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第十五回「絶対領域天元突破」

(ナレーション)「今危険な海防の話題にも関わらず『朝鮮出兵するニダ!』と言う秀吉の無茶ぶりによって、諸将がいやいやながら渡海の準備を始める中、ようやく官兵衛はなぜか一人別口に案内されたのでした…」


(何か円筒形の建造物の前で、待つ秀吉と三成にチカン兵衛遅れてやってくる)

「いやー、すいません太閤殿下!電車が遅れまして!」

「初歩レベルのいいわけだな、お前ほどのものが」

「どうせ、痴漢して拘束されそうになっていたのでしょう。そのまま連れてかれればよかったのに」

「うるさいアニヲタ、この前はよくもやってくれたな。鼻血と言う名前で家臣はおろか妻にまで吹かれたわ!覚えてろよ!」

「しかしその鼻血と言う名前のお陰で、警察に拘束されなくて済んだでしょ。うちに身元照会来ましたよ。痴漢行為もいい加減にして下さい。しょうがないから『うちには黒田鼻血と言うものはおりませんが』と答えておきましたが」

「ふん、二次元野郎にしては気が利くではないか。で、太閤殿下今日は私めになんの用事ですか?私も出兵の準備とかで忙しいんですが」

「お前のところは長政が行くのだろう?そっちはそっちでやればいい。わしはお前に別の命令を与えたくて呼んだのじゃ!」

(円筒形の建造物を愛おしそうに撫でる秀吉。官兵衛不審そうにこれを見る)

「て言うかなんなんですか、これは…?」

「官兵衛…わしを若い頃から知ってるお前ならよく知ってるじゃろうが、わしはな、夢の塊じゃった。信長様について天下統一する夢も果たしたし、寧々には殴られるが、美人の嫁さんもいっぱい手に入れた。他にも色々実現したかったが、わしの残り時間ももう少ない。ついに農業高校には入学できなかったしな」

「いやそれは最初から無理…いえいえ秀吉様!なにを仰られますか!信長様にまだがんばるって言ってたじゃないですか!ここでリタイアなんてみんな納得しませんよ」

「官兵衛、ありがとう。お前たちの気持ちは嬉しいが、わしは自分のことはわかっている。本家大河の放送回も残り少ない今、橋本ちかげがさっさとわしを殺したがっているとな。恐らく次回辺りころっと逝くじゃろう」

「ええっ、て言うか余命あと少しなのになんでそんな淡々としてるんですか!?」

「わしの人生は朝露のようなものよ。露のように落ち、露のように消えるわが命、なにわのことも…あ、まだ後のフレーズが思いついてないが、まあそんな感じじゃ。それで最後は思い残すことなく逝きたいのじゃ。思えば朝鮮出兵も信長様とわしが語り合った夢のひとつじゃ。しかしな、官兵衛、わしにはまだ夢があった。それをお前に実現して欲しいのじゃ。老い先少ないわしの頼みを聞いてくれぬか?どうじゃ?」

「(感涙)…ひっ、秀吉様、末期の夢を私に託そうと…わっかりました!この如水、なんでも頑張っちゃいますよ!それで何をすればいいので?」

「うん、そうだな。まずはじゃあこの椅子に座ってくれ」

(秀吉の合図で三成、何やらシートつきの椅子を運んでくる。はずみで座り込んだ官兵衛の体にシートについていたベルトを巻き、ジェットコースターのバーのようなもので固定し始める)

「あの…なんですかこれ。遊園地の絶叫マシンみたいなシートですけど」

「うん。これはわしが先日NASAに頼んで作ってもらった宇宙用シートじゃ。これに座ってさえいれば発射の際の衝撃にも、重力にも十分耐えうるという優れものなのじゃよ」

「へっ、へえ…(確かにいいものらしく、官兵衛が身動きしようと思ってもさっぱり動けない)…で、そっ、そんなスゴイ椅子を作って殿下は、何がしたいのですか」

「官兵衛。わしはな、本当は朝鮮になんか別に行きたくなかった。あそこだってただ同じ人間が住んでるだけじゃろ。夢がないのだ。幼い頃のわしはな、もっと純粋だったんだよ。官兵衛、お前ならわしの気持ちわかるだろ」

「はっ、はあ…あの、答えになってませんが」

「わしは宇宙に行きたかった!」

「えっ、ええええっ!!??」

(衝撃の発言に言葉にならない官兵衛)

「官兵衛、お前わしの代わりに宇宙に行ってくれ!」

「やっ、やですよ!!宇宙には絶対領域なんてない!あるわけない!ちちしりふとももの向こう側じゃないですか!何これ…て言うかロケットの発射台だったんですか!?」

「ああこれね、NASAに作ってもらったんだよ」

「NASAなんでもやってくれますね!…て言うか、その、そういう問題じゃないでしょ!ええっ、宇宙!?そんなの聞いてないですよ!地上に楽しみがある私がなんで宇宙になんか行かなきゃいけないんですか!」

「わしの頼みが聞けんのか?」

「頼みを聞くのも限度があるでしょ!?て言うか行きたいんなら、あんたが乗ればいいじゃないか!」

「わしは老いた。体力的にもう無理じゃ。他の誰かに任せるしかなかったのだ。それにな、三成がどうしても官兵衛が適任だと言うのでな」

「官兵衛殿の撮影技術なら、宇宙の隅までばっちり撮影できますって!」

(シートの脇で、サムズアップするいい笑顔の三成)

「覚えてろ三成帰ったら絶対後悔させてやるからな!!」

「その意気じゃ。チカン兵衛、お前なら必ず生きて帰ってこれる!」

「戦場でも感じたことのない危機感がするんですが…これ、ちゃんと人間が乗って大丈夫だったんですよね!?」

「大丈夫!猿は死んだが、犬は帰ってきたから」

「私犬レベルですか!?…いや待って、下ろしてください!せめて妻と子に別れを…そして部屋を、一度だけでいいですから部屋を整理させて下さい!」

「「諦めろ!もう発射準備は済んだ。さあ行けチカン兵衛!絶対領域天元突破じゃ!」

「いやなにそれ全然かっこよくないし!」

(じたばたするチカン兵衛のシートを、円筒形の建物に収納する三成。秀吉、別れの言葉を述べる)

「早く生きて帰って来い!次回、わしは死ぬぞ!」

「もう確定事項!?」

(死期が近いとは思えないくらいいい笑顔で壁についているスウィッチをぽちっとなする秀吉)

「レディ?スリー・ツー・ワン…ファイア!」

(チカン兵衛の絶叫がモニターから木霊する)

「ああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああっ!」


(ナレーション)「こうしてチカン兵衛は、未知の絶対領域へと旅立ったのでございます…」

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