配信事故で、また億バズした件3
ダンジョン出現から数ヶ月が経過した現在。
この数ヶ月で、娯楽の神はさまざまなアップデートを施した。
冒険者同士のパーティ結成が可能になったのはその最たる物だろう。
あとは、華灯のような兼業持ちも増えた。
当初は【魔物使い】のみだったのが、【剣士】【魔法使い】【盗賊】【神官】といった具合にだ。
ガチャでお助けキャラが出てくる確率も、わずかばかりだが上がっていると聞いた。
それでも、やはりお助けキャラが仲間にいる冒険者は珍しい方だった。
お助けキャラ入手ルートは変わっていない。
ランダム発生するクエストで入手するか、ガチャで手に入れるかのどちらかである。
さて、そのアップデートによってダンジョンに実装されたものがある。
【デッドゾーン】の設置であった。
「ところでデッドゾーンのクエストはクリアしたの??」
とあるダンジョンの前で、華灯は陽祐へ確認した。
アップデートにともないダンジョンの難易度もはっきりした。
子供でも遊び半分で入って戻ってこれるEランクから始まり、D、C、B、Aと上がっていく。
それはダンジョンの入口に表示されるようになった。
最高ランクは【SSSSS】である。
Sランク以上のダンジョン、つまりS、SS、SSS、SSSS、SSSSSランクのダンジョンには【デッドゾーン】と呼ばれる階層が設置された。
デッドゾーンには休憩スペースは無い。
そして出現するモンスターが、尽く強敵レベルなのだ。
休憩スペースが無い代わりにボス部屋があり、ボスを倒さないと上の階層へ行けない仕組みとなっていた。
このデッドゾーンで死ぬと、休憩スペースには戻らずそのままとなる。
つまり、誰かが助けにきて蘇生しない限り野ざらしとなり朽ちるに任せるしかなくなるのだ。
ボス部屋で死ぬと、部屋の前で野ざらしとなる。
「一応」
ほかのクエストを終えた直後に、【デッドゾーンを攻略せよ】というクエストが配信されたのだ。
さっさと終わらせたかったので水筒を駆使し、さらにエリー、オリヴィアとともに世界でいち早くデッドゾーンを攻略したのは陽祐である。
たまたま配信も掲示板実況もしていなかったので、このことを知っているのは政府くらいだった。
デッドゾーンの情報だけが出回り、今では名をあげるための無謀な挑戦者があとを絶たない。
ダンジョンのランクが上がる毎に、デッドゾーンの攻略難易度も上がる仕組みだ。
「それでオワコン扱い??」
「マスコミの取材とか、ほんとうに大変だったんだよ」
しつこい取材から逃げ回り、ほとほと嫌気がさした。
とにかくクエストを受けてクリアするが、最低限の報告に留めるようにした。
政府に時折、国民向けの説明として配信しろと言われた時だけ、配信をするようになったのも原因だろう。
そうやって細々と活動していたら、冒険者、あるいはアイドル冒険者が出てきてあっという間に陽祐のことは忘れ去られた。
おかげで気楽に、もとの生活に近い日々を送れるようになった。
「ほれ、見てみ」
陽祐は携帯端末を操作して、とある【まとめ掲示板】を出す。
そこには陽祐含め、初期の冒険者のことがボロカスのように書かれていた。
【すぐに消えた冒険者リスト】なるものもある。
陽祐はそのトップ3に入っていた。
「相変わらず、ゴミ溜めというかドブ川みたいなとこねぇ」
「まぁ、場所によるんだけどさ。
あとスレのジャンルとか」
携帯端末を仕舞い、陽祐はこれから潜るダンジョンを見た。
とある田舎町にある、SSSランクダンジョンである。
アップデートにともない、新しく出現したダンジョンであった。
代わりにいくつか消えたダンジョンもある。
このSSSランクダンジョンのデッドゾーンは、今のところ誰もクリアできていないらしい。
クリアされたところで、冒険者は何度でも挑戦できる仕様になっている。
「とりあえず、今回はここに挑戦ってことか」
「そ、話題性重視」
華灯から配信の打診があったのは昨日である。
今日も陽祐のバイトが休みと知って、善は急げと昨日の今日で配信することになったのだった。
「それにしても、なんか人多くないか?」
服装からして明らかに一般人が多い。
イベントでもあるのかと疑いたくなるほどだ。
「あー、なんか人気パーティもこのダンジョンに挑戦するらしいよ。
よく知らないけど。
あ、ほら来た」
人混みから歓声があがる。
見れば、昨日の朝のニュースに出ていた顔が見えた。
世界最強パーティのリーダー、東雲優奈である。
仲間たちが彼女に続く。
そうして、ダンジョンへ入っていく。
東雲優奈達の姿が消えると、一般人たちは携帯端末を取り出して動画配信を見始めた。
「あの子らも配信するのかぁ。
日取りミスっちゃったなぁ」
と、言いつつ華灯もダンジョンへ向かう。
陽祐はそれに続き、エリーとオリヴィアもそのあとを追うのだった。
そんな4人に気づいた一般人達が、嘲笑する。
「うっわ、命知らずがいた」
「馬鹿だ馬鹿がいる」
「なにあいつら、お助けキャラいんの??
でも知らねぇ顔だな」
「ガチャで手に入れて見せびらかしにきたんだろ」
「無名のやつらにゃ、お助けキャラなんて宝の持ち腐れだろ」
しかし、一人だけ、
「なんか、どっかで見た顔だな」
と呟いたのだった。




