資料14~レナ王国、タリム共和国、ピュア教、アスンシオン帝国の教育制度
・レナ王国
レナ王国はレナ川流域を主な生活圏とするラグナ系のレナ族が基幹種族の王国です。
現国王はオロフ・アクセルソン、王都はレナ川中流にあるヤクーツクです。
中心地域はレナ川水系ですが、東方はインジギルカ川、コリマ川、アムール川の下流域、ベーリング地峡、オホーツク海周辺など、レナ川流域以外にも比較的大きな領土を持っています。
人口はレナ族が圧倒的多数ですが、国内にはベーリング地峡周辺にH属のエルマリア族、E属のスノータイガー族など少数種族もおり、アスンシオンと同様に多種族国家です。
夏は太平洋高気圧の影響があり比較的暖かいですが、暖流が流れているオビ海に面したエステル=エニセイ川水系と異なり、レナ川水系は内陸気候の為、冬季は極めて寒冷で、レナ川水系は凍結し、道路のように使用します。
土壌は酸性のポドゾルで、農業生産性は全体的に低く、長い期間寒冷な気候なので短い期間で生育できる作物しか育てることが出来ません。
レナ王国に住むレナ族はピュア教徒が多く、慣習主義で家族主義的傾向が強く、啓蒙主義で法治国家のアスンシオン帝国とは相いれません。
河川や北のラプテフ海、東シベリア海が凍結する関係で、海軍は極めて脆弱で、軍隊は歩兵、法兵、航空騎兵中心の大陸軍国です。
本作の世界のオホーツク海は暖流が流れ込んでおりやや温暖です。
そのためアムール水系は農耕に適した土地となっており、この肥沃な土地を巡って、南方のアムール川沿いにある東方四家と呼ばれる諸種族と仲が悪く、支配権を巡ってたびたび大きな争いになっています。
また、ラプテフ海とオビ海の間にあるタイミィル半島、その南にあるプトラナ台地、そしてさらにその南にあるヴェルダン峠は、レナ王国とアスンシオン帝国において常に係争地となっており、過去にも大きな戦争になっています。
本作の世界では太平洋プレートの沈み込みの影響でベーリング海峡が隆起して極めて狭い地峡になっています。
このため、温暖な太平洋と寒冷な北極圏で海水が混じることが無く、地峡北のチュクチ海はほとんどが氷に閉ざされ、地峡南のベーリング海はそれほど寒くないので、我々の世界のように流氷も発生しません。
レナ王国の勢力圏は一応ユーコン川付近まで延びていますが、この辺りは本作の世界では最も厳しい自然環境であり、境界線は曖昧です。さらに氷河のあるマッケンジー川周辺はG属のトロール族の領域となっており、凶暴な巨人族が多数生息しています
変わった特徴として、冬季、レナ川は北の河口付近から凍結するため、まだ凍結していない上流からの流れてくる水によって大洪水が発生します。これは氷が解ける時も同様です。
ですので、河口付近は人が住めず、上流の方に都市が集中しています。
このためラプテプ海の港湾都市チクシも、レナ川の河口から外れた場所にあるのです。
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・タリム共和国
タリム共和国は、タリム湖とそれに流入する河川沿いの都市が連合した共和国です。この地域は現在の世界ではタクラマカン砂漠という死の砂漠が広がっていますが、本作の世界のタリム盆地には豊富な水に恵まれた内湖があり、季節を問わず温暖で過ごし易い地域です。
主にカチュア族というラグナ系種族が基幹種族として統治していますが、他にも数多の異種族が暮らしており、他国では人間として認められていない異形の種族も人間としての権利を持っています。
ただし、この国においてのカチュア族は特別な存在です。カチュア族に逆らえる異種族は存在しません。それはカチュア族が支配階級や王侯貴族というわけでなく、彼らが持つ特殊能力によります。
タリム盆地は、北を天山山脈、南を崑崙山脈という高い山々に隔てられており、タリム湖沿いとその沿岸流域に12の都市があります。それぞれ都市ごとに独自性があり、各都市とも学業に熱心で、大規模な大学が設置されています。
タリム共和国の本拠地は一番西端のカシュガル市にあり、大学もそこが最高学府という扱いです。
各都市は湖上交通が基本ですが、陸路はタリム湖沿いの北道と南道に分かれています。一番西にカシュガル市があり、そこから北道は西からクチャ市、キウチ市、ヤンクイ市、トルファン市と続き、一番東にローラン市があります。南道は西からホータン市、ニヤ市、カルカン市、ミラン市と続いて、ローラン市と合流しています。
タリム湖の湖岸ではありませんが、北東にウルムチ市、東に玉門市があり、それぞれタリム湖から河川で繋がっています。
この12市がタリム共和国の主な都市です。
かつて、このタリム盆地にはカチュア族を主体としたタリム帝国と呼ばれる強国が勃興し、配下の12支族と呼ばれる異種族を従え各地へ侵略戦争に乗り出し、世界を支配と破壊の恐怖に落としました。
当時のカチュア族の皇帝は魔王と呼ばれ、恐ろしい力とカリスマ性で世界を蹂躙したといわれています。
この時代を魔王戦争時代といいます。ヴァルキリー時代の後、各国が勃興し、興隆し始めた頃にできた最初の大帝国です。
征服戦争の後、この魔王は突然いなくなりました。勇者に倒されたとも言われていますし、魔界に還ったという説もあります、地下宮殿に眠っているという説を唱える者もいます。
原因は不明のままですが、突然タリム帝国による支配は終わりをつげ、その帝国は共和国と化し、各市の市民が異種族も含めて平等の権利を持ち、自由な学問を奨励した国になりました。
タリム共和国は永世中立国を主張しており、実際、魔王戦争後は一度も対外戦争をしたことはありません。魔王戦争時代の恐怖は大陸でもよく語られており、またカチュア族の特殊能力もよく知られています。わざわざタリム共和国に戦争を仕掛ける国もないので、特殊な環境ではあるものの、国内は平和で自由な国柄です。
タリム共和国では様々な種族が暮らしており、思想や種族間の差別もなく自由な国柄という珍しい多種族国家ですが、タリム共和国ではカチュア族が特殊能力“贖罪”を持つのでこのような政治形態が可能であると考えられています。
カチュア族の能力については種族の項目を参考にしてください。
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・ピュア教
正式名称はピュアリティ・リンゲージ、略してピュア教徒といいます。考え方として、祖先崇拝、家族愛的な部分が多く、純粋な感情にこそ、人としての真理が宿っていると考えています。
ピュア教徒は、人間として「愛情」「勇気」「真理」の三つを重要な感情とし、これらを純粋に追及する事が人としての生き方だと説きます。
当初は、マキナ教徒と対抗する教義ではなかったのですが、現在は“啓蒙の法”を用いるマキナ教徒の思想に対抗する意識が強いのが特徴です。
単純に言えば、マキナ教徒は理性と規則を尊びますが、ピュア教徒は純粋な感情を肯定しているのです。
「愛情」人や物を大切に思いやること。
「勇気」未知や物事に挑戦すること。
「真理」学び、真実を得ること。
これら「愛情」「勇気」「真理」という三つの必要性を法で説明するのは極めて困難です。法で説明しても、重要性は伝わらず意味を成しません。
例えば「法律で決められているから、恋愛するんだ」という人はいないでしょう。
「法律で決められているから、○○で優勝を目指す!」という人もいません。
「純粋」とは、例えば、これを無理矢理法に当てはめる。「恋愛しないと罰します」「○○で優勝しないと罰を与えます」などとルールを決めて法で強制することです。これは感情の「純粋」ではなく、歪んでいるとしています。
ピュア教徒は、純粋に恋愛し、純粋に挑戦し、純粋に知識を得る者が成功できる。という考え方なのです。
また、ピュア教徒は親子の絆、兄弟の絆を大切にしています。啓蒙の主義者のマキナ教徒は、親子や兄弟の存在を、そういう風に戸籍に記載されているから、つまり法で決めたからと回答します。
もちろん、理屈や理性ではそうなのでしょうけれど、肉親の情は確かに存在し、それは法を持っていない人間でなくても、動物にでもみられる事です。
また、結婚に関して、マキナ教徒は、法的制度として決まっているから、としていますが、男女の愛情を制度とする考え方をピュア教徒は受け入れません。
もちろん、不倫に対する怒りを、不倫は姦通罪に抵触するからダメ、というあくまで法的解釈を前提とする、マキナ教徒の主張と相容れないのも同様です。
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・アスンシオン帝国の教育制度
アスンシオン帝国の教育制度は、幼等教育、初等教育、高等教育、大学教育に分かれています。
それぞれ、4歳と5歳が幼等教育、6歳~11歳までが初等教育、12歳~17歳までが高等教育、年齢による区分が無いのが大学教育です。
幼等教育は、帝国には下記の「貴族幼稚舎」しかなく、本作の世界にこれ以外の保育園や幼稚園はありません。
義務教育ではなく、「貴族幼稚舎」に通うのはごく少数です。
初等教育は義務教育であり、学費はすべて国費で賄われています。
国立の「帝国初等学校」、または私学に通わない限りは、各地方、地域にある公立の「(地方名)初等学校」に通学します。
公立初等学校は全て男女共学で、通学制、制服はありません。
アスンシオン帝国には中等教育はなく、中学校と高校が合わさって高等教育と呼んでいます。義務教育ではなく、公立の高等学校はありません。
貧しい民や学力がついていけない者は、高等教育を受けずに働きに出ます。
士官学校、各私学ともに毎年編入試験が行われており、学力が及んでいれば中途入学は可能です。
普通科は少なく、どの学校も学問の専門性が高いのが特徴で、職業人、技術者として必要な知識と訓練を得る事が出来ます。
専門科は男女でかなりの違いがあります。
アスンシオン帝国に大学は「アスンシオン帝国大学」の一校しかありません。
入学に年齢制限はなく、試験さえ合格すれば、どんな年齢でも入校できます。大学は国家直属の研究機関としての意味合いが強く、専門化が進んでいます。
授業料はありませんが、生徒というより研究補助者という職業としての意味合いが強いです。
「貴族幼稚舎」
貴族と貴族の従者、また、金銭的に裕福な子などが通う幼等学校で、男女共学の私学です。貴族達の出資で運営されています。
制服制、通学制で、読み書きや計算、社交等の基礎を学びます。
この貴族幼稚舎は、国立帝国初等学校に入学するための学力を身につけるための塾のようなものであり、余程落第しない限りは、国立帝国初等学校へ進む事が出来ます。
「国立帝国初等学校」
帝国の将来を担う実力のある子供を集める為に作られた帝都にある初等学校です。
男女共学ですが、男子と女子は別クラスで施設は同じですが、校舎が違います。
制服制、通学制ですが、地方出身者、遠方者の為の寮もあります。
学費は国費で賄われており、寮生は食費や寮費、制服代も無料です。ただし、遊興費はでません。
難易度の高い入学試験があり、さらに毎年編入試験が行われていて、将来のエリートを目指して地方から学生が集まり、学年が進むごとにクラスが増えていくのが特徴です。
また、高学年になると、士官や専門職を目指す選択科目が多くなり、特に女子では顕著です。
「マキナ初等神学校」
啓蒙思想を伝えるマキナ教が設立した私学校です。私学校ですが、マキナ教会に信徒と認められている者であれば、初等部の学費は無料です。ただし、寄付金を納めていなければならないので、実際のところ無料かどうかは怪しいです。
完全寮生で、自宅にはほぼ帰宅できず、ルールに厳しいマキナ教の教えの通り、たいへん厳格な規則の学校です。男女で学舎も施設も完全に分かれており、お互いの交流は一切ありません。
制服制で、生徒は休日も制服でいる規則です。
希望すれば、エスカレーター方式にマキナ高等神学校に進学することができます。
マキナ教は教育を重視しており、帝都以外にも大きな都市には支部校がある場合があります。
「帝国士官学校」
帝国で唯一、無料で高等教育が受けられる学校です。ただし、もちろん軍隊の下部組織として設立されています。
学舎は男女別ですが、校内の施設は共用で、稀に訓練で合同することはあります。
制服制、全寮制です。国立帝国初等学校と同様に食費も寮費も制服代も無料です。
男性の場合、入学して2年くらいまでは、兵科の細分化が少なく一般訓練として教養されますが、女性は最初から航空騎兵科、法兵科、衛生科、書官科に分かれており、専門化が強いのが特徴です。
「マキナ高等神学校」
高等部から編入する者もいますが、マキナ初等神学校からそのまま来る者も多いです。ただしマキナ高等神学校は帝都にしかありません。
相変わらずの厳しい校風で、制服制、生徒は休日も制服です。
初等部と違い、高等部の学費は有料です。学費はかなり安い方ですが、前述の通り、マキナ教会への寄付があるので、安いかどうかは比較できません。
「エステル高等学校」
私学高等学校のエステル高校は男女別校舎ですが、運動施設などは共用しています。制服制、通学制ですが、寮もあります。
やや授業料が高額な富裕層の為の学校です。士官学校には行かないが、専門教育を望む貴族や金銭的にやや余裕のある親が子供を入学させることが多いです。入学試験はありますが、面接のみ。帝都の他、大きな都市だけに支部校があります。
エステル高校は体育、芸術分野での実績が豊富です。一応奨学金制度もあります。
「アスタナ高等学校」
アスタナ高校は男女混合クラスで、制服制、通学制です。授業料は普通ですが、入学試験の難易度が高く、比較的が学力の高い者が多いです。帝都だけに学舎があり、少人数の精鋭主義の校風です。
本作の世界では、女子教育は専門化が強く、通常では男子の専科には入れません。しかし、この高校は唯一、女子でも男子だけの専科を学ぶことができるので、これらの専科を希望する女子は、この学校の合格を目指します。
「トヴェルズ高等学校」
トヴェルズ高校は男子校で、制服制、通学制ですが、寮もあります。高等学校では最も人数の多い学校で、授業料が安く、下部生徒では荒れている若者も多いそうです。入学試験は一応ありますが、落ちる人はほとんどいません。
特色として職業教育が特に盛んです。大小の都市に支部校があります。




