放課後
「よし、それじゃあ今日も1日お疲れ様。解散っ。あ、掃除当番はちゃんとやってけよ。じゃあ、俺はちょっと用事あるから。」
そういって小田が出ていくと、みんなは机を後ろに下げて出ていき、掃除当番がほうきで床をはきはじめた。
(じゃ、私もかーえろっと。)
そう思い教室をでていく花瑓。すると、後ろから足音が聞こえてくる。振り返ると晴明が立っていた。
「北條さん、わかんないことあったらきいてっていってたよね?」
「う、うん。」
「まだ引っ越してきたばかりでこの辺のことよくわかんないんだ。もし時間があれば案内…とかしてもらえたらなって。」
「べ、別にいいけど。」
「よかった。」
にこりと微笑む晴明に花瑓は少し目をそらせながら、
「じゃあ、まずは商店街から案内するね。行こう!」
と昇降口から飛び出す。すると、
「ねえ、転校生って…。」
とシルクが鞄から顔を出す。
「あ、シルク。あの人よ。」
花瑓が目をやった先には靴を履き替えて出てくる晴明の姿がある。
「ねぇ、シルクあの人昨日の人に似てない?」
うーん、と考え込むシルク。
「ちょっと待ってよ、北條さんったら速いよ。」
と晴明が花瑓に追いつく。
「そんなことないない。じゃあ、行こっか。」
と悪戯げに笑う花瑓に晴明は思わず見惚れてしまう。
10分くらい歩くと商店街が見えてきた。
「あ、あそこが商店街だよ。」
「へぇー、松葉牡丹商店街?」
「そう、昔ここにはたくさんの松葉牡丹が咲いてたかららしいの。」
アーチをくぐると、どこか懐かしさを感じさせる店々が並んでいる。
「あのね、ここのお肉屋さんのコロッケがとっても美味しいの。」
「でね、こっちのパン屋さんの一押しはクリームパン。自家製カスタードクリームが病みつきになるのよ。」
「自家製?食べてみたいな〜。」
「食べなきゃ、損よ。それからね〜」
…と笑顔で案内してくれる花瑓に、楽しそうな晴明。
… 「これでおしまい。」
夕日を背にくるりと振り返る花瑓。
「ありがとう。とっても楽しかったよ。」
「よかった。…あの、ちょっと聞きたいことがあるんだけど。」
「何?」
まじまじと花瑓の目を見つめる。
「えっと…」
目をそらす。
「お家どの辺かなーって。遠くなっちゃってたら申し訳ないなって。」
「あ、家?大丈夫。たぶん遠くなってないと思うし。」
「そっか。よかった。私はあっちの方なんだけど…」
「ほんとに?僕もたぶんあっちの方だと思うんだ。じゃあ、一緒に帰ろうか?」
うん、と頷く花瑓。そして2人は歩きだしたのだった。