20.春の足音
学園の授業が始まった。
お母さんがアビリティを使わずにポーションを作っていたのは驚いたけど、私も頑張ればそこまで出来るんだと知れて、ヴェレーノ先生の授業をもっと聞こうと思った。
その矢先に、先生が体調を崩したらしくて休講になった。昼前の授業だったので、早めのランチでも構わないと、休講を告げに来たメイド姿の職員さんは言っていた。
「ラーラ、今日はカフェテラスにしない?」
ミネアが誘ってくれた。いいね、と答えようとしたら、
「ラーラたちは、カフェにするの? 私も一緒にいい?」
リーゼに声をかけられた。
「もちろんだよ! シャーリーも一緒に」
ふたりとも年末の勉強会で仲良くなったクラスメイトだ。彼女たちは闘えるアビリティなんだよね。かっこいい。
私達は学園のカフェに来て、日当たりの良いテラスに陣取った。開放的なテラスだけど完全な外ではなくて、ガラス張りの屋根や壁があって、いわゆるコンサバトリーだ。
カフェはパフェだけでなく、食堂より軽いものやデザートが食べられる。
私は、菜の花のパスタといちごのショートケーキと紅茶を頼んでトレーを持っていく。ミネアはいつもガッツリたべるタイプなのだ。トマトソースのかかったカツに、サンドイッチを頼んでいた。
リーゼは小ぶりのホットドッグとプリンだけ。いや紅茶も持ってるけど、それにしても
「少なくない?」
「え? いつもこれくらいよ」
シャーリーは、ミックスサンドセットとチョコレートケーキ。ふむ、それくらい食べるわよね。
「冬休みはみんな実家に帰ってたの?」
リーゼが口火を切った。
「私は普通に実家だよ。なんとラーラはジオくんと帰ったらしいけど」
ええ!? ミネアがバラしてしまう。当然のようにシャーリーとリーゼが食いつく。
「ほんと? すごいじゃない。仲がいいのね」
「いや、あの……いろいろアリマシテ」
「それにしてもアシュワース様の交際宣言は凄かったよね。『危害を加えるやつがいたら、侯爵家が許さない』ってやつ!」
「や〜〜、もうやめて〜」
私は顔を手で覆ってしまう。顔が熱い。
アレクシアもだけど、リーゼもジオのことはアシュワース様と呼ぶ。学園内では平等と言うけれど、貴族同士は気になるのかな。6女とは言えリーゼも伯爵令嬢なのよね。
「リーゼは付き合ってる人はいないの?」
「えぇっと、ラーラならお見通しじゃない?」
「んー、読み取るのと、聞くのじゃ大違いなのよ? 聞きたいわ」
知っていても、友達の秘密を鑑定で暴くなんて野暮よね。




