26.サクラ咲く
東の国から寄贈されたというサクラの咲く頃、学年がひとつ上がって、私達は2年生になった。
今年はジオと同じクラスのA組になって、ミネアはC組でクラスが別れた。
寂しいけれど、休み時間のたびにおしゃべりをしたり、時々は外に出かけたりしている。
先日は、週末にミネアとアレクシアを誘ってランチをした。ふたりには隠したくなかったから、公爵令嬢になったことを話した。学園には届け出たけど、今まで通りのラーラ・ミレミアスとして通うということも伝えた。
「それにしても驚いたわ。ラーラがペンドルトン公爵の孫だったなんて」
「ふたりには今まで通りに接して欲しいの。お願い」
「もちろんよ、友達だもん」
「ええ、もちろん。それに我が家としては公爵家とつながりが持てるなんて願ったりかなったりよ」
アレクシアは、少しおどけて言った。
「そのままアシュワース様と婚約とはね。いずれはと思ってたけど早かったわね」
「アレクシアだって婚約者がいるじゃない」
「私は家の都合で物心ついたときからだもの。しかも名目だけで、ほとんど会わなかったから実感がなかったわ」
年が少し離れたフランヴェル様とは、今では時々会うようになったらしい。交流が少なすぎて実感がわかなかっただけで、よく会うようになるとフランヴェル様の良さがわかったのだとか。
「私は平民らしく、選り好みするわ!」
薄桃色の髪の可愛いミネアなら王子様に見初められる日も夢ではないかも知れない。出会うかは知らないけどね! 学園に来て、素敵な友達が出来て私は幸せだ。
そして5月、またアビリティドリンクを賭けた争奪戦が始まっている。
ミネアは懲りずに参加しているし、少し雷撃の威力が上がって何人かを倒したようだ。リーゼは周りをマグマ砲でなぎ倒している。昨年の今頃は、アビリティを使いこなせなかったリーゼが、マグマを撃ったあと倒れていた。
「みんな成長してるんだなぁ」
単眼鏡を外して、隣のジオを見上げると、微笑んでいた。見上げる……。出会ったときよりジオは随分身長が伸びたのだ。
また前を向いてポツリとこぼす。
「公爵令嬢になっちゃったわ……」
「ラーラが嫌になったら、一緒に逃げよう。卒業したらね」
「そんなことしないわよ」
「そろそろ、ラーラは俺のこと好きになってくれた?」
「そうねぇ」
私はもったいぶって言葉を続ける。
「愛とかはまだわからないけど、ずっと一緒にいたいし、他の人に取られたくないと思ってるわ」
ジオは少し驚いてから、とても優しく微笑んだ。
最後までお読みいただきまして、ありがとうございます。感謝でございます。
鑑定アビリティの件が解決していないのですが、ふたりの恋愛の話として締めさせていただきました。
楽しんでいただけましたら幸いです。
評価もいただけましたら小躍りしちゃいます。
どうもありがとうございました。




