金色とオレンジ色の混ざった空の下で
「なぁ、どうしてお前はそう笑っていられるんだ?」
学生鞄を肩に背負った男子高校生。
その隣に並んで歩いているのは、いかにも大人しそうな女子高校生。
「笑う?私笑ってた?」
男子高校生の前を歩き、覗き込むようにして女子高校生は訊く。
「ほら、今も笑ってる。顔に出てない時も笑ってる。いつも笑ってる」
男子高校生は目線を少しそらして言う。
女子高校生はその答えを聞き、不思議そうにまた訊く。
「私は別に笑ってるつもりはないよ?なんで慶ぇちゃんにはそう見えるのかな?」
男子高校生は目を閉じ、やや顔をあげながら早足で歩き続け、
「そう見えちゃうんだよ、俺には」
そう答えた。
女子高校生は、慌てて男子高校生の後に続く。
「なんでかな?なんでかな?気になるな?」
男子高校生は、女子高校生とは目を合わせず、ずんずん早足で進む。
女子高校生は楽しそうに何度も問う。
「なんでかな?なんでかな?」
「っく…、そんなに知りたいか?」
男子高校生はくるりと女子高校生の方に向き直り、少し顔を赤らめて言う。
「聞きたいな、慶ぇちゃんがそう見える理由聞きたいな?」
女子高校生は興味津々に目を輝かせている。
男子高校生は口をぎゅっとつぐんでから、照れくさそうに言った。
「…いつも見てるから」
女子高校生はその言葉をしっかりと聞き、男子高校生の顔を覗き込んで、
「そっか!」
と、にっこり笑った。
男子高校生は、その女子高校生の返事に軽く溜め息をつく。
「…お前…『そっか!』って………。まぁいいか…」
女子高校生の笑顔につられて、男子高校生も曖昧に微笑む。
「じゃあお礼に今度は私が慶ぇちゃんをいつも見ててあげる!」
突然そんなことを言い出した女子高校生。
男子高校生は「えっ?」と、思いもしなかった返答に驚いた。
女子高校生は、男子高校生の顔を覗き込んだまま、にぱー☆と笑う。
「っっっ!」
急に女子高校生にくるりと背を向け、足早に進み出す。
「ありゃ?」と、女子高校生も後につく。
「どうしてそんなに早く歩くのかな?かな?」
「っっっっ!!」
必死に後を追う女子高校生。
男子高校生は、必死に赤くなった顔を見られまいと早足で進んでいた。
「ねぇ、なんでかな?なんでかな?慶ぇちゃんなんでかな?」
夕日が西に沈みかけ、金色とオレンジ色が混ざった空の下で。