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第八回「百万石ドリーマー」

(ナレーション)「先の山崎合戦でのいくさで大武功を立てた官兵衛は、急きょ兵庫尼崎線のホームに息子・長政を呼びつけたのでございます…」


「おお!来たか長政!お前が来るのをみなで待っていたのだぞ!」

「え…父上、いくさ帰りじゃないんですか…?て言うかなんですか、その格好は?それにこの連中は…?」

(いくさ帰りのはずの官兵衛、なぜかラフな格好をしている。キャップをつばを後ろに被り、目立たない色のTシャツにジーンズ、走りやすそうなスニーカー。後ろには同じような格好のお供ばかり。長政、嫌な予感がする)

「ふふふ…聞け、長政よ!わしは中国大返しから山崎合戦にてこたびの第一武功を得たのだ!そしてな、秀吉様はこのわしに百万石の働きであると仰せになられた!」

「それは…おめでとうございます。でもその、質問したのは別のことなんですが…?」

「ちょっ…わしの息子の癖に察しが悪いな、長政!それがどういうことか分かるか!百万石だぞ!秀吉様はこの官兵衛に天下第一等のお墨付きを下さったのだ!わしの絶対領域に!」

(長政、そう来たか、と呆れてものも言えない)

「はははははっ、どうだ長政!ついに絶対領域の勝利が来たのだ。嫁に画像データを破壊され、デジカメやパソコンを壊され…長い冬を越えて。ついに我らの勝利がやってきたのだ…この嬉しさが分かるか!」

「は、はあ…父上。でも、あまり調子に乗らない方が」

「何を言うのだ、長政!これが祝わずにおられるか!ついついツイッターで拡散して、大々的にオフ会まで主催してしまったわ!みよ、我が後ろにいるのは絶対領域を信じて地下で戦ってきた同志たちだ!」

「あ、ああ…父上と同じ感じの人たちがいっぱいいるなあと思ったらネットのお友達ですか…」

(要は盗撮と痴漢仲間だと思ったが、率直に突っ込めない長政)

「これからトップシーズンを記念して、我らで海まで行くという企画なのだ!まず狙いは海水浴客の女子大生、専門学校生、さらには部活帰りのJK!いざ突撃小麦色に焼けた肌!健康的なちちしりふともも!」

(背後でちちしりふともも!の大合唱。長政、辺りの迷惑をはばかる)

「で、私はなんで呼ばれたのですか?」

「長政!お前はわしの子じゃろうが!百万石の絶対領域を継ぐのはお前しかいないのだ!そろそろじゃないか…初陣というやつが!」

(にたりと笑うチカン兵衛。嫌な予感が当たった長政。何とも言えない酸っぱい顔になる)

「初陣って?知ってるでしょ、父上!私にはもう妻がいるんですよ」

「わしにもいる。いやむしろオッケーだ」

「い、いやです!私、そんな初陣は遠慮します!大体あんた、息子を共犯者にして何が楽しいんですか!」

「共犯者などと人聞きの悪い。お前はわしの後継者だぞ!主犯に決まっておろうが!」

(もっと最悪なことを堂々と言う官兵衛。重たいズックを手渡す)

「さっさとこれに着替えてこい!お前が先陣を切るのだ!まずは狙いは女子高生だ!この又兵衛とスカートの中を激写してこい!」

(オタク集団の中から出てくる又兵衛。セーラー服とピンホールカメラを装備している)

「官兵衛様!女装JK部隊、いつでも出られます!」

「何が出られますだ!又兵衛、お前、もっと自分を客観的にみろ!」

(長政の前にもセーラー服が押し付けられた瞬間、パトカーのサイレンの音があちこちから響き渡る)

「なっ、すでに司直の手が!早すぎる!一体誰が…?」

(ネットで犯罪行為を拡散したからだろうと思ったが、長政突っ込む暇がない)

「残念だ!ここは退避するしかない!又兵衛、みんなを連れて逃げるぞ!長政、あとは頼んだ!それではアデュー!」

(ばらばらと逃げ散っていくチカン兵衛とその一味。長政、ほっと胸を撫で下ろす)

「危なかった…でも一体誰が…?」

(はっとする長政。駅交番に隈なく、母光が作成した防犯ポスターが貼られていることに気づく)

『危険!チカン兵衛注意!』

「はっ、母上…助かりました…」

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