宝石言葉は -純粋-
一族にとっては捨て駒。
切り捨てても、まったく、痛くない人材。
彼女にとっては友達。
不意にいなくなられては寂しい。
ただ一人だけのために。
彼女のためだけに死んでいく。
彼女さえ無事ならそれでよい。
ただ。
貴女のそばに、いられれば。
それだけで、幸せ・・・で。
たとえ、僕が消えて。
なにか、別の生物に生まれ変わった、としても。
貴方のそばに居たくって。
ただただ。
何気なく過ぎてゆく時間が。
本当に。
本当に幸せだった。
そう、あなたが。
あなただけが、僕にくれたのだ。
”幸せ”と感じる心。
”うれしい”や”たのしい”も。
”さみしい”や”にくい”さえも。
貴女にあって、はじめて知った。
あなたが。
僕に。
感情をくれたのだ。
僕の一族は、貴族と呼ばれていた。
公爵と呼ばれるくらい。
どれだけ偉いのか。
なんて、僕にはわからなかったけど。
その国を代表する、とても有名な貴族だと言っていた。
もともと、国でもそれなりの一族ではあった、らしい。
創造主がこの世界を作られた当初から、
この国にあったと記録されている。
つまり、創造主が自ら作られた、全てのものの一部であった、と。
あるとき一族は、王族の姫を守る第一の騎士を輩出した。
彼の名は”ルベウス”。
”ルベウス・サフィニア”と記録されていった。
その絵姿も残っている。
燃えるような深紅の瞳。
赤みを帯びたブロンド。
そして、バランスよく鍛え上げられた肢体。
青色系統の瞳に、ブロンド。
そんな一族の中に生まれたのに、彼がしいたげられることはなかった。
彼の瞳が赤かったのは、別の地域の血を引いたから。
自国内の同種族のみと婚姻を繰り返してきた一族が、
それなりの事情で遠方の国の血を受け入れた結果だったからだ。
彼は幼い頃から王宮に上がり、力をつけ姫の騎士になったという。
その当時に争っていた非友好的な多国を討ち滅ぼし、王族を守った。
彼の行いで、一族はますます栄えたらしい。
それからの一族は、それなりに国外の貴族とも縁を結んだようで、
紅い瞳の子供もときおり生まれるようになった。
・・・でも、僕の瞳は。
藍でもない。
そして紅もない。
オレンジ色に近いピンク。
一族の落胆≪らくたん≫と、今まで以上の侮蔑≪ぶべつ≫。
藍でないことは生まれた時からわかっていた。
感じていた、ほかの兄弟との少しの差別。
しかし、紅でないことは数年前まではっきりしていなかった。
そこからはいないものとして扱われた。
偶然出会ったあの人だけは、『綺麗ね』とほほ笑んでくれた。
こうもいってくれた。
内緒の話よ?って。
「同じ石なのに、紅い色だけが特別。
だから別の名前で呼ばれている石があるの。
藍い色の石が代表的でね、紅い色以外をまとめて同じ名前で呼ぶの。」
まるで僕の一族のような石だと思った。
貴女はさらに微笑で言葉を続けた。
僕の感情を読み取ってようで、ドキッとした。
「でも実はね。その石の中で紅とオレンジの中間・・・そうちょうどあなたの瞳のような色も特別でね。」
微笑みは優しくって、いたずらっぽくって。
「紅い石よりもずっと希少価値が高いのよ?
パパラチアと言ってね、蓮の花っていう意味なのよ。」
「蓮の花はね、きれいな水だと小さい花しか咲かなくって、
泥の中でこそ美しい花を咲かすのよ。
人も苦労したほうが、大きく美しく咲くことができるってことね。」
貴女の言葉で、微笑みで、
ただ貴女と一緒に居れるだけで、僕の心は暖かくなる。
生きているんだっと実感した。
もう気が付いたかな?
まだ気付いていないといいな。
あなたのために死ねるなら、僕が生まれた意味はある。
あなたのために死ねるこの瞬間を、僕が厭う訳がない。
僕があなたのために死んだこと。
あなたが気づかなければ・・・いい、けど。
・・・むりなのか、な。
こんなはずじなかったのに。
こんなイベント・・・じゃ。
彼の純粋さを表現するのが、こんなイベントだなんてorz
わかる人には題材となった宝石がわかりますね。
ええ、そのとおりコランダムの・・・。
あ、一人だけ名前が出てきてますが、彼の話もいずれお目見えします。
誰も見てないと思うから、直した。