配信事故で、また億バズした件2
「解雇された?!」
呼び出された先の喫茶店で、陽祐は驚きで声を上げた。
エリーとオリヴィアは、予定通り母と出かけているので、ここに来たのは陽祐だけである。
ちなみに、華灯が飼うことになってしまった【ミィ】は、店の外で電信柱にリードで繋がれ大人しくしている。
通りがかる人が時折、少し驚きつつ見ていく。
いまや、こんな光景も珍しくなくなりつつあった。
通行人の中には、スライムにリードをつけて散歩させている者がいるくらいだ。
「そう、クビになっちゃったんだよねぇ。
一ヶ月前に」
解雇理由は、やはり冒険者活動が仕事に影響するからというものらしい。
それも、自主退職の扱いとなってしまったらしい。
加えて、
「私の場合、冒険者活動での収入があるから失業保険貰えないの確実でさ」
「そ、そうなんだ」
「そう、アレってあくまで働けるけど仕事が見つからない人向けの制度だから」
仕事は見つからなくても、冒険者活動は出来ていてそちらの方の収入があるとなれば、失業保険は貰わなくていいよね、という判断らしい。
「冒険者活動って、就職活動をする上ではめちゃくちゃ足を引っ張るみたい。
理屈はわかるよ?
たしかに私は、冒険者活動で収入もある。
失業保険とか、そういうセーフティネットは、もっと困ってる人達に使われるべきだって。
でも、私の場合、冒険者活動は巻き込まれた末のことで。
それで食べていこうなんて、欠片も考えてなかった」
冒険者の収入、稼ぎ方は、現在は多岐にわたる。
基本は手に入れたアイテムを、ダンジョン内のコンビニで換金したり、ダンジョンの外で専門の取り扱い業者へ卸したりなどだ。
他にはタレントのように事務所に所属し、スポンサーを得てCM等に出演したり、動画を配信して広告収入を得る。
これまた動画配信時に、投げ銭と呼ばれる視聴者からの課金などだ。
「でもこんなことになったからには、色々考えなくちゃいけなくてね。
ミィの食費とか、家賃、あとは来年払う予定の税金……。
あー、健康保険とかもね。
とにかく、冒険者活動で稼いでいくしかなくなって」
「えっと、就職活動はもうしないの??」
「この三週間で、現実を思い知らされた」
冒険者活動をしている、というだけでお断りされまくったらしい。
冒険者の数は増えているものの、それでも一般人の方が多いのだ。
なんなら、冒険者活動を理由に解雇する事例が増えつつあり問題視されているとか。
ようはクエストで休まれると、それをカバーする人達がいる。
カバーする人達は不満を募らせる、という負のスパイラルが起こっているのだ。
それはつまり、会社という枠組みの中では輪を乱す行為にほかならない。
会社は仕事をする歯車として雇っているのだ。
その本来の目的の仕事ができない、となればお役御免を言い渡すのは仕方の無いことだった。
そして、事前に歯車として不良品かもしれない、となれば選ばれることはなくなる。
「満足に仕事ができないかもしれない人間を雇うのは、リスクだからね。
もしかしたら、この辺もこれから制度が整っていくんだろうけど。
けどそれは今じゃない」
そこで華灯はコーヒーをグイッと飲み干した。
「制度が整って、救済措置が取られるとするなら死人が出た時だろうね。
生贄がでて初めて世界は動くから」
冗談には聞こえなかった。
そういうことは多々あるからだ。
オリヴィアの存在の有無とか、ダンジョンから持ち帰ってくるアイテムで蘇生や、回復できたとしてもである。
誰も助けてくれない絶望に、最悪の選択をする人はおそらく出てくるだろう、というのが華灯の考えであった。
「とにかく、私はそんな最初の一人にはなりたくない。
生活費諸々稼がないといけないから。
やれることはなんでもやろうって決めたの。
ミィにひもじい思いはさせたくないし」
そして、ここから本題だった。
「だから、陽祐に協力してほしいの。
率直に言うと、本格的に動画配信を始めるから陽祐達には客寄せパンダになってほしい」
「え~。
オワコンとかネットで言われてるんだけど、俺」
「それでも、お願い!
ちゃんと、その分のお金は払うからさ!」
拝み倒されては、さすがに断れなかった。
「わかった。
でも、お金はいらない」
陽祐は、変なところでお人好しなのである。
お金で困っている人間から、取り立てるようなことはしたくなかったのだ。
しかし、
「だめ!
こういうのはちゃんとしなきゃいけないの。
私は、陽祐達を利用する。
利用料金を払う。
仕事をしてもらうんだから、ちゃんと対価は払わないと」
と、ゴリ押しされてしまうのだった。




