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第二話

不意に頬が叩かれる。

「イッテ……」

重たい瞼を無理矢理開くと目の前に一人の男が立っていた。年齢は30ぐらいだろうか。背丈はそこそこ高いが、なで肩で細いのであまり威圧感はない。

「お前、何してんの、こんなとこで。」

男が口を開く。

「別に……。」

「別にってこたぁねぇだろ。お前学生だろ。」

男が苦笑いしながら言う。

「学生じゃない。もう就職してる。」

そう。オレは年齢的には17歳、つまり高校2年生だが学校には通っていない。理由はいくつかあるが別に大したものじゃない。オレが物心着く前に逝った両親が残した借金を返すために働く引き取った叔父を苦労させないためだ。まぁ勉強から逃げたかったのもあるが。適当なIT関係の中小企業に就職してギリギリ自分の生活費は稼いでいた。そう、『いた。』だ。過去形。つまり今はそうではない。なぜならオレは犯罪者に仕立て上げられたから。

「へぇ。でも一人前の社会人だって普通はこんなとこで寝たりしねぇよ。」

男が苦笑いのまま言う。

「それもそうだね。でもあなたにオレの事情を説明する義務はないよね。」

「まぁな。」

「じゃあオレはここから出る。あなたはあなたのいるべきとこに戻って、すべきことをする。そしてオレとあなたは一生関わらない。これでいいよね。」

「なんか棘のある言い方だな。まぁいいけど。」

「人と関わるのが嫌いなんでね。」

小さい頃から他人と関わるのが苦痛だった。物心ついたばかりの時はしゃべりかけられただけで大泣きしたりした。年齢を経るにつれてだんだんと耐えれるようになったが、それでも人と群れるのは嫌いだ。

「よくないよ、人嫌いは。」

歩きだしたオレの背後から男が言う。オレはそれ以上話したくなくて無言のまま立ち去った。


昨日に引き続き第二話です。

もうお分かりかもしれませんが、主人公の名前は出さない方針です。ちょっと分かりづらいところもあると思いますが、作者の挑戦心ということで暖かく見守ってくださいませ。では次回もお楽しみに!!

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