今後のこと.
掲示板にて、とりあえずミノタウロスを倒したことを書き込んで実況を終えた。
世間では陽祐の動画が途中で終わってしまい、再開されずに何故か掲示板での実況に移っていたのもあってそこそこの騒ぎになっていた。
しかし、起きたこと全てを報告するわけにもいかなかった。
「とくに、私の存在がまずいよね〜」
おー、よしよし、とテイムしたミノタウロスの頭を撫でながら華灯が言う。
ミノタウロスは、まるで猫のように擽ったそうに華灯に撫で回されている。
華灯はこのダンジョンが出現した世界において【死者蘇生】で蘇った、おそらく世界初の存在だ。
死者が蘇る、復活する。
それは、本来有り得ないことだ。
「自衛隊の人達も、口止めを忘れるくらいには混乱してたし」
「それもだけど、ミノタウロスをテイムした事もどこまで報告したものか」
政府には報告するつもりだが、それより先に動画やSNSで公表していいかというと、やはり躊躇われる。
他の冒険者が、オリヴィアを手に入れればいずれ公になることとはわかってはいる。
それこそ動画配信で広まるだろう。
「レベルが上がったのはよかったけどねぇ」
華灯のレベルは大幅にアップしていた。
華灯だけではない、陽祐、エリー、オリヴィアの三人も上がっている。
陽祐はレベル50に、エリーとオリヴィアはレベル60に、華灯はレベル40に上がった。
「うん、私としてはこれだけ一気にあがったなら言うことなしだよ。
厚かましいお願いしてごめんねぇ。
ほんと助かったよ。
ありがとう陽祐」
水筒さん、と言われなくなった。
「いや、別にお礼を言われるほどのことじゃ」
「まぁまぁ、こういうのは素直に受けとっておきな。
とりあえず、死者蘇生については黙ってた方がいいかなぁ。
ストーカーさん達のこともあるし」
「でも、華灯が生きてるとバレたらまた襲撃されるんじゃ?」
「それもねぇ、どうだろう?
陽祐はさ、殺したと思った相手が生きてたらどう思う?」
「え、うーん?
不気味に思うかな」
「だよねぇ。
でも、現状としてはオリヴィアの技能は広く知れ渡ってるし、ダンジョンでの入手アイテムのこともある。
だから、すぐにピンと来るはずなんだよね。
ダンジョン関連で蘇ったって。
死者蘇生のことは遅かれ早かれバレると思うけど。
どちらにせよ、やっぱり調べるよね。
調べて、すぐに君たちのことに襲撃者たちはたどり着くと思う。
問題はそのあと」
「あと?」
「私が蘇った秘密を探ろうとして、まずどっちに接触すると思う?」
「それは」
「まぁ、まず一度殺した私のはず。
だって、向こうからしたら私は冒険者になりたての弱いヒナでしかないわけだし」
そのヒナには、いまミノタウロスが付き従っている。
お助けキャラがいたとはいえ、手こずった相手だ。
華灯は、エリーを見た。
「エリー、ミィはあの時の襲撃者に遅れをとるとおもう?」
【ミィ】というのがミノタウロスの名前らしい。
猫みたいな名前である。
「ありえないですね」
エリーは即答した。
「よし、じゃあ襲撃者たちは【ミィ】に任せよう。
いい、ミィ?
私を狙う悪い人たちがきたら、その棍棒で叩いてミンチにするんだよ??」
怖いことをさらりと言っている。
華灯は一度殺されたことで、踏み越えては行けないラインをあっさり超えてしまったのかもしれない。
ミィが、
「ぶもっ!!」
と力強く頷いてみせた。
「とりあえず、死者蘇生のことは政府にだけ報告しようよ。
混乱を避けるためにも」
華灯の提案に、陽祐は頷いた。
「じゃあ、ミノタウロスをテイムしたことは?」
「それも、政府にだけ報告しよう。
陽祐には証人になってほしいから、そのつもりで」
「わかった」
それから、華灯はコンビニを探しにさらにダンジョンの奥へ進んで行った。
目的のひとつだったレベル上げが出来たからだ。
一方、陽祐達は帰路についた。
政府への報告をまとめたかったのだ。
数日後。
ミノタウロスがテイムされたというニュースが駆け巡り、世界に衝撃が与えられた。
というのも、とある冒険者宅に強盗が侵入し、テイムされていたミノタウロスによって叩いてミンチにされたからだった。
この事件の捜査協力の要請があり、陽祐はオリヴィアを伴って警察署に赴くこととなった。
ミンチになった強盗達を甦らせるためだ。
この件もあり、【死者蘇生】については政府から世界に向けて発表された。
ほぼ時を同じくして、各地でオリヴィアを手に入れた者が出始めた。
そのため、混乱は一時だった。
不幸中の幸いである。




