6.暴露ダメージ
翌日、早めに起きて朝食もそこそこに学園へ行った。なんとか無事に学園にはたどり着いたけれど、避けることは出来なくて、それは始業前の教室で起こった。
「あなた、昨日アシュワース様とご一緒していたけれど、どういうつもり?」
やっぱり、来たわー。取り巻きを3人連れた女の子を見て、私はげんなりした。
「ファンクラブにも入ってないのに、アシュワース様と話すってありえないわ」
「その理屈の方がありえないわぁ。アレクシア・レメアス様」
軽く鑑定をかけて名前を見る。E組の伯爵令嬢らしい。伯爵令嬢らしく、婚約者がいる……みたい?まあジオが好きみたいだけど、ダメよね。
「どうしてファンクラブとかやってるか知らないけど、今日のこと婚約者さんのフランヴェル様に伝えようと思うわ」
「なんで……!!」
途端に青ざめた顔になるアレクシア。私は目線をずらして、取り巻きAを見据える。
「あなたの場合は、あなたが慕うアスターくんにでも話を聞いてもらおうかしら」
次は取り巻きBに視線を移す。この時点で4人ともの顔は青を通り越して真っ白だ。敵の情報ぐらい調べて来なさいよ。そう言えばメイドさんにダメージが強いって言われたわね。
「あなたなんて平凡な平民のくせに!」
捨て台詞を残してアレクシアが去っていった。そんなのわかっているわよ。ブロンドじゃなくて赤みをさしたオレンジの髪はくせ毛でまとまらなくて、明るめの水色の瞳は少しぼやっとして、パッとしない印象だ。丸い目を彩るまつげは長いし、そこそこに整っていると思うけど、いかんせん地味なのだ。
パチパチパチパチ
拍手をする音が聞こえたので、アレクシアが出たのと別のドアの方を見ると、ジオが壁にもたれてこちらを見ていた。
「助ける必要がなくてびっくりだよ」
ジオが来たら余計ややこしくなるでしょうがと思いながら、睨んでみた。
「あいつらがアビリティを使わなくて助かったよ」
たしかに!!!
「あんな人たち、あと何人いるのよ」
「さぁ……なぁ……」
降ってわいた災難に頭を抱えるのだった。
魔法学園には貴族もいるけど、実は大多数は平民だ。
こんな中で、アシュワース家は鑑定するまでもなく、誰もが知る侯爵家で政治家一家だ。名簿を見るまで知らなかった私が世間知らずだけれど、侯爵家とお近づきになりたい人は多いだろう。顔もいいし!
なぜそんなジオに興味を持たれたのかわからないけど、ジオのお兄さんと関係があるのかなと、こっそり思ったのだった。




