「お前を愛するつもりはない」と言わなくて良かった。
名前を借りました
目の前に座る、政略結婚で嫁いできた令嬢ハトホル。
結婚するつもりは無かったので、冷遇するつもりは無いが、仲良くするつもりも無い。
でも、紳士として、とりあえず、仕方なく、社交辞令で、お茶をした。
黙ってお菓子を食べる令嬢。
お菓子を食べる姿が可愛くて、つい、持ったお菓子を令嬢の目の前に差し出した。
「…」
差し出したお菓子をパクリと食べる令嬢。
…食べた…
…食べさせてしまった…
「…」
「う〜ん…美味しい〜」
モグモグしながら、ウットリとする令嬢。
もう1個お菓子を取り、差し出した。
パクリ。モグモグ…
「う〜ん…美味し〜」
何だ…これは…?
何だこの目の前の可愛い令嬢は…?
もう1個…
パクリ。モグモグ…
「う〜ん…美味し〜」
「…もっと持ってこさせようか?」
もっと食べさせたくて聞いてみた。
「はっ!も…申し訳ありません…お菓子は5個までと両親に言いつけられていたのでした…」
失敗しちゃった!と令嬢の顔に書いてある。可愛い。
「お菓子は5個まで」
私は復唱した。
「食べ過ぎてプヨプヨになってしまいます」
「プヨプヨ…」
ポッチャリとした令嬢…?
可愛い…
じゃなかった。
「そうか…」
もっと食べさせたいな…
「太らなければ良いのか?」
太らなければ、食べても良いのか?
「え?」
令嬢は、きょとんとした。可愛い。
「太らなければ、もっと食べて良いのか?」
私は真剣だった。
「そう…ですね?」
そう言って首を傾げた令嬢。
可愛い。
はっ…さっきから可愛いしか言ってない?
「まずは、運動をしよう」
「運動?」
令嬢が、反対側に首を傾げた。可愛い。
「散歩だ」
「散歩?」
「庭に、色々な花が咲いている。庭を一緒に散歩しよう」
「花?」
「そうだ花だ」
「一緒に?」
「そうだ。一緒に散歩だ」
「一緒に散歩…?」
令嬢は、またきょとんとしている。
可愛い。じゃなかった。
嫌なのだろうか?
「嫌か?」
「嫌じゃない」
良かった…
「行くか?」
「行ったらもう1個お菓子を食べても良いですか?」
お菓子に負けた気がするが、一緒に散歩には行ける。良いことにしよう。
「散歩が終わったら、また食べよう」
「はい」
満面の笑みで返事をする令嬢。可愛い。
エスコートして庭を散歩する。
花を見るたびに目を輝かせる令嬢。
可愛い。
料理長に、太らないお菓子を開発させるのと同時に、朝晩一緒に散歩をする。
令嬢…じゃなかった。妻は、すっかり私に懐いた。本当に可愛い。
執務をきっちりこなす。早く終われば妻との時間を作れると、集中して仕事をする。
すると、メキメキと実力があがり、功績を残し、領地経営も上手くいくようになった。
可愛い妻のお陰だ。
妻の為に開発した、太らないお菓子も、売り出したら、かなり売れ行きが良い。
妻の為にした事が、全部仕事や領地経営に活かされていた。
政略結婚だったが、嫌々だったが、仕方なくだったが、今では妻を愛している。
よく小説では、政略結婚の相手に「お前を愛するつもりはない」とか言うらしいが、言わなくて良かった。
可愛い妻に、そんな事を言うなんて信じられない。
その後に、妻の良さを知り、仲良くしたいと思っても「お前を愛するつもりはない」と言った夫が、愛されるというのか?そんな都合よくいくか?
本当に言わなくて良かった。
可愛い妻にお菓子を食べさせながら、心底そう思った。
ちなみに、初夜はまだだ。
妻は、まだ10歳だった。
…成人するまで、我慢できるかなぁ…?
私は決して、ロリではない。ないが、妻は可愛い。
「美味しいか、ハトホル」
「はい。美味しいです。アモン様」
妻が笑顔で名前を呼んでくれた。幸せだ。
幸せそうにお菓子をモグモグする可愛い妻を見て、更に幸せな気持ちになるのだった。
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