ミノタウロスは何処( 'ω')?7.
「え、いいんですかぁ??」
鉄パイプを譲る件について打診すると、華灯はとても嬉しそうに表情を綻ばせた。
何も知らなかったら、少し好意を抱いたかもしれない。
本当になにも知らず、この笑顔に触れていたらちょっとドキっとしたかもしれない。
文字通り、華灯の別の顔を知ったがため、陽祐はドキっとはしたが別の意味でのそれだった。
「いいのいいの、遠慮しないで。
武器は必要だよ」
と、陽祐はもっともらしいことを口にする。
まるで、クマかウサギの可愛いぬいぐるみを抱くかのように鉄パイプをぎゅうっと握りしめ、華灯は陽祐へ礼を言った。
突っ込んだ穴について考えなければ、本当にただの鉄パイプだ。
そう、使いかたを思い出さなければ。
それから、何度か戦闘を繰り返し、華灯のレベルが上がったことを確認してから休憩スペースへと向かった。
ガチャを回す。
武器はやはり竹刀や鉄パイプが出た。
変わり種としては、トンファーや木製パチンコが出た。
木製パチンコは別名スリングショットと呼ばれる、Y字型の枠にゴムを張って玉を飛ばすアレである。
華灯の武器が鉄パイプひとつでは、やはり心もとないだろうと考え、話し合った末、出てきた鉄パイプと竹刀も彼女に譲ることとなった。
本人は遠慮していたが、予備はあった方がいいと考えたのだ。
これ以上、在庫をダブつかせたくないという考えもあった。
魔法袋につっこんでて嵩張らないとはいえ、なんとなく増やしたくないな、という考えからだ。
他には、武器にさらに装備させると付与効果のあるアイテムが出た。
「これは、リボン??」
【効果付与リボン】というそのままの名称のリボンである。
それは可愛らしいデザインのリボンだった。
説明書きを確認したところ、どうやら複数種類あるらしい。
色も効果もさまざまだ、ということがわかった。
このリボンは、武器の攻撃力を底上げしてくれるらしい。
メダル一枚のガチャを何回か回して、二つ出たのでこれもひとつは華灯にあげた。
どうせなら、と陽祐は水筒に結びつけてみた。
華灯も鉄パイプに結びつけている。
どちらもファンシーな見た目となった。
水筒のステータスを確認する。
―――――――――
【名称】水筒
○Lv:125
○装備時攻撃力:+1000
○単体時攻撃力:+10000
―――――――――
「おぅふ……」
思わずなんとも言えない声が漏れた。
配信していたならコメントが大盛りあがりだった事だろう。
陽祐はこの事を掲示板で報告するか考えて、やめた。
どうせ最初から偽物扱いされているのだし、この水筒の画像を貼り付けたところで、AIで作った画像だと思われて終わりだ。
今更、本物扱いされても反応に困る。
「うっわ、凄っ!」
水筒のステータスを消そうとしたら、いつの間にか覗き込んでいた華灯が言った。
それから、陽祐から譲り受け、ゴブリン達のケツ穴を蹂躙し尽くしたリボン付き鉄パイプのステータスを見る。
陽祐にもそれは見えた。
―――――――――
○レベル:5
○装備時攻撃力:+10
―――――――――
数字の桁が違いすぎる。
「はぇー、やっぱり世界最強レベルになるとアイテムの質も違うんですね」
と、華灯は感心しきりだった。
「ただの水筒なんだけどなぁ」
ホームセンターで売られていた、本当にどこにでもある水筒でしかないのだ。
このあと数回、メダル一枚のガチャを回した。
出てきたのは噂通り、通常のポーションが多数だった。
あとは技能回数回復ポーションが三つと、中級ポーション、上級ポーションがひとつずつだった。
それから二人は、二階層、三階層と順調に進んでいく。
他の冒険者とはやはり遭遇しなかった。
不人気、というのは本当らしい。
四階層、五階層、六階層とモンスターを四人で倒し、ガチャを回し途中で昼休憩も挟みつつ進んでいく。
コンビニとミノタウロスには遭遇しなかった。
そうして、気づけば十五階層へと足を踏み入れていた。
「?!」
「うぇ、なにこれ?!」
足を踏み入れた瞬間、空気が重苦しくなる。
寒気まで感じる。
陽祐と華灯は驚きで、足が止まってしまった。




