25.大人たちの思い
「うん、秋頃から付き合っているの」
「なぁ、ラーラ。ラーラだけでも公爵家に来ないかい?」
「私は寮に入ってるし、良かったらたまに遊びに来るわ!」
「そうじゃなくて……」
お祖父さんが言葉を探している。
お母さんがハッキリと言う。
「お父様が言っているのは、ラーラの籍を公爵家に移さないかと言う話なのよ。
もうお母さん達はメイフィルで生きるつもりだけれど、ジオくんと付き合い続けるなら、悪い話じゃないと思うわ」
「ジオと……」
ジオとの未来はまだ具体的に想像したことはなかった。ジオは……
ジオの方へ視線を向ける。小さく、けれど力強く頷くと、
「今、決めなくていいんだよ。突然のことだし。俺はラーラと生きていければ、どちらでもいいし、そもそも降って湧いた話だ」
(ジオ……はずっと決めてたんだ)
「ちゃんとプロポーズされてないわ」
照れ隠しで可愛くないことを言ってしまう。早いわって言うのは飲み込んだ。
ジオは、私のところまで来て片膝をつくと、優しく手を取った。
「ラーラ、卒業したら俺と結婚してください。花も指輪もないし、こんな形ですまない」
「ジオ……」
わかっていたのだ。ドレスがたくさんあって、マナーを習って。すぐに貴族は無理だと思わずに、どちらでも選べるようにしてくれていたのだ。私はまた泣いてしまった。
「私も……ジオと……いっしょに……いたい。結婚する」
「うん、ありがとう」
「お祖父さん、私、もっとジオに相応しくなりたい」
見渡すと、侯爵様は意外にも優しく頷いていた。企んでいたのかと思っていたけど、それだけじゃなかったんだとわかる顔だった。
お祖父さんも、また泣き出した。カオスだ。カオスだったけど、それは幸せな空間だった。
「ちゃんと婚約が決まって良かった。もう既に同じ部屋で過ごしていると報告があがってたからの……」
お祖父さんの声にびっくりした!
「何もないわよ、いくつだと思ってるのよ!?」
やっぱり影はいた!?
「ジオもやるなぁ」
侯爵様が吹き出していた。この人はわかってて言ってる! 私は戸惑いながら顔を真っ赤にするしかなかった。お父さんは驚いて焦っている。
釣られ笑いしながらもジオが言う。
「もう決めていいの? 公爵家の跡取り」
「だって、ジオがいるんでしょ」
「もちろん」
侯爵様はここでニヤリと笑った。
「我が家の教育は厳しいからな。ジオは有能だぞ」




