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7.ポイズンレッスン

 微妙な気分のまま受けた最初の授業は、担任のヴェレーノ先生が担当する薬学だった。初級ポーションはアビリティに関わらず、誰でも作れる。


 誰でも作れるはずだけれど、魔力を使う以上集中は必要で、昨日からの怒涛の展開についていけない私には、難しかった。


「ラーラさん、ボクの授業ちゃんと聞いてた?」


 今年、新任でやってきたヴェレーノ先生は、中等部の私達と並んでも生徒と間違われそうなくらい、若くて小柄で可愛い。自分のことをボクと言うのもチャームポイントだ。


「聞いてるけど、なんだかうまくできないんです」

「じゃあ一緒にやってみようか」


 ヴェレーノ先生が私に手を添えた。言葉は聞こえないけど、意気込みのような感情と不安と優しさの入り混じった、複雑な気持ちが流れ込んできた。


 先生の優しさにほっこりはしたけど、やはりポーションへはうまく魔力が伝わらず、先生の魔力で毒薬が完成してしまった。私は鑑定できるから間違いない。


「先生、飲んじゃいけないものが出来ました……」

「ぼ、ボクが預かっておくね」


(廃棄しないんだろうか)


 素朴な疑問はチャイムの音に掻き消された。




 それにしても、困ったわ。特別練度をあげようとは頑張ってこなかったアビリティの範囲が広がったことを、認めなくてはいけない。


 容易に人に触れない方がいいかも知れない。今まで知りたいものを見るだけしかして来なかったから、勝手にダダ漏れてくる情報の処理の仕方がわからない。


 悔しいけれどジオに相談するしかないのかな?


 そう言えば、お父さんもアビリティは鑑定だったんじゃないかしら。夏休みはたいした話もしなかったから、冬休みは話せるといいな。


 上の空のまま受けた魔法歴史学の、小テストの結果は最悪だった。


 昼休み、ミネアと食堂に行こうとしていたら、ジオがやってきた。大丈夫かと聞かれたけれど、授業中に何かあったらそれこそ大問題だ。バトルの激しさとは裏腹に、エリート校だけあってマナーと規則は厳しいのだ。


「昼飯、一緒に行っていい?」


 ジオがそう言うと、興味津々なミネアを抑えることが出来ずに、ジオの申し出を断ることが出来なかった。


 食堂では丸テーブルの席が空いていたので3人で席につく。私はパンとハンバーグのセットにした。ミネアはカレーライスで、ジオは魚のポワレのセットだった。


 留学生が多くいる学園の食堂は、メニューが豊富だ。田舎に住んでいた私は、ライスなんて学園に来て初めて食べた。カレーライスはミネアのお気に入りだ。


「何か心配事が? 浮かない顔をしてる」


 ジオが切り出した。


「もう、あなたのせいで心配事だらけよ。注目されたままだし、人に触れたら……」

「触れたら?」

「その人の感情のようなものを感じたわ」

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