3.争奪戦
しばらくぼうっとしていたら、友達のミネアがやってきた。
「いやぁ、またダメだったわ」
まあ、そうだろうね。ミネア・カーリィーの能力は雷系で、微弱な雷撃が出来るだけだ。私よりは攻撃性があるけど決して強くない。あのツワモノ揃いの闘いで勝者になれるわけがないのだ。
いい加減、争奪戦に出るのやめなよ、と言いかけて口をつぐむ。
「聞いてよ、ラーラ!」
「聞いてる聞いてる」
「カルネくんたら、どんなに攻撃しても、うちの方には反射してこないのよ」
琥珀色の瞳を輝かせながらミネアが話してくる。薄桃色の髪とあいまって、見た目はふわふわ系の守ってあげたい女の子だ。
「私の顔は覚えてくれたかしら」
「覚えてる覚えてる」
(そもそもクラスメイトだし)
クラスメイトのカルネ・ジオードの能力は攻撃を跳ね返せる。跳ね返る向きはカルネくんの狙い通りだ。優しい彼が女の子に攻撃するわけがないけれど、ミネアをいなしながら、他の人と戦うのは大変だろうなぁと、ひっそり同情した。
もはや目的と手段がおかしくないか、と思うけれど、ミネアの行動力は羨ましく思うし眩しい。
入学式の時に、校長先生は『ハズレのアビリティはありません』と言っていたけれど、アビリティの強さにはやっぱり差があって、私達はまともにバトル系の争奪戦には参加できない。
と言っても軍部に行きたいわけじゃないから良いんだけどね。
「今回は誰が勝ったの?」
「んーっと、なんて言ったっけな、刀持ってた女の子。見てなかったの?」
「えっと……」
ジオとのやり取りを思い出して、目が泳いでしまう。ミネアは話すのに夢中で気づかないので助かる。
「……つーか、刀振り回すってズルくない?」
「確かにって言いたいけど、大きな石を投げつける人とか、炎の槍を投げる人もいるんだから、武器くらいそんなに意味ないんじゃない?
だいたいミネアだって雷を好きなところに落とせるんだし」
ぐっとミネアが言葉に詰まった。
「それで。珍しくちゃんと見てなかったのは何かあったの?」
気を取り直したミネアに聞かれて、どう答えていいか迷った。
「隣のクラスのジオって知ってる?」
「あの、スラッとした黒髪のモテそうな男の子?」
「そう、そいつ! そいつに声かけられて……」
声が小さくなる。
「で、仲良くなったの?
ラーラの好みと違う気がしたけど」
「この……み。いや、それはそういうんじゃなくて」
また思い出してしまう。顔が熱いからきっと火照ってる。
「ふぅん、いがぁーい」
「違うわよ。そもそも、私から声をかけたんじゃないわ」
「で、なんて言われたのよ」
「……おもしろい?」
ミネアが笑いだした。
「さすがラーラはおもしれー女ね」




