18.お母さんのアビリティ
「そうねぇ、お父様に手紙を書いたら、読んでくれるかしら」
「良かったら俺が届けますよ」
お母さんにジオが言った。
「ジオはペンドルトン公爵を知っているの?」
私が尋ねると
「面識はないけど会いたいと思ってる。それに、今回のことで父が会ってるだろうしね」
「じゃあ、お願いしようかしら。」
お母さんが答えてから言った。
「ラーラ達はどうやって出会ったの?」
「争奪戦の見学をしてるラーラに見とれて声をかけたんですよ」
「……!」
(サラッと嘘ついたー!)
「まあ、ラーラったらやるわねぇ」
居た堪れない気持ちでいると、ジオがお母さんに聞いた。
「母君のアビリティは、薬師関係なのですか?」
「そうねぇ、初級のポーションは各種作れるけど、アビリティは別なのよね。予知夢が見れたり、触れた人の未来がたまに見えるのよ」
「えぇーーー!!」
初めて知った私は驚いた。
「たまになのよ。だから、あまりアビリティとしては使い勝手は良くないんだけど、お父さんに会った時に未来が見えたからね、ちょっと頑張っちゃった」
「それは……」
驚くジオと私にお母さんは続ける
「実はね、ラーラの隣にいるエメラルドの瞳の男の子も見えたんだけど、今日会えるとは思わなかったわ」
「まさかアシュワース家のご子息とも思わなかったし、運命なのかしらね」
頬に手を添え、首を傾げるお母さんを間抜け顔で凝視するしかなかった。
よく聞くと、縁談のあったアシュワース家のご子息にも恋人がいたらしい。お母さん達は駆け落ちしたからその後のことは知らないけれど。
駆け落ちしたあとは、メイフィルで農家の手伝いをしながら、医者のようなことをしていて、その後に今の診療所を開いたらしい。
田舎の診療所だから、病気を鑑定して初級ポーションで凌ぐ、中級以上のポーションは仕入れてきたり、重病患者は大きな病院を紹介してやってきたらしい。
若くして駆け落ちして、田舎で診療所をやって大変だったろうなぁと思うと、両親の偉大さを痛感したし感謝した。
新年は、そのままメイフィルで過ごした。大きな花火とかがあるわけじゃないけど、穏やかに家族で田舎のごちそうを食べた。
それからお母さんがアーモンドをひとつだけ隠したアップルパイを焼いてくれた。本当はアーモンドが当たった人が王様になるゲームだけれど、当たったジオは質問責めにあっていた。
往復が大変なので御者さんは宿屋に泊まっているままだ。休暇と思ってゆっくりしますよと言っていたらしいけど、ここは楽しそうなところないからなぁ。景色は良いけど。




