ミノタウロスは何処( 'ω')?3
生首とほかの身体のパーツは、エリーが魔法袋の肥やしになっていた【癒しのローブ】に包んだ。
それから、ようやく陽祐はオリヴィアの体を張った目隠しから解放された。
その時だ。
自衛隊の隊員たちが何事か、と現れたのだった。
赤黒い血が滲むそれを見ながら、陽祐とやって来た自衛隊員達はエリーから説明を受ける。
おそらく、生首の主は陽祐と同じ冒険者であること。
冒険者同士のいざこざか、以前掲示板で情報提供された裏社会の人間絡みによるトラブルではないか、との事だった。
「な、なんで、わかるの??」
怖々、生首の包まれたローブを見ながら陽祐は聞き返す。
それに答えたのは、オリヴィアだった。
「すぐにエリーが走っていって、こう、ポカポカって剣でどつき回す音が聞こえてきたじゃないですか。
あれ、この人をこんな形にしちゃった犯人たちだったんですよ」
状況から、すぐにそのことに思い至ってもいいはずだ。
しかし、陽祐にとって生首だの、刃傷沙汰だのは非日常すぎる事態で頭がなかなか働いてくれない。
だから、わかりきっていること、考えればすぐに思いつくことでもひとつずつ確認し、飲み込まなければならなかった。
「えっと、その犯人たちはどうなったの??」
「殺したの??」
陽祐は遠回しに、オリヴィアは直接聞く。
自衛隊員達の視線がエリーへ集まる。
「相手は四人程のグループでした。
事態が事態なので、この国の捜査機関への通報もしなければいけません。
なので、全員気絶させました。
今後のためにもその方がいいと判断したんです」
殺していないことに、陽祐はホッとする。
それは隊員達もだった。
それなら、犯人たちから事情を聞ける。
「よかったぁぁあ」
しかし、エリーの顔色は悪い。
「エリー、報告はちゃんとした方がいいわよ」
オリヴィアが言った。
「?」
陽祐と隊員たちの顔に疑問符が浮かぶ。
「新たな仲間が現れて、逃げられてしまったんです。
その仲間が、複数人で転移できる技能持ちか、アイテムを所持していたらしく」
「そうなんだ」
事情を知った隊員たちは、なにやら相談し合う。
その横で、オリヴィアがポンっと手を叩いた。
「あ、そうだ!
主、この人に直接話を聞きましょう!」
「は?」
陽祐と自衛隊員が不気味な者を見るような顔をする。
しかし、オリヴィアは気にした様子は欠片もない。
むしろ、のほほんと続ける。
「お忘れですか?
私のステータス?」
そこで、すぐに思い出した。
【死者蘇生】という特殊技能を、彼女は持っているのだ。
つい先程のことだったのに、すっかり失念していた。
「お願いできる??」
「もちろんですよー。
身体のパーツもある程度揃ってるし、これならすぐ蘇生させられます」
と、そこで陽祐はようやくエリーがなぜバラバラ遺体のパーツを持ってきたのか理解した。
これを見越していたのだろう。
エリーは、ダンジョン以外で技能を使うところは見たことがない。
オリヴィアもだ。
家族が軽い怪我をしても、持っているポーションでなんとかできていたというのもある。
今のところ、この二人しかお助けキャラがおらず、それも陽祐のところにしかいない。
だから、ダンジョンの外で何ができて、もしくは出来ないのかがわからない。
けれど、もしかしたらお助けキャラたちは、主が命令しない限りは基本的にダンジョン外で技能を使えないようになっているのではないか。
だから、オリヴィアはわざわざ自分の技能のことを持ち出した。
勝手に使えばいいのに、使用許可を求めた。
主が困っている時に助ける、だから【お助けキャラ】ともいえる。
今回の場合は、陽祐が何が起こって被害者が生首となってしまったのかわからず、困ってしまった。
だから、提言したのだろう。
オリヴィアが何も言わなかったら、もしかしたらエリーが言っていたのかもしれない。
エリーとオリヴィアが、陽祐達に見えないようローブを広げ、その下に遺体を並べる。
準備が整うとオリヴィアが杖を掲げる。
魔法陣が出現し、ローブを包み込むように発光が始まる。
オリヴィアがすぅーっと息を吸い込んで、一気に吐き出しように叫んだ。
「【死者蘇生】!!」
魔法陣が消え、発光もおさまる。
モゾモゾとローブが動いた。
ガバッと、ローブの下から全裸の少女が現れた。
「え?ここ?
わたし、あれ??」
少女はキョロキョロと戸惑って、その場の全員を見た。
「クシュッ、さむ。
って、えええ?!
なんで裸!?」
混乱する少女へ、オリヴィアが近づく。
「大丈夫よー。
ちゃんと話すからねぇ。
はい、とりあえずローブを羽織ってね」
こうして被害者は蘇ったのだった。




