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第二十回「ファイナルチカン兵衛 そして伝説へ…」

(ナレーション)「突如RPG風の異世界に飛ばされ、美少女パーティにこの世界を救うため魔王を倒してほしいとベタなお願いをされたチカン兵衛でしたが、用意されたチートを全く使わず戦国随一の交渉力と用兵術と言う自前の鬼チートをふんだんに発揮し、魔王の城を20万の大軍で囲んだ挙句、さんざん水責めにしてわずか三日で降伏させるという前代未聞の快挙を成し遂げたのでした…」


(高松城みたいにチカン兵衛が作った堤の中で、魔王の城、完全にフィールドに水没している。それを小田原攻め級の大軍が包囲する中、チカン兵衛、天下無双のドヤ顔でラストステージに乗り込んでくる)

「ふははははっ、どうだ!みんなチカン兵衛とか言ってバカにしてるが、わしが本気を出せばこんなもんよ!わしは天下一の参謀だった男だぞ!こーんなちゃらい城、ダンジョンごと一気に水没させてやったっつーの!ほれさっさと魔王を引っ立てい!」

(チカン兵衛の合図でフルボッコにされた上、簀巻きにされたかわいそうな魔王が引っ立てられてくる)

(魔王)「絶っ対納得いかない…なんだこの勝ち方!?」

「うるさいわ!わしを呼んだのがお前の運の尽きだっつーの、お前の部下残らず調略してやったわ!つーかそこにいんの皆お前の側近だぞ!」

(ぐりぐり魔王の頭を踏みつける元・側近。完全に寝返っている)

「お姉さま、わたしも何か納得いきません…!」

(美少女パーティの方のエルフ姫の美少女姉妹の妹の方、こそこそ突っ込みを入れる)

「おれ、全然戦闘してねえよ…」

(戦士の女の子、愕然としている)

(エルフのお姫様・姉)「みんな耐えるのです。過程はともあれ、最終目的は達したのですから…」

「なんか文句あんのか!?これが戦国大名の勝ち方なんだよ。お前、信長公だったら最短記録でクリアされた上、全員打ち首だぞ!」

(異世界の人みんな以外が萎える中、堂々と魔王が座ってた椅子にどっかり腰を下ろすチカン兵衛。勇者と言うよりは限りなく魔王に近い)

(エルフ王女姉、引き攣った声で)「とっ、とにかくこの世界をお救い下さり、ありがとうとございました。わたしも、究極召喚の魔法で命を縮めた甲斐がありました…」

「うん、何だかよく判らんが、良かったな!て言うか、そんなことはどうでもいいんだよ。私の望み、忘れてはいないだろうな!?」

「チチシリフトモモのことですね。お待ちください」

(王女姉の命令で、何やら運ばれてくる。宝石がごってりついた聖剣が刺さってる岩ごと、キャスター付きのリヤカーに載ってやって来る)

「はあっ!?なんだこりゃ!?」

「我がヤーコラナンダ神聖国に伝わる伝説の聖剣、『チチシリフトモモ』でございます」

「(チカン兵衛、頭を抱えてしばし考える)あーつまりなんだ、こっちの世界ではこれがちちしりふとももだとか、そう言うオチなんだよね…?」

「(恐る恐る)はい、その通りです…」

「馬鹿か!!!!って言うか橋本ちかげ呼んで来い!あいつ頭おかしいんじゃないか!?最終回だってのにこんなベタなオチ持ってきやがって!(ねぎら)う気ゼロか!あいつに無茶ぶりされて、こっちは異世界まで出張って頑張ったってのに!」

「(美少女戦士、ぼそっと)だからおれたちと、普通に冒険して普通に楽しめばよかったのに…」

「出来るか!!ラス一回しかないんだぞ!でなくてもこちとら一杯いっぱいなんだ!あーもうキレた!もーうやってらんねえ!(簀巻きの魔王を見る)おいお前、元はと言えば全然なってねえんだよ!今度わしに魔王やらしてみろ」

「(魔王びっくり)えっ…いやそのさすがにそれは」

「馬鹿め!お前なんか、信長様の傘下に入ったらぎりぎり足軽大将くらいのレベルだっつの。桶狭間辺りで死ぬっつの。秀吉様見習って、草履とか懐であっためるところからやり直せ!よし決めた!今日からわしが魔王だ。こっちで我が理想とする絶対領域の王国を作って世界征服してやる。お前はバイトのカバン持ちでぎりぎり使ってやるわ!」

(チカン兵衛以外の全員)「うっそー!?」

「嘘とちゃうわ!本当は橋本ちかげを殴ってやりたいところだけど、やったら本気で復讐されるからお前たちに全力で八つ当たりしてやる!まずは鉄道建設だ。全線チカン自由列車車両を24時間走らせ、警察と裁判所に相当する機関をすべて廃止する。その代りチカンと盗撮以外の罪を犯した人間はすべて死刑だ!これで文句はあるまい!?」

「あ、あの魔王がいないだけでこの世界は平和なのです。わざわざ色々変えなくても」

「平和でどうする!?こっちは戦国時代から来たんだ!下剋上動乱テイストばっちりぶっこんでやるっつーの!やってこなくても、やり返す!やられたアピールしてやり返す!これが戦国時代の基本だよく憶えとけ!!」

「お姉さまあの人、人として最低だよ!なんであんな人呼んだの!?」

「かっ…神のご意志だから。わ、わたし関係ないから…」

(ドン引きする二人の頭上からひらひら一枚の紙が落ちてくる)

「これは…まさか天からの助け?」

「でも紙だぜ?」

「神、とかけているんでしょうか…?」

「小ネタうるさいわ!いいから読んでみろ!」

「(拾った姉、紙の内容を読む)『そろそろ妻を呼べ』と書かれています…」

「ふわはははっ、橋本ちかげもやきが回ったな!今度こそ(てる)だけじゃどーにもならないっつーの!こっちは二十万から軍勢がいるんだぞ!もう福岡には帰らないし、だれの言うことも、ぜええええーったい言うこと聞いてやらんからな!?わしを甘く見るな!」

(もう一枚、紙が落ちてくる)

「うるさいな!!今度はなんだ!?」

「(妹、読む)『軍勢には軍勢を』って書いてあるけど…」

(馬のいななき声。するとそこに、白馬に乗った軍装の長尾虎千代が駆け込んでくる)

「あっ、あなたは橋本ちかげ本気連載の虎千代さま…って言うか上杉謙信公!?」

(殺気満々の本格戦国時代テイストな虎千代、不機嫌そうに鼻を鳴らす)

「ああ、その通りよ。ビダル編で忙しいのに緊急で呼び出されたのだ。軍チカン兵衛め、わたしのいんたびゅうに引き続き、本編でもやらかしてくれてるようだな。橋本ちかげがあいつどうやったら死ぬかなあってぼやいてたぞ。そろそろ大人しくしたらどうだ?」

「いや、これがチカン兵衛のキャラですから。て言うか行くところまで行ってやりますよ!この二十万の元魔王軍で!」

(窓の外の軍勢を誇示するチカン兵衛。しかし何か妙なことに気付く)

「あれ、なんか半分白い旗になってないか…?」

「ふん、調略なら我らがお手の物よ。我が毘沙門天の旗じゃ。すでにお前の軍勢の半数は我が方に寝返っておる。観念するがいい」

「なんて展開ぶっこんできやがるんだ!?くっそうやってくれたな橋本ちかげめ!て言うかいいんですか虎千代さま的には!?」

「うっ、うるさい!この前、お前にせくはらされた件で真人に相談したら『恥ずかしいとか言ってる癖に、すすんでそう言う格好してるからじゃないか』とか冷たくあしらわれたのだ。みんなお前のせいだ!!」

「彼氏に相談に乗ってもらえなかったから!?戦国最強の軍神がそんなちっちゃい理由で動いていいの!?」

「真人には当たれないから全力でお前に八つ当たりしてやるのだ。文句はあるまい!?」

(虎千代、問答無用で馬から降りて、小豆長光をお腹に抱える)

「最近、黒姫までお前のせいで調子づいて来ているのだ。禍根、我が手で絶つべし」

「いきなり最終奥義!?あの避けようと思っても絶対斬られるやつですよね!?いや、そっそそそそのちょっ、タンマ!軍勢いるのに、(ちょく)で大将だけ暗殺しにくるのやめて!ここ、川中島じゃないから!せめていくさしましょうよ!?」

「ほう、我が車懸りの威力を見たいと言うわけだな。(簀巻きにされてる魔王を見る)そこに転がってるやつ以上にぼろぼろにしてやろうか…?」

(ぎろりと、鋭すぎる殺気を放ってくる虎千代。誰にも止められそうにない)

「やばいどっちにしても勝ち目ない!考えてみたらこの人、信長様に勝ってるんじゃん!ひっ、卑怯だぞ橋本ちかげめ!どうみてもギャグまっしぐらな私が、こんな人とまともに戦えるか!絶対無理だ!」

「ならば大人しく、縛につくか?」

「うう…」

(チカン兵衛詰んだのを確認し虎千代、預かったスマホをぎこちなく操作する)

「チカン兵衛のご内儀殿か。ああ…もはやこちらは問題ない。すぐに警察と逮捕状を持ってくるがいい。…なに、横浜でも余罪があるのか?」

「いや、その、あれは未遂でしたから」

(どんどん収拾していく事態についていけない異世界の住人たち)

「信じられねえぜ。あんな危険な奴がみるみる大人しく…」

「ねえお姉さま、本当はあの虎千代さんて人を呼んだ方が良かったんじゃないの?」

「虎千代さんは忙しいのよ。それにえらい人だからほら、コッチの問題とかも…」

(指で丸を作って生々しい話を始めるエルフの姉妹)

「て言うかもっ、もう日本の戦国時代から勇者呼ぶとかやめてくんないかな…」

(と、怖すぎて、すでに虎千代と目を合わせられない魔王)

「おい、悪いがこやつは連れて行くぞ。良いのだろうこの世界、勇者とやらがいなくても」

(と、チカン兵衛を引っ立てようとする虎千代)

「あっ、はいはい全然構いません。魔王の人もすっかり心折れちゃったみたいですから」

「ついでに回収とかしてくれないんですか?」

「首を落とすくらいならこの場で出来るが」

(滅茶苦茶残酷だが、戦国時代の常識なのでさらっと言う虎千代)

「いっ、命だけは助けてください!私もう魔王辞めますから!田舎に帰って、実家の養鶏継いで真面目に働きますから!」

「だ、そうです。のでいいです」

(パトカーのサイレン音が間近に迫ってくる。びくっと背を震わせるチカン兵衛)

「さて、そろそろ行くか。チカン兵衛よ、これが年貢の納め時と言うやつだ」

「くっ、くそ…このまま捕まってたまるか!我が絶対領域は不滅なのだ!また何年も服役なんて嫌だ!!」

(チカン兵衛、宙に向かって叫ぶ!)

「おおいっ!我が帝国軍よ!至急私を回収せよ!!!」

(その瞬間、空がものすごい光を放って明滅し、上空から声が降る)

「あ、提督。地球で買ったGPS調子悪くて。ようやく発見できましたー。そろそろお帰りですかー?」

(その場にいた全員)「「「「「そんなバカな!!!??」」」」」

「バカなじゃない!ふふふっ、虎千代さま、あんたが光と警察を呼べるってことは、この異世界はすでに我らの世界とつながってるってことだ!わずかな可能性に、賭けた甲斐があったわい!!」

「逃すか!!」

(強い光にひるんだ虎千代が一歩遅れて飛びつこうとした瞬間、窓から入ってきた光線に回収され、チカン兵衛天に上る!!)

「ふわあはっはっはっ…さらばだ明智くん!また次の犯罪現場で会おうじゃあないか!」

「まあた古いネタを!次はどこへ行くつもりだ!?」

「ふははははははは…ふわっはははははあああ…ぶはっ…げほっ、よだれ器官に入った…」

(微妙な高笑いだけを残し。UFOに乗って去るチカン兵衛。その行方はいずこ)


(その頃、福岡藩の城屋敷。うららかな昼の陽が射す縁側でお茶を飲んでいる長政、妻と談笑)

「平和だな…」

「あのご夫婦がいないと、本当に静かでござりまするね…」

(そのとき急に電話が鳴る。子機を持ってきた妻糸姫、少し話した後長政に渡す)

「どうした?」

「なんか、警察からですって」

「もしもし…(受話器をとった長政、とてもいい笑顔で)ああはい。全然知らないです!我が藩に軍チカン兵衛などと言うものは在籍しておりません!!」


「遅かったか…」

(遅れて警官隊と現場に到着した妻・光、状況を確認する)

「面目ない。問答無用で足でも斬っておけば良かったか」

「いいのよ虎千代さん、そんな怖いことしないで。異世界の人がさっきからドン引きしてるわ」

(大きくため息をついた光、チカン兵衛が逃走した後の晴れ渡った青空を見上げる)


「あの人、またどこかで職質されてるのかしら…」


(JR横浜駅のホーム。警官から職質中のチカン兵衛、カップルとにらみ合いからの、とてもイイ笑顔のアップ)


「チカン兵衛ですから」


と、言うわけでここが一区切りでございます。大河に並走して一年近く…軽い気持ちで書いた割烹が皆様のお声であれよあれよと言ううちに、ちゃんとした連載になりました。ひとえに応援してくれる皆様のお蔭です。さらには読み続けて下さるばかりでなく毎回コメントやご感想、ツイッターでの読了宣言くれる方々、本当にありがとうございました。KEYさん、媛さん、朧月夜さん、矢口さん、悠さんに卯侑さん…他にも色々な方々に支えられて、ここまで来れました。そしてさらにはすでに続編のお話なども頂き、恐縮しきりです。…お蔭様で奴は早めに帰ってくるかもです。ともあれ、まずはここでシメのご挨拶まで。皆様、いつも橋本ちかげ作品を読んで下さり本当にありがとうございます。

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