好きな人にデートに誘われたと思ったら違った話
アルマは一人、ドキドキしていた。
好きな人に誘われた。
――デートに違いない。
「最近できた、あのケーキ屋に行きたいんだ。一緒に来てくれないか?」
カールが言う。
アルマは、すぐに返事ができなかった。
「……ダメか?」
「ダメじゃないです!」
今度は食い気味に言葉が出た。
「じゃあ、いつもの三人組で来てくれ。こっちも三人で行く」
アルマは一瞬だけ言葉に詰まったが、すぐに頷く。
「はい、話を通しておきます」
⸻
放課後。
いつもの三人組――アルマ、カリナ、タバサ。
アルマは、ケーキに誘われたことを話した。
カリナが眉をひそめる。
「あそこのケーキ、見た目はいいけど美味しくないわよ?」
タバサがすかさず肘でつついた。
「そこじゃないでしょ。アルマが好きな人に誘われたってことが大事なのよ」
「そうなの! タバサ、カリナ。一緒に来て」
タバサはすぐに頷く。
「いいわよ」
カリナは少しだけ考えてから言った。
「男子がケーキ目当てなのか、私たちの誰かが目当てなのか、分からないじゃない。面倒だわ」
アルマの胸が、少しだけ痛んだ。
それでも顔を上げる。
「それでも……チャンスがあるなら行きたいの」
「後悔しない?」
アルマは小さく息を吸った。
「……大丈夫」
⸻
当日。
ガーデンに並べられたテーブルの一つに、六人で座った。
カールはカリナに話しかけている。
「このケーキ、美味しいですね」
「そうかしら。見た目のわりに、クリームが濃くて重いわ」
空気が少しだけ止まる。
カリナの言った通りだった。
アルマは慌てて口を開く。
「私はこの重さ、好きよ。フルーツも新鮮で美味しいし」
必死に場をつなぐ。
タバサは別の男子に話しかけられていて、こちらを見ていない。
もう一人の男子は、黙々とケーキを食べている。
――人数合わせ。
そんな言葉が頭をよぎる。
アルマは何度も笑って、話題を探した。
けれど。
カールの視線は、一度も自分には向かなかった。
⸻
翌日。
タバサとカリナが話しながら歩いている。
アルマはカリナを呼び止めた。
「私のことは気にしないで。カール様のことが好きなら……付き合って?」
カリナは少し驚いて、それから首を振る。
「違うの。私は別に好きな人がいるの。ごめん」
アルマは、ふっと力を抜いた。
「ううん、謝らないで。昨日は付き合ってくれてありがとう」
少しだけ笑う。
「なかなか、うまくいかないものね」
タバサが言う。
「次があるわよ」
アルマは少しだけ考えて、それから言った。
「次は――私のことが好きで、私も好きになれる人がいいな」
一瞬の沈黙のあと、三人は顔を見合わせて笑った。
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乙女ゲームのバッドエンド絵師、ゲーム世界に転生する 〜バッドエンドしかない世界で、運命を捨てる〜




