24.お祖父さんとお祖母さん
寝付きは悪かったものの、ぐっすり眠れた私は、メイドさんと侍女さんのふたり組に起こされた。自分の心臓の強さにびっくりだよ。きっともう驚き尽くしたからだと思う。
今日の私はペールグリーンのドレスにエメラルドのネックレスとイヤリング。髪はシンプルにハーフアップで、年齢に見合ったナチュラルな感じだ。
父と母は侯爵様の服と亡き夫人のドレスを借りていた。サイズがごまかしやすいデザインを侍女さんが選んだらしい。
「訪問するときは形から入るのも大切だよ」
侯爵様は不敵に笑った。そうして私達は2台の馬車で出かけることになった。
たくさん話すことはあるはずだけど、私達家族は緊張で馬車では何も話さなかった。
ほどなく、ペンドルトン公爵邸に着いた。もう何も驚くまいと思っていたけど、窓から見えるとても大きいお屋敷の門の前には老夫婦がいたのだ。
お父さんが先に降りて、お母さんが降りるのに手を差し伸べる。気がつくとジオが馬車の扉の前に来ていたので、手を添えて降りた。ジオの気持ちが伝わってきて緊張が解けた。
私の足が地面につくのを待っていたかのように、声が聞こえた。
「ラーラ!」
「やっと会えた」
お父さんとお母さんが少し避けて、ジオが私の背をゆるく押す。お祖父さんとお祖母さんがやってきて私の手を取った。
「会いたかった」
「お祖父さん、お祖母さん」
流れてくる感情は嘘偽りなく喜びで、私ももらい泣きをしてしまった。
「お父様、お母様、今までごめんなさい」
「ペンドルトン公爵、公爵夫人、申し訳ありませんでした」
「話には聞いていたけれど、元気そうでよかったわ……屋敷の中で話をしましょう」
お祖母さんが涙声で、声をかける。門の前で再会したからお屋敷までは少し歩いた。エリカの花が咲き誇っていて桃色の景色が幻想的だった。
応接室に着くと、もう私達の顔はくしゃくしゃだった。執事らしき人がそっと温かい紅茶を配っていた。鼻をすすりながら紅茶を一口飲むと少し落ち着いた。
「ラーラは学園は楽しいかい?」
「うん、友達もたくさんいるの」
「そうかい、それは良かった」
慈愛に満ちた表情でうなずかれた。
並べられたお菓子を見ながらお母さんがまた涙ぐんでいた。それを見たお祖母さんが懐かしそうに言う。
「マリアは好きだったでしょ、ジャムクッキーに、苺大福。当時、大福は珍しくてね」
「私も苺大好き!」
そう言うと、
「ラーラもたくさんお食べ」
と、サーブしてくれた。
「それで、ラーラはフェルジオードくんと交際していると聞いたけれど」
お祖父さんが、ジオの話をし始める。侯爵様は、静かなままだ。




