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9.冬休みの約束

「そのうち声が聞こえるようになるかも知れないし、ならないかも知れない。なぜなら、兄貴は段階を踏んで覚醒したわけじゃないからだ」

「冬休みに帰省したら、お父さんに相談しようと思う」

「お父君に?」

「うん。お父さんもアビリティは鑑定なんだ。田舎で町医者をしているけれど」


 ジオが、しばらく考えているようだったので待っていたら、驚くことを言い出した。


「俺も話を聞いてみたい。一緒に行かせてくれないか? それと帰省前に俺の家にも来て欲しい」

「それって……」

「どうとってくれても構わないけど、兄貴に会ってほしいと思う」

「うん、わかった」


 そうして私たちは冬休みの約束を交わした。




 寮に帰ってから、私は両親宛の手紙を書いた。アビリティについて詳しく話したいこと、友達を連れて行くから部屋を用意してほしいこと。それから学園のパフェがおいしかったこと、争奪戦には参加していないことなどを書いた。


 私の家は、学園のある首都オーピリアから汽車でまる1日かかる田舎で、旅行でも首都に来たことはなかった。

 貧乏でもないが裕福でもない我が家で、オリュンピアス魔法学園に私が進学できたのは、優秀な子を集めるために学費を抑えるなど細かく豊富な奨学金制度があるからだ。


 お父さんとお母さんも魔法学園で出会ったと聞く。お父さんのアビリティは知ってるけど、お母さんは知らないな、学園生活も聞いてみたいなと思うのだった。


 ジオを連れて行ったら驚くだろうなぁ。同行の友達が男の子だと書く勇気はまだなかった。




 ジオが侯爵家の力をほのめかしたせいか、あれから嫌がらせのようなことはなかったけれど、遠巻きに見られるようになった。

 ミネアは変わらずいてくれたから、寂しくないけどなんだかなぁとは思う。


 先生たちは、知ってか知らずか相変わらずだ。落ちこぼれまでいかないけれど、決して良い成績が取れない私に、追加の課題をくれる。あんなに嫌だった課題をありがたく感じるようになったのは複雑な気持ちだ。


 魔法歴史学の課題に頭をひねっていると、ジオが教えてやろうかと、やってきた。


「赤点とられると困るしな」


 一言多い! 確かに冬休みが短くなると困る。放課後に数時間だけ学園の外に出ることにした。友達を連れてくるとジオが言うので、私もミネアと行くことにした。


 ジオが選んだ店は、ログハウスを思い出すような木目が可愛い外観の赤い屋根の、大通りからそれたところにあるカフェだった。

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