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第五話
扉を開けるか。もし警察であれば、下手をすれば捕まるだろう。あの映像に映っていた不審者、もしくは犯人は(なぜだかは分からないが)オレなのだから。オレは十秒ほど考えてから扉を開けずに息を殺した。しばらくして扉を叩く音は止んだ。オレは念のため二十分ほど時間をおいてからドアを開いた。そこには誰もいなかったが郵便受けに一枚の紙が入っていた。
『逃げろ。そして僕を追え。答えはそこにあり、それ以外のどこにもない。』
オレは思わず溜め息をついた。どうもとてつもなく面倒なことに巻き込まれてしまったらしい。その紙をポケットに突っ込んで家の中に入った。叔父はもう家を出て仕事をしている。オレはメモ用紙に走り書きをした。
『しばらく家を出ます。迷惑をかけてごめん。』
最後になるかもしれない手紙のわりには随分素っ気ない気もしたが、それ以上の何かをおもいつけなかった。メモを机に置き、荷物を揃えようとも思ったが何を持って行けばいいのかよく分からなかった。衣服を持っていこうとも思ったがかさばりすぎた。17歳の青年が大きい荷物を持って行動するのは目立ちすぎる。オレは諦めて、その辺にあった(散歩に行ったときに持ってた物が散らかっている。)物を持った。これならただ散歩しているように見えるだろう。そしてオレは家を出た。
最寄り駅に乗り乗り換えなしでできるだけ遠くに行く電車に乗った。もう自分がどこにいるのか、どこへ行くのか。そういう自分にまつわる空間的事象の全てが虚しく思えた。
そうこうしているうちにすっかり夜になった。オレはイヤホンで耳を塞ぎよく分からない街の雑踏を歩いた。すると通りすがりのチンピラにぶつかった。
「イッテ。何しやがんだテメェ!!」
チンピラが叫びながらオレの服の襟を締め上げる。オレはただでさえうんざりしていたのに、少し肩がぶつかったぐらいでギャーギャーと騒げるそのチンピラを羨ましく思った。オレは無理やりそいつの腕を体から引き剥がし走った。
そして走り逃げた後、工場を見つけ、そこで一夜を過ごし、中年男に会い、今に至るのだ。ふと時計を見ると、26:26 26と表示されていた。26時26分26秒?そんなよく分からない時間ってなんだよ。オレの人生みたいに狂ってしまったんだろうか。
どうもkonです。
今回でやっと回想が終わりました。
次回からは物語はどんどん進んでいきます。
お楽しみに!!
また現在『僕が殺した』の略称募集中です。読んでくださった方は是非是非コメントで教えてくださいねm(_ _)m
では( ´ ▽ ` )ノ




