第十七回「秀吉死す?」
(ナレーション)「(前回までのあらすじ)自業自得と言うか、侵略を防ぐどころか、侵略者の立場になってしまった官兵衛は仕方なく、帝国軍の連中を乗せた巨大UFOを大坂城に着陸させるのでした…」
(中から降りてきた官兵衛、断り切れずに装着してしまったマスクをつけている)
「(あわてて出てくる三成)わっ、わわっ、宇宙から何か来るとかっ、どんな狼藉ですかっ!て言うかその格好、許可取ってるんですか!?」
「(息が漏れる音)(コーホー…)うるさい!(カポー…)私だって好きでやってるわけじゃないんだ!(コー…)こうしないと帰れなかったんだ!許可とかそう言うお話は…なしだ!グレーゾーンなんだそこに触れるな!(コホー…)ああ苦しいなこれ」
(けったいなマスクを被っているが、下は甲冑の官兵衛を見て三成すぐに気づく)
「あれっ、もしかして官兵衛殿ではないですか!?私の陰謀で宇宙の藻くずになったとばっかり思ってたのに!まさか帰ってきやがったんですか!?」
「太閤殿下が妙なこと言い出したな、と思ったらやっぱりお前の仕業かっ(コー…)、最初から私を宇宙へ飛ばして抹殺する気だったんだな!朝鮮のがまだましだっつの!見ろ三成、お前の(カーポー…)どす黒い陰謀のせいで(コホー…)わしは今や(スー…)なんだぞ!?」
「(三成しらっとして)え…ごめんなさいスーって最後の方よく聞き取れませんでした。はーあ、やっぱりなあと思いましたがチカン兵衛殿は、宇宙に左遷になって暗黒面に堕ちられたわけですな。とりあえず今、この三成のお陰でそれなりに充実してると言うことでいいですか?」
「うるさいわ、お前もこのマスクも!(ほっぺの肉がくっついていきそうになりながらも、苦労してマスクを取る官兵衛)…ああっ、とれた…って言うかふざけんな!前回太閤殿下がお亡くなりになるとか言ってたから、色々(展開的にも)無理をおしてやっと帰ってきたんだぞ!太閤殿下を出せ!二次ヲタ、お前の始末は後だ!この時代に絶対ないすっごいレーザーとかでばらっばらにしてやるからな!さっさとどくがいい!」
(三成を押しのけ、ずかずかと秀吉の部屋に入る官兵衛。秀吉、W○iフィットでゴルフとかやって健康的に汗を掻いている)
「おおっ、三成、ドライバーやっとちゃんと飛ぶようになったよ!…あれっ、お前官兵衛じゃん!?戻ってきちゃったの!?」
「戻って来ちゃったじゃないですよ殿下!つーか、W○iフィットでゴルフとかって、あーたどんだけ健康なんですか!?」
「あっ(何かに気づいた顔)ごほっ、ごほっ…いや、もう死ぬって。おれさ、去年から健康診断で医者に言われてるのよ。無理ないくさとか謀略とかやめろって」
「嘘つけ!!!全然会社辞めたばっかの人ぐらいの健康不安度じゃないですか!そう言う人は仕事辞めたら、毎日職安に行って仕事探してるんですよ!?あんたも暇そうにゲームなんかしてないで現場で働け!!!」
「まっ、待て待て官兵衛!今布団とか敷かせるから…もう死ぬから!なっ、臨終の挨拶とかしようよ。ほら、大河のあれやろう!『このチカン兵衛、最期まで(泣)…殿の…軍チでございました』…ってやつ!」
「出来るか!!!て言うか軍師だよ、軍チってなんだよ!最期までチカンしろってか!そう言うあんたの無茶ぶりで色々マズイ展開になったの自覚しろ!」
「はははあ、でも帰ってこれたんなら良かったじゃないか」
(布団の準備が出来た秀吉、紫色の鉢巻きをしてわざとらしい咳をしながら寝転がる)
「私はねえ、今回ばかりは許せませんよ。なんですか、宇宙って!暗黒面って!電車もOLも女子大生も女子高生もいないってどんな絶望島流しですか!?」
「島って言うか星流し?!」
「そんな刑罰前代未聞だわ!何万回チカンしたって宇宙へ飛ばされたりしませんよ!?」
「ごめんごめんわしが悪かった!…いやあれは三成が悪いんだよ。おれにもさ、『そろそろ関ヶ原とかしたいんですけど。あれっ、お身体の方は…?』とか露骨に聞いてくるからさ。お茶々も『そろそろ癌か脳卒中におなり遊ばしましたら?』とか毎日耳元で囁いてくるし。全っ然愛されてないの毎日実感するわけよ。それで何か仕事もやる気なくなっちゃってさ。ああ、昔は良かったなあ官兵衛。信長様とは仕事やりやすかったし。どうせなら新天地で信長様と、第二の人生とか目指したかったなあ…」
(とか回想していると、都合よく入口の襖がぶっ倒れる)
「ふわはははあっ、どうじゃあっハゲネズミめえっ、相変わらず励んでおるかやあっ!」
(ばりばり現役のスーツ姿の信長、ア○パッドを持ったパツキン美女の秘書を連れてずかずかと踏み込んでくる)
「まっ、またもや信長様…そろそろさすがに用事ないでしょう」
「あるでや!馬鹿どもめ、いい大人が二人何をサボっておるかや!わしがおらんとお前らは、すーぐサボるから油断出来んのだでや!特にハゲネズミ、お前は昼間っからゲームして寝転がって、わしより若い癖に情けないでや!毎日食って飲んで死ぬほど働け!」
「い、いや信長様、あーた人生五十年って言ってたじゃないですか…?」
「阿呆、それは昔の話だわ。今は現役五十年、セカンドライフも五十年、生涯CEOが理想の生き方だでや!ハゲネズミめ、やることにゃあならわしの店に来て働かぬか!?ちょうどな今、香港支店の営業部長のポストが空いてるでや!どうじゃ?」
「いやあの私、英語とか中国語とか全然駄目なんで…」
(国際派ビジネスのヘッドハンティングに思いっきり躊躇する秀吉。信長、どこからか、スーツ姿のチャイナ美女を連れてくる)
「花莉だでや。中国語も北京語、上海語、香港語、さらには英語にイタリア語スペイン語、日本語五ヶ国語話せるでや。こやつは日本人のお金持ちと結婚希望なのだわ。お前金あるし、遠慮なく現地妻兼秘書にするがええでや」
「我愛你秀先生(秀さん、愛してる)」
(チャイナ美女、遠慮なく秀吉に抱きつく)
「あ、わし、行きます」
「ええええっ!そっ、即答しないで下さいよチャイナ美女が出て来たからって!現地でお金がなくなって見捨てられても誰も助けてくれませんよ?ここは考えなおした方が…」
「心配するな、ハゲネズミ!我が社へくれば収入もどーん!お前は最初から役員にしてやるでや!それにな、今なら九竜湾を見渡せるこの超高級マンションがお前の家だで!」
(パツキン秘書、ア○パッドで高級マンションの映像を見せる。さらに絡みつくチャイナ美女。秀吉の顔、みるみる欲望ボケしていく)
「どうじゃ?若いチャイナ愛人と、ホームバーのあるマンションで。ムード満点の香港の夜景を見ながら二人きり…寧々とか、呼びたい奴は後でごまかしごまかし呼べばええでや。どうでや、たまらんじゃろ!?」
「たまりません!わし行く!今行く絶対行きます!」
「殿下!もう欲ボケする年じゃないでしょ!?いくら信長様だってこれ、悪魔の誘惑ですよ!」
「ふわははあっ、言わせたい奴には言わせておくでや!まだまだがっつり働いて、若いかみさんもいいぞ。跡継ぎとかそう言うのも考えんでええしなあ」
「行きます」
「じゃ、契約書にサインを」
(契約書を挟んだバインダーを持ってくる秘書。秀吉、ボールペンでさらさら自分の名前を書き始める。途端につやっつやになったお顔をばしばし叩く秀吉)
「よおっし!ビバセカンドライフ!生涯現役、香港でばりばり働くぞお!」
「目が怖い!?むしろのりのりで悪魔に魂を売った!?」
「その意気だでや!これでお前に話した我が夢、約束、今果たしたでや!これぞわしとお前の唐入りだでやあっ!」
「信長様ぁっ!官兵衛、これじゃあっ、わしはこれを待ってたんじゃああっ!後は頼んだぞおおおおっ!」
「えええええええっ!?」
(がっちり腕を組んだ後、涙ながらに抱き合う信長秀吉主従)
「(秘書に飛行機を手配させ、秀吉に荷物をまとめさせる信長)…と言うわけだでや。後はお前らで勝手にやればええでや。て言うかお前もどうじゃ?隠居してやることないならうちで働くか!?今ならベトナム支店も空いておるでや?」
「いや拙者は、軍チカン兵衛ですから。私いなくなったら最終回ですよ…」
(ナレーション)「何だか納得できないもやもやしたものを抱えながらも、ハッスルして飛行機に乗り込む秀吉を見る、チカン兵衛の背中はどこか悲しげなものでございました…」




