2.能力の限界
「あなた、誰なの?」
隣のクラスの子だと思う、改めて見ると見たことがある気がした。
「俺か? 俺はジオ。1年B組。
他に聞きたいことは?」
「好きな子は? いないの?」
「は? オマエ俺のファンだったの?」
「ちがっ……」
思わず言ってしまった言葉に自分で驚き、口を手で塞ぐ。ジオは、手すりを背に逃げ場を失う私に更に近づく。
「じゃあ、なんで、聞いたのかな?」
どんなに眺めても、聞いた情報以上に鑑定で見えるものは増えない。
「あなたの能力はジャマーとかキャンセルなの?」
「……さぁ……どう思う?」
ジオは、ニヤリと笑った。後で調べてやるわ。アビリティはどこだったかにまとめてあったもの。
「オマエは、鑑定ってとこか。俺だけ見えねえの?」
近くで見て、見えない人に会ったことはないけど、そもそも鑑定をかけなかった人も多いし、矢印は全員見えるわけじゃないことに気づいた。
「魔力量……」
「俺、ちょっとばかし多いんだよね」
きっと、ちょっとじゃない。そうか、私の能力って万能じゃなかったんだわ。
「今まで見えねぇやつに会わなかったってぇなら、オマエもけっこうな魔力量じゃね?
それよりさっきの独り言。なんか面白いこと言ってたけど、あれ何?」
あぁー。私のバカバカ。他人の恋模様を覗いてたなんて言えるわけないじゃない。
「何が見えてるの?」
「ほ……ほら、あなたのファンの子が見てるわ。離れて」
「ふぅ〜ん? そうくるならキスでもしとく?」
(!!! なんなの? 同じ12歳じゃないの?)
涙目になった私に、ジオが更に近づくと、唇に柔らかいものが掠った。
「オマエおもしれぇわ。またな」
忍び笑いをしながらもジオは去ってくれた。私は呆然とするしかなかった。
「……はじめてなのに。なによそれ……」
心臓の音が大きく聞こえて止まらない。イケメンチャラ男爆ぜろ!
それに、さっきのは何だったの。唇が当たった瞬間、流れ込んできた映像があった。
それは、私の能力なの? それともジオの?
はじめての経験の連続に私の思考は停止するのだった。




