夜奏舞曲
青い光の中でのお話。
どこか古い屋敷の屋根裏部屋。
物は散乱、最近人が入った様子も見当たらない。
天井には天窓があり、月の光が全てに降り注ぐ。
そこに、高く微かな音色。
壊れかけたオルゴールの調子外れの曲。
早く、遅く、遅く、また早く。
側には薄汚れた人形が一つ。
水色の髪は乱れ、白いレースの服は破れかけ。
それでも、青の硝子の瞳は輝きを失わない。
月光を受け、煌いた。
月夜に人形は命を纏い、
オルゴールが奏でる曲に合わせ、
唄い、
踊り狂う。
『今宵だけの命』
だと、長引く事は許されない。
淋しい部屋のセルロイドの舞姫を、空の月はそっと見ていた。
青白く淡く深い光に照らし出され、美しく舞う彼女。
叶うならもう少しだけ彼女の側に
出来ぬならば、せめてその姿だけでも。
『今宵だけの命』
なら、少しでも長く照らし続ける。
――私は貴方が見守ってくれるから……――
――私は君が踊り続けるから……――
けれど
互いの距離は遠く、
想い合っている事さえ永遠に知ることは無いのだろう。
――夜が繋げた儚く確かで愛しい物語――
なんだか昔に書いたものの、イメージと舞台は未だに好きな作品。