第一回「釈放チカン兵衛」
まさかこのしょうもない割烹小説に、シリーズ化のお声をいただけるとは思っていませんでした。台詞加筆、追加などしてありますので割烹との違いも楽しめるかと思います。それではくれぐれも温かい目で、よろしくお願いいたします。
(ナレーション)「有岡城の荒木村重を説得に向かった官兵衛は、途中電車で女子高生への痴漢行為の疑いをかけられ、1年の長きに渡り逮捕・拘禁されていたのでございます…」
「官兵衛!ようやく拘置所から出てきたか!わしはお前の無罪を信じておったぞ!」
「羽柴さま、保釈金を払って頂きかたじけのうございます。この一年間は辛うございました」
(秀吉、涙目でうなずく)
「そうであろう、そうであろう!」
「勤め先に問い合わせが行きましたら小寺の殿に『あーあの官兵衛なら…やったかも知れんのぉー』などとあることないこと言われ困り果てました。しかし、『それでもそれがしはやっておりませぬ!』と言い続けた甲斐がありました」
「そうじゃっ女好きのわしはともかく、官兵衛が痴漢をするわけがないわっ」
「いやあ、しかし久しぶりの裟婆は、たまりませんな。あっちもこっちもちちしりふともも!」
「誤解を招く発言はやめい、官兵衛!もう一度捕まったらなんと申し開きをするのだ!」
「いやーすみません、あんまり嬉しくて。ところで今日の官兵衛ですが、やっぱり電車で明智殿のところに向かおうと思いましてございます」
「いや、それはならん!電車などで行ってもしものことがあったらどうするのだ!また軍チカン兵衛の汚名を着たいのか!」
「うぐ…やっぱりだめですか。たとえこのチカン兵衛…いや官兵衛、なんと呼ばれようと、女子高生で満員の電車での通勤は譲れませぬ!」
(答えあぐねる秀吉。それでも何とか説得を試みる)
「官兵衛、あのなタクシー代出してあげるからさ、電車はやめときなよ」
「しかし羽柴さま、もはや夏場、今乗らずしていつ乗るのでございますか!」
「官兵衛、車で行きなよ?!なんだったら送ってくから!な、な!?(泣)」
「いや、こればかりは羽柴さまとて譲れませぬ。この官兵衛、明智さまにもいつか申しました。もはや領土の望みなく、官兵衛が望みはまったくの別儀にあると」
「な、なんだと」
「この官兵衛、この夏の一番の望みは健康な女の子のちちしりふともも。これこそ言わば乱世に生きる男子の絶対領域でありまする!」
「官兵衛あのさ…」
「は…」
「ホントに痴漢してないよね?」