8.交際宣言?
ガタリっ
席を立ったジオが、険しい顔をして
「……誰と!?」
と言い出した。強い視線に目が反らせない。
「ヴェレーノ先生よ。薬学の授業で、手を添えて教えてもらったときと言うか」
「……そうか」
椅子を戻して、あからさまにホッとした顔をするものだから、ミネアが騒ぎ出した。
「どゆこと? どういうことなの?」
洗いざらい、話せるわけないじゃないの! 困っていたらジオが爆弾を投下した。
「俺たち、付き合うことにしたんだ」
「い、いつそんな話になったのよ!?」
「きゃーー、ラーラったら教えてくれても良かったじゃない」
聞き耳を立ててる周りも含めて騒然である。
ジオさんや、フォローになってないし、何なら事態が悪化してないかしら。
「だから、ラーラに危害を加えるやつがいたら、侯爵家が許さない」
静かなのに遠くまで響く声だった。
そうして、なし崩し的に、私達は公認の仲になった、らしい。
「責任は取らなくていいって言ったのに。」
誰にも聞こえないように悪態をついた。
放課後、ジオに誘われて学園の外のカフェに向かった。木枯らしが吹いていて、すっかり冬だった。学園はドーム型に薄く結界が張られていて、割と快適だったから季節を強く感じて感慨深い。結界は悪意のある人が出入りできなくなっている。
カフェに行く前には、雑貨店でショールをプレゼントしてもらった。カフェは白い建物の可愛いお店で、個室が予約されていた。
いつの間に!?
「ケーキにする? それとも今日もパフェ?」
「なんだか迷うわね」
「じゃあオススメをいくつか見繕ってもらおう」
その選び方がもう、お貴族様よね、と思ったけれど奢ってくれるものは食べようと気合を入れた。
しばらくして、紅茶と小さめのケーキが3個と小さめのゼリーとベリーソースの掛かったアイスクリームがバランス良く乗ったプレートがテーブルに置かれた。
「か、かわいい! 美味しそう」
ジオの前にはコーヒーとサンドイッチ。甘いものは苦手なのかしら? こんなに美味しいのに、人生損しているわね。
溶けてはもったいないとばかりに、私はアイスクリームから手を付けた。
「ん〜、幸せ」
「そりゃ良かった」
緊張が溶けた顔でジオは穏やかに笑っていた。
「それで、ヴェレーノ先生の心が読めたって?」
「そんなすごいことじゃないわ、緊張してるとか嬉しそう、みたいな感情がほんのり伝わって来ただけよ」
「今までからそんなことが?」
「前にミネアと手を繋いだときは、そんなことなかったから練度があがったんだと思う。
このまま、もっと練度があがるとしたらどうなるのかしら」




