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19.駆け落ちの裏側

 冬休みは案外短い。2日泊まったら学園に向かって戻ることになった。

 

 ジオはお母さんから手紙を預かっていて、お父さんから辞書のような本を受け取っていた。役に立つかわからないけど、鑑定のアビリティを調べるためとのことだった。


 御者さんは、メイフィルの美味しいお酒をたくさん飲んだよと言って、また馬車を走らせてくれた。


 帰りも2日かけて侯爵家に着いた。

 夕方に着いたので夜は侯爵家で食べることになって、メイドさんがまたドレスを着せてくれた。今度はエメラルドグリーン色! どういうこと?


 実家での話を報告すると、侯爵様は満足そうに微笑んだ。


「実はマリア嬢との縁談は、平民との結婚に反対していたペンドルトン公爵とアシュワース前侯爵が進めたことでね。恋人のいた弟も拒否していたんだ。

 

 婚約は整ってなかったから、マリア嬢がいなくなったあとは、話が白紙に戻っただけで、両家に禍根はないんだよ。

 

 むしろ弟にとっては良かったんじゃないかな。駆け落ちされたら敵わないと、平民になることを許して、レストランを開かせたんだ」


 なんとシェフのおじさんだった。


「ジオは三男は平民になると言ってたんですが……」


 少し疑問に思って聞いてみたところ


「そういう道もあるし、他の貴族家に養子に入る道もある。ジオにも縁談の申し入れはたくさんあるんだよ」


 ジオの顔を見ると、あまり嬉しくなさそうな表情をしていた。


「うちとの繋がりが欲しい家ばかりじゃないと思うんだけれどね」


 侯爵様はジオの気持ちを代弁したようだった。


「それで、どうだい。ペンドルトン公爵との面会はうちも立ち会っていいかな? 差し出がましいが他人がいた方がいいこともあるだろう」

「都合の良い頃に、ご両親に来てもらってこちらに滞在してもらえばいい」


 そうして、春休みを目処に仲直り会をするように調整してはどうかという話になり、お母さんの手紙を持って行きがてらお伺いを立てて来るとのことだった。


 ジオは週末に時々、侯爵家に帰っているらしい。公爵家には先触れを出して、ふたりで行ってくれるそうだ。

 ポストじゃないんだ、と思ったのは内緒だ。


 1泊したら始業式の前日なので、寮に帰った。ミネアの顔を見たらなんだかとても安心して抱きついてしまった。

 こうして怒涛のような冬休みが終わったのだった。

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