見もトルバドール族の少女と変わりがありません。
ただし、彼女達の中にはB属の先祖である、セイレーンの歌声の力を持つ者がいるといわれています。
さらに、トルバドール族は少数の特殊な種族を内包しているといわれ、とても複雑な形態を持つ種族であるといえます。
ラグナ系のトルバドール族にも、テーベ族やランス族のように、かつては強力な特殊な能力があったと言われていますが、彼らは混血が進んでいて、現在は失われています。




