17.十三年前
「当初の目的は、鑑定のことを聞きたかったのと、ご両親の顔を見て、挨拶をしたかったんです」
「当初、ということは?」
「一昨日、ラーラがペンドルトン公爵のお孫さんということを知りまして」
「どこでそれを……! あぁいや、学園に通ってるんだ。どこで知られてもおかしくないか」
お父さんが苦悩するような顔をする。
「アシュワース侯爵様が言っていたの。そろそろ仲直りしてもいいはずだって。あと、とっくに許してるって。どういうこと?」
「仲直り……許してもらえるのだろうか」
父がこぼすように言って、ジオが説明する。
「父が言うには、ずっとラーラには公爵家の影がついていたそうです。帰ってくるのを待って見守ってきたのではないですか」
「影…………」
「父が知ったのは、俺の恋人の調査をしたからで、俺とラーラが知ったのは、兄がラーラを見たからです」
「……なるほど。世間は狭いな、アシュワース家とはな」
「世間は狭い?」
そうして、父の昔が語られることになった。
「私達はオリュンピアス魔法学園で出会ったんだ。マリアはとびきり可愛かったから、一目で恋に落ちたよ。でも、身分差があったから高嶺の花だった。
でもある日、マリアが目の前で倒れたんだ。鑑定したら貧血で。保健室に連れて行って、造血のポーションを飲ませて、そこから仲良くなったんだよ。
きっかけなんて小さなことだよ。その出来事から私は医者の道へ進み、マリアは薬学を学び始めたんだ。
そして卒業式のあと、結婚したいと公爵に伝えに行った。マリアにはアシュワース家との婚約の話が出ていて、ずっとマリアが拒否していたらしい。そのことを知ったときには、ラーラがお腹にいてな。
怒った公爵が、勘当だと言ったので、そのままの勢いで荷物をまとめて街を出たんだ。
勘当と言っても、実際に公爵家から、籍を外したかはわからない。すぐに結婚をしたからね。
でも今にして思えば、私たちの足跡を追うのなんて簡単だったんだろうなぁ」
両親の駆け落ち話をひとしきり聞いたけど、私が在学中の子だなんてびっくりだわ。そりゃお祖父さんも怒るわよね。
「マリアもいまさら公爵家に戻りたいとは言わないだろうが、ラーラからは祖父母を奪っていたんだよな、黙っていてすまなかった」
いつの間にか、お母さんがシチューの入った鍋と食器をワゴンに乗せて持ってきていた。料理をするお母さんを見て、貴族令嬢と思ったことはなかったから驚きだ。ちょっとおっとりしてるけど。
「まぁ! ラーラにバレちゃったのね」




